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"D2C嫌い"な僕らがD2Cブランドをやる理由

正直、僕は “D2C” という言葉があまり好きではない。

最近はバズワードと化し、「顧客に直接アプローチできる」「世界観、ブランディング」といった部分だけが切り取られるD2C。そしてD2Cのための企画アイデアやマーケティングノウハウ寄りのことが話題に上がるが、実際はプロダクト開発、生産管理や物流などオペレーションの仕組みが肝心で、そうした裏側の地道な部分がしっかりしていなければ成立しないモデルだ。

そもそも、お客様に直接販売すると言うモデルはトレンドでもなんでもなく、商売の基本の形であると思う。
なので、何か飛び道具的に現状を打破するソリューションとして、D2Cという言葉が乱用され出している事に違和感を感じている。

なぜ、いきなりこんなことを書くかと言うと、最近のこの1年くらい、自社ブランドの運営にほぼ一本化して集中しているから。
実は現在5ブランドを運営し、年内には10ブランドまで増える予定だ。

本当に有難いことに2016年の創業以来、これまで多くのEC運営やブランド立ち上げのご支援をさせていただいてきた。
そして3rdを作る以前より、いまで言うD2Cと同じことをやっていたからこそ、D2Cの難しさ、大変さもわかっているつもりだ。

基本は物販ビジネスなので最初の売上は作りやすい側面もあるが、利益を生んで自立して成長させていくには、変数が多くKPIが大量にあり、やり続けないといけないことが無数にある。

それを年内には10ブランド展開しようとしているのだから、割と無謀な感じもするし、実に大変そうだ笑

なので、各ブランドは”こんなブランドやりたい”という企画を持ってる人を中心に、3rdで必要な資金を出して、人を集めてブランドごとにチームを組成してインキュベーション的な形で進めている。

ここまで読んで「いまそんな感じの事してるんだ」と思われた方もいるかもしれない。

”D2Cインキュベーション”とか一言で説明するのもややこしいので、最近は「インフルエンサーとアパレルやってる人」とか「マスクの人」とか呼ばれる事が多く、何してるのか上手く伝えないとなぁという気がしていた。

でも発信するのも得意じゃなくて、この構想でいくと決めて「ちゃんとnoteで発信する!」と社内で宣言してから、結局1年以上経っていた笑

今回ようやく重い腰が上がったので、あらためて3rdとはどんな会社なのか、どういった想いで、いまどういったことをやっているのかを書いていきたい。
祝、初note!

これまでしてきた事が全て繋がるのがD2Cだった

そもそも3rdを創業したのは、もともと2012年ごろから自分たちでアパレルブランドを展開していたことがキッカケだ。D2Cという言葉が広く使われる前から、僕らはネット専業でブランドを作り直接お客様に届けるということをしていた。

当時25歳過ぎたくらいの年齢で、僅かな社会人経験しかなく、当然資金もノウハウもなくて、今思えばとても効率が悪くて、かなり荒削りの部分も多かった。

アポなしで海外の取引先を開拓したり、
(みんなノリよく会ってくれるし、よく奢ってもらった)
現地採用をして物流拠点を作ったり、
(韓国の方々はみんなハードワーカーで尊敬した)
自力でECサイトを作ったり、
(オープン直前に誤って上書きして、苦労してデザインしたサイトがECキューブの黄色いデフォルトテンプレになった時は泣いた)
見よう見まねで広告運用をしたり、
(CPAって何?みたいな感じだった、バナーも作った)
雑誌広告の入稿データを自力で作ったり、
(自分が作った広告が誌面に載るのはすごいドキドキした)
撮影の為にハイエースで連日走り回ったり、
(少し擦った...)
カスタマーサポートを自分で対応したり、
(深夜にクレーム電話を1時間対応した結果ロイヤルカスタマーになっていただいた)
何もないところから、お客様に直接買っていただくために必要な事はとにかく全てやった

本当に色んな方々に迷惑をかけながらも、支えていただき何とか形になっていき、最後は韓国最大のD2Cプラットフォーマーとの提携まで進める事が出来た。

※2012年当時運営していたブランドの一つ。

あの時の仲間、お取引先、支えてくれた方々、お客様には本当に感謝している。
良いことも、辛いこともあったけど、今振り返ると全てが素晴らしい思い出だ。
最高

そうした経験をさせてもらう過程で、徐々にECやマーケティングについての相談を受ける機会が増えていったので、それであればプレイヤーからサポート側にまわろうと2016年2月29日に立ち上げたのが3rdだ。

ありがたい事に創業から多くのご相談をいただき、様々なプロジェクトに参加させていただいた。
インフルエンサーが個人で立ち上げるブランドから、上場企業の新規ブランドなど、規模の大小に関わらず刺激的でやりがいのあるプロジェクトばかりだった。
アパレルが中心だった前職から一転、色んな業界の成り立ちやビジネスモデルを知ることが出来、支援させていただく立場ながら、本当に多くのことを学ばせていただいた。

そうして創業から3年ほどは企業向けの支援事業をメインとしてきたのだが、「やはりサポート側ではなく、プレイヤー側に戻りたいな」という思いが出てきた。

そう思った理由はいろいろあるのだが、いろいろな企業をご支援させていただく中で、どうしても企業側都合で企画が進行してしまい、ブランドの世界観が薄れてしまったり、本当にユーザーが求めているものを届けられないケースを目の当たりにしたことが大きいと思う。

自らでリスクをとっている訳ではない支援業の場合、最終的に自分たちが正しいと思う意思決定ができなかったり、色んなしがらみの中で仕事の為の仕事が増えていった事も多く、メンバーが仕事を楽しめていなそう時があるのも辛かった。

ただ、この時の経験が今とても生きている部分があり、これまで関わらせていただいたプロジェクト全てには心から感謝している。

スーパーニッチなブランドの持続可能な成長を実現する

僕はもともとファッションや車、アートといったものが好きだということもあり、機能性やコスパだけでなく、母数は少なくとも一部の人の熱狂を得る付加価値のあるビジネスをやりたいと思い続けていた。

因みに人生で一番最初にブランディングというものを意識したのは、中1の時にオープン間もないディズニーシーに行き、開通したばかりのモノレールのミッキー型ウインドウを見た時だった。
意味わからないけど、その日一番感動したのは間違いなくそのウインドウだった。
なんというか、モノレールの窓でさえ特別感を演出しようとしている、そこまでして来場者の気分を上げようとしてしている人々が裏にいるんだろうという事実に感動した。

画像引用:unsplash.com

話を戻そう。
誤解を恐れずに言えば、僕自身はプロダクトそのものに拘りはなくて、熱狂を生む高い付加価値があるブランドを作る事そのものに一番の関心があった。
そこで、もともと得意としていたD2C運営のアプローチを、熱量がある人やモノづくりができる企業に提供できれば、ニッチで継続性のあるブランドを増やせるのではないかと考えた。

特定のプロダクトではなく、ブランドという概念そのものが好きな自分が、想いはあるけど手段がない人のブランド立ち上げを手助けする事で、自分も相手も幸せになれる最高の仕事なのでは?と思った。
ちょっと大げさにいうと自分の人生のテーマが決まった瞬間だった。最高、天才。

そして、2019年の夏、会社としても大きく舵を切り、D2Cブランドをインキュベーションする方向に動き始めた。

僕ら3rdが掲げているミッションは、
「”こんな世界やモノがあったらいいな”という想いをブランドとして形にする」
というものだ。

これからの世の中は、一部のインフラ級大企業が高品質なプロダクトを全世界に安価に広めていく一方、中間規模の企業は淘汰され、代わりにインデペンデントでスーパーニッチなブランドが無数に増えていくと思う。
今回の新型コロナウィルス感染症の流行は、その速度をさらに加速させていくだろう。

マクロな視点の話だと、人口が減少していく日本が高い生産性を維持していく為には、クオーツショックを乗り越えたスイスの時計業界のように、高付加価値でニッチなブランドを生み出す環境を作る必要があると思う。

画像引用:unsplash.com

そんな時代に、様々なスーパーニッチの領域でブランドを立ち上げ、スケールを追うのではなく、ブランドの世界観を確立し持続可能な形で流通させていくこと。
それが3rdの目指すことだ。

目指すのはD2Cの『少年ジャンプ』的ポジション

そしてこの1年間、いくつかのブランド立ち上げを行ってきた。
世界観をしっかり持ったインフルエンサーや、熱意を持ったプロフェッショナルな個人、素晴らしいプロダクトを持ったメーカーと一緒にブランドを展開している。
メーカーとの取り組みも、受発注の関係ではなく、レベニューシェアで一緒にリスクをとるやり方をしている。

この1年間やってきて思ったのは、僕ら3rdのポジションは出版社に似ているなということ。
出版社が優れた作家を見つけ、育てて、出版物として作品を流通させるように、僕らは裏方として、素晴らしい企画や技術を持ちつつも形にできずにいる個人や企業の能力を最大限に引き出し、流通させることがミッションだと感じた。

画像引用:unsplash.com

そして週刊少年ジャンプが作品をどんどん世に出し続けて人気作家を生んでいるいるように、3rdから熱狂的なファンを持つブランドが生まれて夢を叶えていく人が増えていけばこんなに嬉しいことはない。

チームを作って旗を振るのが3rdの役割

実はブランドの立ち上げまでは比較的スムーズにいく事が多く、悩むことはほぼなかった。
しかし冒頭で述べた通り、D2Cの肝はオペレーションなどの裏側の部分。
様々なジャンルのブランドを立ち上げる上で、生産管理やMDなどのプロダクトの調達は一番苦労した部分だった。

新規立ち上げが中心なので、過去のデータに基づく予想は出来ず、カテゴリーも多岐に渡るため、需要予測はとても困難で、どう供給していくか、仕組みづくりに頭を抱えていた。また、旧来のアパレルと異なる方法に拘り、需要を先に確定させて在庫リスクを極力持たない事に集中しすぎて、逆に機会損失やクレームを生んでしまったり。
もう本当に、圧倒的にいろんな分野のノウハウがなかった笑

最終的に行き着いたのは、そもそもブランドって社内で全て完結する必要ないんじゃね?という気づきだった。
餅は餅屋、外部のプロフェッショナルに参画してもらい、ブランドごとにチームを編成するというやり方で、3rdは旗振り役、各ブランドのマネジメントに徹するという事だった。

これは支援事業が中心だった際に広告代理店や、プロダクションのプロジェクトの進め方にヒントを得た。
プロジェクトマネージャが予算管理とプロジェクトメンバーのアサインを行い、ディレクター、クリエイター、メディア、エンジニアなど様々なプロフェッショナルが集まり一つの企画を形にしていくイメージだ。

画像引用:unsplash.com

そしてチーム全員がブランドの成功のリターンを継続的に得られるよう、関わるメンバーとはレベニューシェアの契約を結び、各メンバー個人とチームの目的を一致させることで長期的なブランドの成功を追いかけるチーム作りに取り組んでいる。

3rdメンバーの役割は各チームが目指すゴールに辿り着けるよう、プロジェクト全体をマネジメントすること。
ブランドホルダーとしての強みを生かして、各ブランドで共通化できるものを増やして効率化しつつ、成功事例のノウハウを横展開する事で、成功の確度を高めていく。

これはブランドスタジオ的な、当たればなんでも良いという発想ではない。
集合知を用いて、熱量のある企画を事業として成功させる事が3rdのミッションだ。

アート、ファッション、伝統工芸。展開するジャンルは様々

では、具体的に僕らはどういったブランドを展開しているのか。3つの事例をご紹介したい。

1つは、いまの日本のアートシーンを引っ張っている現代アーティストとコラボしたマスクのブランド『The Masks』
新型コロナウイルスの影響によって、ギャラリーなどでの展示ができなくなってしまったアーティストは多い。
そうしたアーティストのサポートと医療従事者への寄付を行うプロジェクトだ。
また、いまのコロナ渦においてマスクは強制的に着けないといけないものになってしまったからこそ、僕ら自身も好きなデザインのマスクを身に着けることで少しでも明るい気分になりたいと思った。

思い立ち、すぐに声をかけたのが、今 The Masksのクリエイティブディレクターをしている頭山亜季さん。
彼女は元々某ラグジュアリーブランドで長年PRをしていて独立したばかりで、3rdの別プロジェクトを一緒に進めるつもりだったが、快く参加してくれた。

そこから、アーティストの人選、プロジェクト参加の打診、PRを怒涛の速さで進めてくれた。
頭山さんの呼びかけで、画家の五木田智央氏や写真家の鈴木親氏、グラフィックデザイナーのSKATE THING氏 など錚々たるメンツが参加してくれた。

緊急事態期間の中、フルリモートでプロジェクトは進み、立案から5週間後にはリリース。
そして発売開始後の約2週間で、出荷枚数は5,000枚を超えた。
プロジェクトの経緯はForbes様に取材していただいたので、是非読んで欲しい。

もう一つは、長崎の波佐見焼を扱い創業60年を超える陶器商社・西海陶器株式会社、CM制作を中心に手がける映像プロダクションパラゴンと共に進めている『Hasami Life』

伝統工芸×D2Cをテーマに、ライフスタイルに沿ったカジュアル使いができる波佐見焼の魅力、窯元さんのモノづくりにかける思い、波佐見町の人々の暮らしや街の魅力を発信するメディアの要素を持ったD2Cだ。

波佐見町に住む西海陶器社の担当者の方々、フリーライターの長嶺 李砂さんが中心になって、毎週よみものコンテンツを配信している。
どの記事も非常に丁寧に作り込まれていて読み応えがあるが、googleにも認められたようで、なんと立ち上げ6ヶ月(2020年5月時点)で”波佐見焼”のキーワードで検索結果表示1位となったのは本当に嬉しかった。

自社だけで進めるブランドだけではなく、こうした伝統工芸やモノづくりに強みのある企業との提携も今後は増やしていきたいと考えている。
「つくる技術はあるが、どういった売り方をするべきか課題がある」というメーカーと商品開発の企画から携わっていきたい。

D2Cというと新興企業のイメージがあるが、モノづくりのノウハウや伝統があり、語れるストーリーを持っている老舗企業こそ、D2C的アプローチで飛躍する可能性はとてもあると感じている。

そしてもう一つが、レディースファッションブランド『Lumier』
このLumierは、等身大の女の子がブランドをつくる、というコンセプトでスタートしたブランド。
自分自身のブランドを持ちたい、その世界観をつくっていきたいという強い熱量がある、北海道在住のインフルエンサー金澤楓さんと、リモートでのブランドづくりを行った。

いま世の中的にインフルエンサーを起用したアパレルD2Cが非常に増えており、比較的簡単に立ち上げができることから競争も激しくブランドが乱立している領域だ。

僕らも3年ほど前から、インフルエンサーのブランド立ち上げをしてきた。
この3年間、インフルエンサーブランドだけでも6ブランドを立ち上げ、様々なパターンを試し、成功パターンを模索してきた。
当然、失敗も沢山してきた。もう、めちゃくちゃ失敗した笑

その中で見えてきたのが、当たり前だが、インフルエンサーはあくまでブランドを知るきっかけであり、商品そのものの魅力、購入を促す提案力が非常に大切ということ。
インフルエンサーの集客力だけに頼ったブランドは、初めは良くても、継続した成功を納めることはなかなか難しい。

その為、Lumierではアパレルメーカーと密なコミュニケーションを取りながら、SNSなどの各数値をもとに新作の供給量を調整、商品企画と生産管理を高速で回しながら、お客様の需要に合わせた新作を週2~3回のペースで販売している。
2019年11月のOPEN以降、現時点で毎月30%前後の成長を達成している。
Lumierはスタートから1年で月商5,000万円という目標を掲げているのだが、それも達成できそうな進捗で進んでいる。

社員でも外注でもない持続可能な仕組みで繋がる仲間

このように様々な領域でスーパーニッチなブランド展開をしている3rdだが、もっとも大事にしているのは熱量だ。
冒頭で書いたようにD2Cは変数が大量にあり、地道で途方も無い工数の運用が必要だ。

また基本的に物販ビジネスの為、収穫逓増型ビジネスではなく指数関数的な成長をする事は難しい。
正直、儲けやすい領域ではないように思う。
だからこそ、熱量がなければやる意味がない。
好きじゃなければ本当にやる意味は全くない笑

そして、その熱量は僕らがやりたいものを自由にやるケースもあるだろうし、何か形にしたい熱量を持った人との出会いから生まれるものもあるだろう。

画像引用:Forbes

いま3rdの社内メンバーは5名だが、形にしたいビジョンを持ち込んでくれる人や、そのビジョンに共感し集まってくれている社外メンバーも含めると、30人ほどの人数でブランドづくりを行っている。

また3rdが描いているのは、ブランドを “囲い込む” 展開ではなく、ブランドそれぞれが個性や独立性を残しながら、サスティナブルな成長を実現する環境をつくること。
将来的には各ブランドが分社化して独立していったり、JVとして他のパートナー企業と共同で展開したりという形をイメージしている。

また3rdに関わってくれる人々に関しても同様だ。
社員や業務委託、外部内部といった区別はなく、ブランドごとに一つのチームとしてゴールを共有し、利害関係を一致させながら連携していく。

関わり方は様々で、得意領域をみんなが出し合って1人(社)では生めない結果を出し、収益を分配しながら持続的に繋がっていく形がこれからの時代に適していると思う。

今準備しているブランドも様々だ。
骨格に悩みを持つ人の為のアパレル、プロダクトの本質がアップデートされていない消費財、医療機関と連携して進めるプロダクト、そもそもプロダクトを持たないブランドなど、素晴らしい人達と進める面白すぎる企画が沢山ある。

ありがたいことに、様々なツールや手法が出てきたおかげで、こういったプロジェクトを低コストでスピーディーに生み出せるようになってきた。
なので撤退ラインを決めて慎重さは残しつつも、今年来年とどんどん新規のチャレンジを仕掛けていく予定だ。

そんなわけで、自分の理想をブランドとして形にしたい人、誰かの熱量をブランドとして形にしたい人、そして強い熱意がありやりきる覚悟のある人、一緒に僕らとブランドを作りませんか?

関わり方は様々、あなたのポテンシャルが一番発揮できる形ならなんでも良いです。

下記リンク、コーポレートサイトか、Instagramで連絡ください。
待っています!

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