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心理学の知見:チームリーダーが自分の人事評価を開示したら、すごくうまくいきました。

チームミーティングの場で、チームリーダーがこう切り出したらどう思うでしょうか?

「皆さん、こんにちは。私が皆さんの改善点を知っているのに対して、私の改善点は皆さんは知らないですよね。ですので、上司からもらったフィードバックをみなさんに共有します。年末の評価では、次のような改善が求められました」


チームリーダーからすると、ちょっと勇気のいる会話ですが、その価値はあるのですよね。

面白いことにチームリーダーが人事評価を開示すると、チームの心理的安全性が持続的に高まる事例が出てきています。

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ペンシルバニア大学ウォートンスクールの研究グループは、リーダーが人事評価を開示する効果を調べた。

調査1
アメリカのCEO66人に、どれほど自分へのフィードバックや批判をトップマネジメントチームに共有しているかを聞いた。
その1か月後、トップマネジメントチームのメンバーにどれだけ心理的安全性を感じるかを聞いたところ、CEOがフィードバックを共有しているほど、チームの心理的安全性は高くなっていた。

調査2
次に、金融機関とヘルスケア企業の2社で、リーダー111名に次のいずれかを行ってもらった。
①自分の人事評価の結果をメンバーに共有し、意見交換を行う。
②メンバーに自分へのフィードバックを求める。人事評価は共有しない。
③特に何もしない。

1年後どうなったか?

①リーダーが人事評価をメンバーに共有したチームの心理的安全性は高まっていた。また、人事評価を共有し弱みを開示しても、メンバーからみたリーダーの能力の評価に影響はなかった。

②部下に自分へのフィードバックを求めたチームの心理的安全性は特に変化がなかった。もちろん、③の何もしないチームも変化はなかった。
さらに、リーダーが人事評価を共有したチームにインタビューをしたところ、次の3つのステップを経ていることが分かった。

ステップ1:初めはリーダーは自分の評価を開示するのはぎこちなく、メンバーもびっくりしている様子であった。
ステップ2:リーダーは徐々に開示することに慣れ、メンバーもそれに応えようとし、心理的安全性が築かれていった。
ステップ3:メンバーもリーダーにフィードバックできるようになり、リーダーもフィードバックをしあう文化を作っていった。

結論
リーダーが自分の評価を共有すると、チームの心理的安全性が高まることが分かった。

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自分の評価を弱みも含めて開示する。

一見、リーダーが弱く見えてしまうのではないか思いますが、そうではありませんでした。

弱みを開示しても、メンバーからみたリーダーの能力に変化はなく、チームの心理的安全性が高まったという事例ですね。

意外なことに、メンバーからフィードバックを求めることをしても、心理的安全性に影響はなかったようです。一見、うまくいきそうなんですけどね。
これは、メンバーから出たフィードバックには、リーダーが対応できないことも含まれており、リーダーもメンバーもフィードバックが形骸化していってしまったようです。

おまけ
実際に評価のシェアをやってみたい方のために、この研究グループが提案している会話例を貼り付けておきます。

「皆さん、こんにちは。私が皆さんのパフォーマンス評価の改善点を知っているのに対して、私のものは皆さんが知らないという状態に気づきました。私の上司からのフィードバックを共有したいと考えています。
年末の評価では、次のような改善が求められました:

[具体的なポイントを挙げます]。

何か疑問や質問があれば、お気軽にお知らせください。よろしくお願いします」

「上司からの評価を今まで公開したことがないのですが、これは少し変わった試みに思われるかもしれませんね。」

「近年、いくつかのリーダーが自らのパフォーマンス評価を部下と共有することで、透明性を求める動きが見られます。例えば、テクノロジー会社のグローバルセールスチームのCarolyn Everson氏は、社内グループで自らの評価を公開しました。彼女の取り組みを参考に、私もこの方法を取り入れようと考えました」

「皆さんのご協力と理解をいただき、ありがとうございます。質問や疑問があれば、いつでもどうぞ。」

Coutifaris, C. G., & Grant, A. M. (2022). Taking your team behind the curtain: The effects of leader feedback-sharing and feedback-seeking on team psychological safety. Organization science, 33(4), 1574-1598.

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