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君と。 1。

汗ばんでなお
汗をかかぬ君の横にいる
私の体温は
健康的に上昇する
君は
このぬるい空気の中
毛布に電気を入れて
掛け布団をかけている
君の横にぴったりと
皮膚を近づけていると
私は、だんだんと汗ばみ
静かに、乾いたままの
皺で割れた薄い皮膚の君は
初夏の気温であっても、うすら寒くて
おでこまで布団に潜り
寝入ってしまう
同じ布団に入り
同じ掛け布団をかけ
君の
電気の入った暖かい敷布の中にいると
君が起きる頃には
暑さにむせ返った私の体は
布団から半分はみ出して
体温を逃しながら
額からも
脇からも
シャツが湿るほど
健康的に発汗している
君の体が
君のこの小さくなった体が
君のこの骨のもろくなった壊れやすい体が
なんともいたいけなくて
君の横にいる時は
乳児におっぱいを飲ませるときのように
細心の注意を払う
ぴったりとくっついて
君が目を開けるまで

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25歳 上の夫(令和5年、77歳。重篤な基礎疾患があります)と私との最後の「青春」の日々を綴ります。

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