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オンライン取材はなぜ難しいのか【3つの問題と解決策】

私はマーケティング系のWebメディアの編集者で、企画、取材、執筆、編集などを担当しています。先日社内で「Zoomなどを用いたオンライン取材はオフライン(対面)取材と比べて難しいよね」という話が出てきました。なぜ難しいのか考えてみたのがこのnoteです。

コロナ禍では仕事はリモート、取材は相手のオフィスにうかがってもOKという状況だったのですが、2度目の緊急事態宣言に伴い取材は前面オンラインに移行しました。1度目のときもオンライン対応だったのですが、その時はみんな等しく“オンラインスキル”が低かった。そして「オンライン取材ってどんな感じなんだろう」という珍しさや「移動しなくて済んでGood!」というメリットの実感もあり、あらが目立ちにくかったように思います。

ですが2度目となった今は、皆がオンラインに慣れた状況。取材を成立させるハードルは上がったのではと思っています(実際私も「こんなにやりにくかったっけ…」と感じている)。同席してくださる広報さん側も「これでよかったんだろうか…?」「なんか不安だな」と、もやもやすることが出てきているかもしれません。ということで、現時点で私が難しいと思っていることと、取材をもっと良いものにするためにどう解決しているかを紹介していきます。

前提:私の担当する取材の中心は、時事ニュースや人物インタビューではなく、ビジネス情報。編集部企画のもの、記事広告用のもの両方が含まれます。また「良いもの」の暫定的な定義は、読者に対する価値(正確で新しい役に立つ情報)、取材対象者に対する価値(正確で表現力ある記事、取材の場の満足度)両方を満たすことです。また、顔見知りに取材するよりも初めましての人に取材することが多いです。

問題1:「場のマネジメント」の難しさ

一番の苦労はこれです。相手がノッて話しているのか、「この話はつまらないんじゃないか、他に話したいことがあるのに」と思いながら話しているのか、とても掴みにくい。そしてオンラインでは一度ペースが狂うと、場の立て直しがとても難しい。一人でなんとかしようと焦って、変な質問をしてしまうこともある。

解決策としては、インタビューアー/インタビューイー以外の第三者の力を借りることです。私の場合は、一緒に同席してくれているライターさんや広報さんに「ここまでで気になるところ、深掘りしたいところはありますか?」などと適宜話を振らせていただいています(突然話を振ると驚かれるので、最初に「どんどん話に入ってください」などと伝えておく)。第三者の一言で空気を変えてもらうことはとても有効だと思います。

【広報さんへ】場の進行で気になることがあれば、1つ2つ、「私からも質問いいですか?」とか「○○についてはぜひ記事にしたいと思っていて~」とか「補足させていただくと~」などと助け船を出していただくのは大変ありがたいです(インタビューアーさんの考えにもよりますが)。

また、鼎談のような形で3人以上に話を聞く場合は、同じ話量にするための進行・調整がかなり難しい。オフラインだと話してほしい人の方に身体を向けるとか、ちらちら見る、とかテクニックを使えるのですが、オンラインでは無理。なので最初に宣言することにしています。

例)「オンライン取材で多くの方にお話をうかがうというのが、なかなか難しくて……お話いただく方が偏ってしまったり、どなたに答えていただきたい質問なのか曖昧になってしまったりすることがあるんです。なので気になったところはご指摘いただけますと大変ありがたいです。そしてもし『私全然話していないな』と思われたりした場合は、遠慮なく話に割って入ってくださると嬉しいです。ご協力よろしくお願いいたします!!!」

そして、答えてほしい人の名前をちゃんと呼びかけることは大事。誰に聞いているかわからない質問は宙に漂い、場の空気を微妙にします。気をつけよう。

【広報さんへ】特に多くの方がご同席される場合、名前の設定は企業名とお名前、インタビューを受けない広報さんであれば「広報」などと書いてくださると、混乱が少なく助かります!(人数が多いと誰が誰だか混乱する)また、漢字の読み方が難しいお名前は、ひらがなにしていただけると大変ありがたいです。私はとっさに呼びかけていただけるよう、いつもひらがなにしています。

ちなみに私個人の感想ですが、進行役の「まあ」「えーと」などは思った以上に耳につくし、頼りない印象を与える(画面を見ず、耳しか注意を傾けていない場合は特に耳障りな印象)。それくらいなら、「少し整理させてください」と言って黙ったほうがマシ。何かを読み上げているのもばれる。なるべく減らそうと気を付けていますが、聞いてくださる皆さんも「オフラインの時より目立ちやすいんだな」と、少し割り引いて感じてくださるとありがたいです…。

問題2:「あなたの話をもっと聞きたい」というシグナルが出しにくい

取材時はリアクション芸人(ニコニコする、とてもうなずく、身を乗り出す)だった自分は、オンラインに移行して芸がほぼ封じられ、とても戸惑いました。相手の話に関心を持っていること、もっと聞きたいと思っていることをどうやって伝えるか……。

解法としては、身体ではなく「言葉で」相手への関心をしっかり伝える。 具体的には「なるほど」を封印し、「それは◯◯ですね」「◯◯ということですか?」と自分の言葉で返答を心がけています。その場で内容を理解し自分の考えも載せたりしないといけないので、取材の難易度は上がります。私自身は、大事な言葉はPCでメモをとり、それを見ながらリアクションを考えつつお話を聞いています。オフラインでは記事構成をこうしようかな、とかインタビュー以外のことを考える余裕もあったのですが、オンラインでは、とにかくその場の完成度をあげる、よいリアクションを返すことに徹している、といった感じでしょうか。

問題3:終了後の余韻がない

これは内容のクオリティをあげるというより、インタビューイーの満足度を上げる、今後も含め良い関係を築くという観点からの難しさですが、オンラインは余韻がない(オンラインイベントの難しさ、ということでもたびたび話にあがっていますね)。

「では取材は終わります。ありがとうございました」でインタビューイーをいきなりオフラインの世界に戻すのではなく、取材の感想や感謝を自分の言葉で伝えて、良い雰囲気で終わらせるようにする後味の良さを意図的に作り出す。また、今後のコミュニケーション手段も明示して、ぷつっと切れた感をなくす(以降はメールでやりとりしましょう、とか)。

その場で良い情報が取れたらよい、という考えもありますが、中長期で関係を築いていきたいと考えた場合、オンラインはとても不利です。会議室に案内してもらうまでの移動の時間で雑談ができなかったり。特効薬はなさそうですが、少なくともインタビューイー側がその性質を意識して、少しでも良い場を作ろうとすることが大切だと思います。

良いこともある

オンライン取材の難しさばかりを書きましたが、良いこともあります。一番は、メモが取りやすいこと。ブラインドタッチができる人であれば、相手と目線を合わせつつPCで高精度のメモをとれます。それを見ていると、聞き漏れや話の深掘りポイントに気づきやすいです(文字化した情報なので、抜け漏れがよくわかる)。そしてメモの完成度が高ければ、取材後にすぐに執筆にとりかかれる。メモに夢中になるのは良くないですが。

また、資料に目を通しながら質問するのもやりやすいです(オフラインでは相手の目を見ないと、と気にしていた)。事前に調べた/いただいた情報が豊富であれば、取材の成功率が高まると感じます。

【広報さんへ】移動時間などが減ったことで作業に充てられる時間が増えています。資料読み込みや質問準備もこれまで以上に念入りにできるようになったため、事前にしっかり情報をお渡しくださると取材のクオリティが上がります!

人と会うのが大好きなので、本当は早くオフライン取材をしたいですが、自分がオンライン取材を続けることでほんのちょっっっとだけ世の中のためになるなら、それはやはり頑張らないと、と思います。ほかの編集者さん、広報さんの必勝法も聞いてみたいです。

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