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母の教え№16 しつけと子育て(2)    2 担任の先生の悪口         3 子育ての基本


2 担任の先生の悪口

 たくさんの先生の中には、厳しい人、暢気な人、雑な人、気の合わない人など、いろいろな方がおられると思うが……、
『担任の先生の良いところは、どんどん話しても、悪口は、絶対に子供の前でするな!』
 というのが、母の教えである。
  
 こんな風だから、学校の先生の言われることは絶対的で、授業中に先生に立たされたり、拳骨を貰うことがあっても、全部お前たちが悪いからだと言われることが分かっていた。(この時代は、先生の多少の暴力行為も許されていた) そこで、できるだけ先生に怒られたことは報告しないようにしていたが、逆に、先生の方から報告が来ていたようだ。

 母は、家庭訪問の時から……、
『うちの子が悪いことをした時は、少々、叩いてもらってもかまいませんから、正しく導いてください』と先生に頼むくらいですから、悪い事をして、拳骨やビンタをもらうくらいのことは、初めから覚悟していたので、怒られてもそんなに応えていなかった。

 家族ぐるみで、担任の先生の悪口を言いたい放題にしておいて……、
『うちの子は、先生の言うことを聞かん!』  
 と嘆いている母親がいるが……、
『子供は親の鏡みたいなもので、批判した先生が好きになったり、指導を素直に受け入れる筈が無い』
 また、『担任の先生が、好きにならなければ、学校も勉強も面白くない筈だ』と言うのが母の持論である。


3 子育ての基本

 『子育てについては、いろいろな人が、いろいろなことを言うが、母ちゃんは、そんなに難しいものではないと思う』『基本は、三歳になるまでに仕込まないかん。〝三つ子の魂百まで〟と言われるように、まず、学校に行くまでに……〝ありがとう!〟と感謝の言葉が素直に言える子供に育てることが第一だ』
 次に、『金持ちと貧乏人の家庭に生まれた子供とでは、いろいろと育ちの条件が違ってくるが、兎に角〝我慢のできる子供〟に育てないかん。

 この点、金持ちより貧乏人の方が、何事にも我慢する機会が多いので有利だが………』

 第三に、『美しい花を見て〝綺麗だ!〟と思う子供に…』
『夕日の沈むのを見て、涙が出るほど感動できる子供に育てることだ!』 
 それには、『まず親が子供の前で、感動して見せなければならん…』
と言うだけあって、何時も、家の隅々にまで、空き瓶に草花が飾ってあったように思う。

 また、私を連れて歩いている時などにも、綺麗な花などを見つけると、わざわざその家の人に声を掛けて、その花を譲って貰ったりしていた。
 『あんまり綺麗な花に出会った時などは、〝花盗人〟と言って黙って摘んでもゆるされるそうよ!』などと冗談を言いながらも、必ず、家の人に声を掛けて譲って貰ていた。
 第四に、『小学校の間には、はがき一枚が自由に書ける程度の学力を身に付けさせれば良い。それ以外の学問は、荷物にはならんが、生きて行くためにはそんなに役立たん。人間元気でさえあれば、どんなことをしても最低の生活はできる』と考えており、近所の友人たちと遊ぶことを優先して、私達に勉強せよと言った記憶がないように思う。

  
 『義務教育の間は、普通の子供なら、特に勉強せんでも、先生の話さえ真面目に聞いておれば理解できる筈だ!』と言うのが母の持論である。
 父兄参観日には、どんなに忙しくても、必ず来ており、私たちが先生の話を、キョロキョロせずに聞いていたかどうかがチェクされ、その晩の話し合いにそのことが出てきた。 
 当然、何回手を挙げたかどうかと言うことも話題となるので、少しの予習はせざるを得なかったが…。
 第五に、『他人の立場に立って考えることのできる人間に育てよ!』 
『何時もかも、他人のことばかりを考えてはおれないが、時には他人の立場になって考えてみよ!』
『他人のことを考える余裕と優しさを持つことが重要である』と言うことである。


 この他にも、いろいろのことを言っていたが、特に、この五つのことが母の子育ての基本だったように理解している。

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