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自分の感受性くらい
昨日、千葉県市川市でかこさとし展があるのを知ったから父と弟と行こうか!となった。朝。
母ともう1人の弟は急に決まったこの行軍に着いてこれず、おうちでゆっくり過ごすと言っていた。
終戦記念日だしついでに、と私たちは荒川区にある吉村昭記念文学館(図書館に併設されてるのだけど)にも行こうかとなった。因果は謎だけど、許される。
行きの車中では、父の好きなあいみょんと中村佳穂を聞いた。ジョリーパスタで腹ごしらえしてから、かこさとし展に馳せ参じた。
かこさとし展でグッズを爆買いした後、吉村昭文学記念館に向かう。
その間には井上陽水を聞いた。私は井上陽水を生涯愛すことを誓っている。
ブラタモリのエンディングテーマである「瞬き」が、父と弟は好きなんだそうだ。
そういえば言ってなかったけど私たちの車は中古で、ガタがきている。つい5日前ごろエアコンから熱風しか出なくなってしまった。熱帯雨林体験アトラクションって感じになってしまっている。車検を通過したのが奇跡である。
昨日は雨だったし、涼しかったし、死にゃしねぇだろうということで、私たち3人は愚か者なので普通に車を使ったのだ。
窓を閉めてると、人間の水蒸気で車の全てのガラスがくもる。なので雨が入ってくることもお構い無しに窓をあけ、それでも尚くもるのでフロントガラスなどは信号待ちするごとにフキフキしていた。
そんななか音楽を聞いていたことを留意して欲しい。
私は後部座席に座り、たまに横を走り抜けていくかわいい都電荒川線を眺めていた。しっとりとした空気とその情景には井上陽水がとても良く合った。
吉村昭文学記念館。私は1冊くらいしか吉村昭の本を読んでないにも関わらず、吉村昭の書斎を再現してある机を楽しんだ。
万年筆とか、原稿用紙とか、そういうものにとても心惹かれた。
再現された机では、吉村昭が使っていたものと同じ原稿用紙にその記念館の感想などを書くことが出来た。
私はコソドロなので、原稿用紙を1枚だけいただき、記念館をあとにした。
記念館は図書館と併設されてるのだけど、図書館には、夏休みの宿題をこなしているのだろう小中学生が多くいた。
1人の女子中学生は左手をフレミングの法則の形にして、自分自身の指先とにらめっこしていた。懐かしさに心がやられる。
私は夏がとても苦手だ。暑いのがまず無理。ただでさえ無いにも等しい集中力が、本当に無くなる。
夏に何かを成し得る人を本当に尊敬する。
夏休みの宿題なんて8/28頃から始めるものだった。
夏は人との関わりが多くなって、どこかに出かけることも増えるのだけれど、その反動で誰とも喋らない時間が無性に恋しくなる。
だから1人でボーッとする時間を大事にして、気がすんだら誰かに会いに行くから、結果として全く何事も成さないまま、夏が終わっていくという顛末になる。
あの女子学生はこの夏にフレミング左手の法則を習得するのだろう。
父と弟は吉村昭の大ファンなので、ゆっくり記念館をまわっていた。
それも済み、我が家へ帰ろうかという時間になる。
帰りの車ではユーミンを少し聞いた。
私が「最近、時のないホテルがキてる。好き。」
と言うと、父は「渋いね」と言った。
弟は「俺は雨のステイションが好き」と言い、父は「おお、いいね」と言った。
弟は「俺の選曲は浅はかかな?」と言い出した。
私は「好きに浅はかもクソもねーだろ、自分の好きな歌は自分で決めるんだから」と怒った。
そこで茨木のり子さんの「自分の感受性くらい」という詩を思い出した。
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
茨木のり子『自分の感受性くらい』、花神社、2005年
弟よ、高一のくせしてショパン、ビートルズ、ビリージョエル、河島英五を聞く弟よ。この詩を贈ろう。
ばかものよ。自分の感受性に自信を持て。
父を価値判断の基準にするな。
弟よ。私たちは若いのだから、若い感受性を大事にすべきなのだ。若い時代より、年老いた時代の方がよっぽど長いのだから。
そして「雨のステイション」もなかなかマニアックだと思うし、いい選曲だ。昨日の風景にも良く合っていたぜ。
そんな弟は今日、部活中に熱中症になり倒れて病院に行ったらしい。今日は最高気温23度とかなのに、なんで今日???本当に面白い弟だな。
昨日あったことを日記にしようとしたら、手が疲れそうだったのでnoteに書いたけど、これもこれで手が疲れた。
ここまで読んでくださった方、夏を持て余していますね。
ユーミンの「時のないホテル」を聞いて、今年も何も成し遂げられないであろう夏を消費しましょうね。
おわり
ティソ
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