【カンボジアの学校へ行こう!20】#カンボジアに保健室をつくろう#何処にでもあると思うな保健室と保健の授業#(空回りしない)熱血先生応援プロジェクト
■ 耳で聴く
■ 保健室のおもひで
自分の学生時代の記憶に、正直、保健室で過ごした記憶がありません。身体能力が飛び抜けて良かったわけでは無いにしろ、幸いにも身体だけは丈夫で、保健室に世話になった記憶がありません。水銀体温計の底を叩いて操作した位の仮病で休ませてくれるような学校の環境でもなかったように思えます。
鮮烈に記憶があるとしたら予防接種などの、あのいや〜な注射ですかね。小学校低学年までは必死の号泣という拒否権を発動したにも関わらず、最後には身体を抑えられて、恐怖の中、観念した記憶だけは鮮明にあります。
■ 学校の病院⁈
コロナで移動が制限する前、カンボジアの教育関係者を日本の学校見学に招聘したのですが、参加した先生に感想を伺ったところ「日本の学校は、中に病院があってスゴイ!」という感想に驚かされました。学校に保健室はありましたが、病院と混同する感覚はなかったように思います。おそらく保健室を担当していたのは看護士さんではなく「保健の先生」でしたし、苦い薬が出されなかったからだと思います。
カンボジアの僻地は、今も医療従事者の数が不足していて、医師が居る病院が無く、国内で短期間に量産された薬剤師や助産師が勤務する公立の保健所(ヘルスセンター)が地域医療を担っています。また先進国でさえアメリカを始め、国民保健制度のシステムがない国も多く、病院にかかると費用がかかるため、とりあえず薬局で薬を買って飲む、という行為がファーストチョイスの国も少なくありません。
■ 何でもあるよグロサリーショップ
市場も無いような僻地に行くと、道の途中にたたずむグロサリーショップ(食料雑貨店)が唯一近所で物を仕入れる手段となります。軽い食事なんかもできます。料理油や各種調味料とか、シャンプー、ガソリンまで、一般家庭が使い易いよう、ばら売りされています。その中には、頭痛薬や下痢止め、薬用酒も販売されています。薬の販売は厳密には違法ですが、最寄りのヘルスセンターに行くのに悪路を数十キロ移動しなくてはならないことを考えると、当然、グロサリーショップの薬は生活必需品です。
■ 当たり前じゃない
そういう状況を考えると、日本の学校を訪問し、見た目には「病院」に見える「保健室」は、インパクトが大きかったのだと想像できます。因みに日本の保健室には基本、薬は置いていないんですけどね。。。
カンボジアでは、地方のヘルスセンターに行ったとしても、常駐の看護士さんが、処方してくれる薬についての説明はしてくれますが、体の仕組みや医療の話までは、してもらえる事はありません。ましてや、疾病予防や体を健康に保つ「保健」の指導を受けたことのある医療従事者は皆無な状況ですから、地域の大人には保健の知識を得る機会がありません。
■ 「保健室」って?!
学校の保健室と医務室の違いは、保健室に教育機能があることです。保健室に勤務する「保健室の先生」は、国家資格を持った「養護教諭」です。
学校全体の保健の管理を行い、専門的立場から生徒の保健や環境衛生を的確に把握されています。校内で怪我をしたり病気になったりしたときの応急処置はもちろんのこと、毎日の健康観察や、定期的に行われる健康指導や身体測定の準備、さらには悩み多い不安定な年ごろの生徒や、保護者の方の心のケアまで担っています。高度な現場での専門経験が要求されることから、看護師や保健師の免許を取得した後に養護教諭をめざすという人も少なくないそうです。
■ カンボジアモデルの保健室
日本の近代化を背景に、長〜い時間をかけて培われてきた保健室システムですから、そう簡単に定着するとは思っていません。日本の保健室のシステムと経験を参考にしつつも、既存の現地の学校人材と、継続的に補充可能な備品を使った仕組みづくりから始める必要があります。
また、各地域のヘルスセンターと住民との関わりも少ないことから、医療アクセスの仲介や、保健教育といった地域住民のニーズを満たす「コミュニティー保健センター」としての役割を構築していく必要があると考えています。
コロナの影響で、休校が長引き保健室システム導入へのアプローチが中断していますが、学校再開に向けた取り組みを、今後も紹介していきたいと思います。
■ Phnom掲載記事(2020年12月号)
リンク:カンボジア総合情報「Phnom」電子版
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