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経営学の知見:企業の環境活動が骨抜きにされるのはなぜか?

どんなに企業が環境問題に対応しようという取り組みを声高に謡ったとしても。
そのような取り組みがなぜ、尻すぼみになってしまうのでしょうか?

この問いを調査し、注目を浴びた研究がこちらです。
環境問題に向き合ってきた企業5社の変遷をつぶさに見ると、悩ましいプロセスが浮かび上がってきます。

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シドニー大学のライトらは、オーストラリアのエネルギー会社、金融機関、グローバルメーカー、保険会社、メディア企業の計5社を10年間にわたって調査をした。

どの企業も2000年代に、気候変動への対応を大きく打ち出したものの、10年後、それらの活動は結局後退をしてしまっていた。

その理由を70名へのインタビューなどをもとに調べると、どの企業も次の3つのステージを経ていたことが分かった。

#ステージ1:フレーミング
まず、企業として気候変動にどう向き合うかという「緊張」にさらされる。
そこで、企業は、気候変動は重要ですよ、と打ち出す(フレーミング)。その際、気候変動はビジネスの機会拡大につながるという解釈をすると同時に、意外と大変だといったネガティブな見通しは無視をする。

#ステージ2:ローカル化
そうすると、実情が「乖離」してしまい、批判をうけるようになる。
そこで、企業は、実情に合うように、妥協をし、局所的な取り組みを行う。新しい商品やサービス、組織能力や役割をつくり、新しいKPI(指標)をつくる。また、それらの活動を広くマーケティングを通じて伝えていく。

#ステージ3:ノーマル化
上記の取り組みが「評価」にさらされると、当初想定していた結果が出ていないなどの理由で、結局、ビジネス利益最大化を優先せざるを得なくなる。
そうなると、企業は、企業変動への対応をやめたり、また取り組みを曖昧にしていく。そして、もとの通りにもどっていく(ノーマル化)

5つの事例から、企業が気候変動に対応をしようと思っても、上記の3つのステージをへて、もとのビジネス通りになってしまうことが分かった。

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企業は、短期的な成果と長期的な目標のはざまで悩むものです。

この研究者グループは、企業は、長期的な目標に取り組むのに向いていないと結論づけています。そう、結局は短期をとらざるを得ないというと。

そして、それは、企業のリーダーが金の亡者だから、という単純な理由ではないのです。

実際、インタビューによれば、これらの企業のリーダーは、気候変動を何とかしたいと思っているのです。

ところが、今の企業活動の枠組みでは、結局は利益最大化に走らざるをえないというジレンマが浮かび上がっています。

このジレンマに多くの企業が今、直面をしています。

Wright, C., & Nyberg, D. (2017). An inconvenient truth: How organizations translate climate change into business as usual. Academy of management journal, 60(5), 1633-1661.

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