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心理学の知見:人間の思考力は、伝統に制限され、AIで解放された。

2016年3月15日、グーグルが開発したAIプログラムAlphaGoが、プロの囲碁棋士を打ち負かしました。

エポックメイキングな出来事でした。

面白いのはここからでして。

打ち手が記録されはじめた1950年から2016年まで66年間、プロ囲碁棋士の打ち手のクオリティは、ほぼ横ばいで成長がなかったのです。

そして、2016年。これ以降、プロ囲碁棋士の打ち手のクオリティは一気に向上していくことになります。

なぜでしょうか。

今まで、プロ囲碁棋士の打ち手は伝統のパターンの中に制約されていたといえるでしょう。

斬新な打ち手を繰り出すAlphaGoからの学びが、この制約を解放してくれたという研究結果が出ています。

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カリフォルニア大学の研究グループは、過去71年間(1950年から2021年)に、プロの囲碁棋士による580万を超える打ち手の分析をした。#すごい!

コンピューターで580億のゲームパターンを作り出し、プロの囲碁棋士がAIにどれくらい勝てるかを見ることで打ち手の評価を行った。

1950年から2016年まで打ち手のクオリティは、ほぼ横ばいであったものの、2016年以降、飛躍的に向上し始めた。

なぜ向上したかを分析すると、今までにない斬新な打ち手を棋士が繰り出しているからだった。2016年以降、新しい打ち手の数も格段に増えていた。

AIが、人間に伝統的な打ち手から脱却し、新しい手を試すように促していた。

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一生懸命に頑張っていても、伝統というバイアスに制約されることがあります。

元囲碁チャンピオンのセドルリー氏がこう言っています。

「AlphaGoの手を見て、人間の創造性に疑問を持ちました。今まで知ってた囲碁の手が正しいのか、改めて考えさせられました。AlphaGoのやり方は新しくて、慣れるのに少し時間がかかりました。AlphaGoは私にもっと囲碁を学ぶ必要があることに気づかせてくれたのです」

僕らはいつでもバイアスをもちます。AIは、そんなバイアスに気づかせてくれる、学びの友として付き合っていくとよさそうですね。

Shin, M., Kim, J., van Opheusden, B., & Griffiths, T. L. (2023). Superhuman artificial intelligence can improve human decision-making by increasing novelty. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(12).

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