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第18回:スーパーマーケットの音環境づくりの成功事例 vol.2

さて、今日は少々復習です。

スーパーマーケットでお客様の歩く速度はなるべくゆっくりにしたい。いろいろな商品に集中しつつ目移りして手に取って眺めて頂きたい。そのためにはどのようにしたら良いでしょうか?

前号でお店の入口からお野菜、果物、お魚など生鮮食品コーナーでの音作りについてご紹介しましたが、今日はいよいよお店の中央エリアでの音作りを解説しましょう。そうです。

いろいろな商品に集中しつつ目移りして手に取って眺めて頂きたい。

そうなりますと、お店の中央エリアでは、ヴォーカルなしの楽器だけで構成された長調のインストゥルメンタルのスローな音楽を流すのが好ましいでしょう。

そしてお酒売り場では、お店の入口で耳にした「情熱的で明るくうきうきする」ラテン・ミュージックを思い出して頂きたい。中央エリアでは歌詞のないゆったりした曲調の音楽を耳にしていたお客様にとって、入口で耳にした歌詞付きのラテン・ミュージックが唯一のヴォーカル曲です。入口で聞いたアップテンポでリズミカルなラテン音楽がプライミング刺激となり、「ラテン系」を思い出したその時、アルコール売り場で「イタリアワイン」のラベルを見ることで、改めて「イタリア」のイメージが導かれ、その商品に目が止まる、手に取る、ラベルを見る、購入を検討する、というようにお客様の購入決定への導きをサポートする力が音やサウンドにはあります。

もちろん、入口での音楽はこのケースでは「ラテン・ミュージック」としましたが、入口での音楽は肝ですから、お店がお客様に何を販売したいのか、何をアピールしたいのか、によって選曲やサウンド・デザインはケースバイケースとなるでしょう。

このようにお店側の思いだけで「♪今日は〇〇の特売日」や「お店のテーマ曲」といった音楽を流すのではなく、お客様側のニーズや動機を総合的・戦略的に理解したサウンド・プライミングは売り上げの増加を促進する強力なツールとなります。

この他にも特定の音楽のジャンルが特定の商品の購入増加につながる。あるいは、お客様の導線(アプローチ行動・回避行動)もサウンドを使って構築することが可能です。そうしますと、サウンドによって演出された雰囲気が商品そのものより強くお客様の購入の決定に影響することすらあります。従って、場合によっては、「お客様の行動を促す適切なサウンド」がお店の責任者様やマーケティング担当者様のお好みのサウンドでない場合も出てきてしまいますので、ここはひとつ議論のポイントとなるかもしれません。

しかしただ、一つ言えること。

それは、科学的・戦略的・総合的に店舗や施設のサウンドを構築し、お客様の気持ちを導くことで「音をマネタイズ」できるということなのです。なぜならば、毎度おなじみ、「帝釈天で産湯を使い」文句ですが、「音やサウンド」=周波数の表現はヒトの「感情」を引き出し、動かし、「記憶」を呼び起こし、「行動」を喚起することができるからなのです。

次回は少し違った観点から音のお話をしてみたいと思います。Sonic=音は形容詞。機会にも優位性にも課題にも損失にもなりえます。企業としてどちらを選ぶのか、選択する時代がやってきました。少しだけお堅いお話かもしれませんが、お付き合いくださいませ!

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