不登校「対策」をやめよう
不登校児童生徒数が年々増加している。
令和3年度においては全国の小中学校で学校を30日以上欠席した児童生徒が24万4940人となり、9年連続の増加、過去最多となった。10年前と比較すると小学生は3.6倍、中学生は1.7倍になっている。その一方で少子化が進行し、令和4年度の小中学校児童生徒数は過去最少(小学生:6,151,305人、中学生:3,205,220人)となっていることから、全体の児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は高まっていることは明らかである。
このような状況を受け、行政や教育委員会はさまざまな対策を考え、実行している。私が住む前橋市の事例になるが、主に下記のような取り組みを行なっている。
※前橋市も全国同様に、不登校児童生徒数が年々増加している。
1)学校現場
学校では未然防止、初期対応、組織的対応を3本の柱とし、取り組んでいる。未然防止の取り組みとしては、魅力ある学校つくり、わかる授業つくり、望ましい生活習慣つくり。初期対応の取り組みとしては、関係職員による情報の収集・管理、そして変化への適切な対応。組織的対応の取り組みとしては、相談部会の充実やチーム支援体制づくり。このような取り組みを校長先生を中心として、担任・養護教諭・スクールカウンセラー等が行なっている。
2)教育委員会
教育委員会では不登校対策として相談対応やさまざまな会議を行なっているが、主なものとして3つの事業がある。
① スクールアシスタント事業
安心できる関係や場の構築等を目的として、学校の相談室で相談や学習補助を行なっている。
② オープンドアサポート事業
保護者との信頼関係づくりや課題共有等を目的として、教師に代わり訪問支援を行い、保護者への教育相談や学校復帰に向けた働きかけを行なっている。
③ 教育支援教室事業
心の安定を図り、社会的自立や学校復帰を目的として、市内3箇所の施設で、状況に合わせた個別支援を行なっている。
お読みになりお気づきの方もいるかもしれないが、こうした取り組みは、
不登校児童生徒を減らすという目的がある。
学校の雰囲気を良くしよう、手厚く、きめ細やかな支援をしようという予防的側面と学校復帰や教室復帰などの治療的側面に分かれるが、共通していることは「学校生活にどのように適応させ、復帰させていくか」という視点である。
学校復帰という視点を持った対策に効果があるのかないなのかはわからない。しかし事実として、残念ながら不登校児童生徒数は年々増加している。
私はそろそろ発想の転換が必要な時期になっているのではないかと考えている。具体的には不登校児童生徒を減らすための対策を考え実行するのではなく、不登校になったとしても、社会的自立に向け子どもが成長できる環境や仕組みを考えていくということだ。
少子化が進行する社会。多様な価値観に溢れる社会。
この現状を考えれば、どんな環境や状態にある子どももしっかり育て将来の社会の担い手に育てる必要がある。学校が変わること、難しいのであれば学校とは異なる教育手法に取り組んでいるフリースクールなどの民間施設と連携していく必要がある。
学校現場を見れば、不登校児童生徒を減らすために、教員の方々は一生懸命考え、一生懸命働いている。それはとても尊いことだ。しかし、限られた人員そして教員の多忙化解消が謳われる中、思うような成果が出ないことは心身ともに疲弊させてしまう恐れがある。結果として、学校に登校する児童への教育や支援にも影響を与えることに繋がると考えている。
「こどもをまんなかに」という言葉の意味をしっかり理解し、実践することが政府の掲げる「誰一人取り残さない教育」に真っ直ぐ繋がっていく。私はそう感じている。
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