心理学の知見:私のこと、見えてる?
自分がそこにいるのに、あたかも自分がいないかのように扱われる感覚。
こうした「見えない存在」として扱われた体験をお持ちでしょうか。
別に、意図的に無視されているわけでもないし、攻撃されているわけでもない。
でも、いるのに、いないように扱われるつらさがありますよね。
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アイビー・ビジネス・スクールとブリティシュ・コロンビア大学の研究グループは、黒人、アジア系、ヒスパニック系など非白人女性に焦点をあて、「見えない存在」として扱われる体験を明らかにした。
アメリカとカナダで働く65人の非白人女性にインタビューした。彼女たちは、白人男性が多い職場で働いていた。
彼女たちは、4つのパターンで「見えない存在」として扱われていた。
①消去 存在そのものが周りに認識されない(62人が経験)
②均一化 個性やその人の能力が無視され、よそものの一人として扱われる(56人が経験)
③異国情緒化 異国情緒的な特徴に焦点を当てられ、個人としての価値が見落とされる(51人が経験)
④白人化 主流の文化や価値観に合わせる圧力を感じる(33人が経験)
#どれも心がいたみますね
こうした際、彼女たちは自分を恥じ、そして怒りを感じていた。
「見えない存在」として扱われた際、彼女たちは、3つのアプローチをとっていた。
アプローチ① ひき下がる
見過ごされることを受け入れ、引き下がる。たとえば、自分の国の食べ物を弁当でもってこない、とか。
アプローチ② 積極的抵抗
積極的に自己主張をし、見てもらおうとするが、反発を招くことも。
アプローチ③ プラクティカルな対応
問題の根本的な原因を理解し、他人とのつながりを築くために、正直な対話を試みる。
社会的なパワーが低い女性ほど、「いない存在」の経験が多く、自らを隠す傾向が強くなることがわかった。
逆に、社会的パワーが高い女性は、自己主張することで、まわりの認識を変えようとしていた。
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この舞台はアメリカとカナダですが、もちろん、「見えない存在」問題は、日本でも起こっていますよね。
自分がいないかのように扱われ、傷ついている人は多いでしょう。
ハラスメントのように明らかに見える危害であれば、まだ訴えやすいです。
しかし、「見えない存在」として扱われるとき、多くの場合、相手はとくにハラスメント的な発言もしていなけいのですよね。
訴えると言っても、なかなか悩ましい。
だから、問題として表に出にくい。
この研究は、この「見えない存在」問題を見える化してくれました。
#私のこと見えてる?
Bhattacharyya, B., & Berdahl, J. L. (2023). Do you see me? An inductive examination of differences between women of color’s experiences of and responses to invisibility at work. Journal of Applied Psychology.
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