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お話

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#物語

馳せる

馳せる

夏の隅田川をゆうらりと進む屋形船。

連日連夜、呑めや歌えやの大宴会。

18歳になった私は、その日初めてお酌のお仕事をしたのでした。今でいうところのコンパニオンです。コンパニオンという言葉すらこの頃はあまり聞かなくなりましたけれどね。

取りどりのお酒と男たちが入り乱れる中に、そのガラスの瓢箪はありました。うるわしく凛と立つ瓢箪。その佇まいは、自ら夏の夜風を涼しく吹いているようでした。

青いガ

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粧す

粧す

奥羽本線を北へとすすむ。

山の間をどじょうのように這う線路。
両脇には田園と民家。
いかにも田舎の景色という感じがする。

目的の駅で降り、40分待ってようやくバスが来た。
扉の前で待っていたら、運転手のおっちゃんがガラス越しに指で合図してきた。あ、後ろから乗るのか。数字の書いてある券を取れと言われる。どうやら前方にある料金表と照らし合わせて乗車料金を支払うらしい。しばらくして、予告も無しに金額

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