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曰く『青臭い正義感』

「俺は自分の青臭い正義のせいで、毎回失敗するんだ。
大金持ちになる チャンスも、大企業の社長になる チャンスも、何度もあったけど、俺が得をすると世話になったこの人が損をする、そんなことを考えてばかりで、全部ふいにしてきた。
まるで子供みたいな正義だよ」

出会った頃のお父さんの口癖である。

お父さんは惜しみなく人を助ける。
自分は損をしてでもだ。

出逢った頃のお父さんは、出来の悪い社長を抱えた、高齢の会長をひたすら支えるために、難しい案件はすべて引き受けてやっていた。

飲みに行っても、人の悩みを聞き、泣いている女の子がいれば 助けて、人に嫌なことをする客を怒り、みんなが笑うように、冗談を連発し、おどけてみせ、分け隔てなく 声を掛けて、間違った道に進もうとしている女の子に実の親のように親身になり、孫のような若い子がわがままを言えば自分の持ち物をあげ、不幸があればすっ飛んで行って棺を見送った。

自分は と言うと、少しの野菜とご飯で自炊しながら、営業も経理も事務も総務も見て回り、どの部署でも残業は手伝い、社員の悩みを聞き、能力が向いている部署へ引っ張っていって伸ばし、高齢の会長の右腕になり相談役になり、税務署からも労働組合からも一人で会社を守っていた。

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