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【登山記】日蓮聖人が眠る仏の里~桜満開の身延山中を行く その3

頂上 奥の院思親閣へ 

前回の記事はこちら。

 日蓮上人は、1274年6月17日に甲斐国波木井郷の南部六郎実長の招きによりこの身延山に入った。そして「日蓮が弟子檀那等は、この山を本として参るべし。これ即ち霊山の契なり」と宣った。
 さらには、「いづくにて死に候えども墓をば身延山に立てさせ給え」と、よほどここを気に入ったのか、自分が死したら、ここに埋葬してくれと遺言を残したという。
 時代を作った宗教革命者であった日蓮上人は、流罪により鎌倉、伊豆、房州、そして佐渡に渡った。命からがら佐渡から戻った日蓮上人を弟子の一人が丁寧に迎え入れたこの場所。
 美しい。

48丁目付近 山々の間を龍が下るように富士川と大城川が流れる

 途中、東照宮祠という徳川家康の側室お萬の方が家康の位牌を祀ったところがあった。丁目の表示も40の後半。いよいよ頂上が近づいてきた。

頂上から身延の町、富士川の流れをみる

 頂上に着いた。
 眺めは格別である。身延の町、富士川がよく見えた。富士山からの瑞雲が西方にたなびき美しい空だった。

 思親閣祖師堂に向かう前に、南部六郎実長を祀る開基堂にお参りした。彼が招かなければ、ここに身延山久遠寺はないのだ。

開基堂は、日蓮を身延山に招き入れた南部六郎実長を奉っている

 境内には、信徒が体を休める場所やロープウエイ乗り場、土産物屋などがならぶ。また西回りルートの終着点もあった。
 祖師堂は、思親閣との赤い扁額のある仁王門を潜った先にある。日蓮上人像やお手植えの杉の巨木など、日蓮上人に関わる様々なものが集約されている感じだった。

思親閣の仁王門 下の本堂域から移転されたらしい
日蓮上人お手植えの杉 巨大なコブが印象的だ

 思親閣はその字の通り日蓮上人が親を思って建てたものである。境内域にある日蓮上人像は、故郷を遥拝している。また日蓮は身延山入山後9年間一歩も離れなかったが、最後は故郷を目指し旅に出て、東京の池上にて没している。最後の最後には、故郷を見たかったのだろう。人間としての日蓮を近くに感じるエピソードである。

絶景の北展望台から眺め

 思親閣では御朱印の授与も行っている。御朱印を集めている人は、記念にいただくとよいと思う。
 この思親閣の北側にはぜひ足を運ぶべきだ。
 北側展望台からは、南アルプス連峰、八ヶ岳など日本を代表する高い山々が一望できる、絶景の眺望が楽しめる。

解説看板もあり、あそこはこの前登った、次はあの山に登ろうかと語る登山者もいた

 標高1,153mの身延山山頂から眺めることが出来る山々は、東に富士山・天子山塊・富士川・身延の町並み、南に駿河湾・伊豆半島、西に安倍山系・七面山、北に早川渓谷・南アルプス・八ヶ岳連峰・甲府盆地・奥秩父山系とある。
 特にこの北側のパノラマが素晴らしいと思った。
 眼下に見える早川渓谷は、日本の地質構造を東西に二分するフォッサマグナ上にあり、糸魚川~静岡構造線がはっきり見えるところだ。
 岩石の質がはっきりと異なる上、岩の中に太古の海の貝殻などが含まれて見つかるそうだ。フォッサマグナの形成原因は近年研究が進みいろいろな説がある。説は置いておくとして、地球の胎動により隆起した不思議がここで感じられる、見られるというのは感動的だ。

地球の不思議を感じることが出来る場所でもある

 難路を越えての参拝と素晴らしい眺望により清々しい気分になった後は、ロープウェイで下の久遠寺の本堂方面へ向かった。
 ロープウェイからは、久遠寺境内域の桜が、ことのほか美しく見えた。まさに日蓮が愛した桜の里だ。ロープウェイではわずか7分ほど。

ロープウェイからの眺め

 だが、この身延山久遠寺の霊気を味わうには2~3時間の登山道を歩くのがいいだろう。私たちは登山道を登ったが、ロープウェイで登ってから、登山道を下るのもいいと思う。途中下りを楽しむ参拝者も大勢見た。
 西回りコースは、まだ残しているので、次回の楽しみに取っておきたい。
 久遠寺本堂から、バス乗り場までは、またあの菩提梯を行く。
 下りもなかなかの試練だった。

菩提梯を久遠寺側から 少し足が震えた

 身延の町は、水晶や漬物、そしてみのぶまんじゅうがお土産として有名だ。最近、水晶に興味があるので、時間がある時にじっくりと見てみたい。地殻変動により、鉱物が豊富な甲州。太古の力が地表にあふれ出ているパワースポットといえるかもしれない。
 故郷を愛した日蓮が、それでも最後はここで眠り、自分が開いた法華宗の行く末、国の行く末を見守りたいと願った、その理由は、この身延の地が持つ大地の力故なのだろう。
 身延山久遠寺を守護する七面山の神は、天女の姿で現れるという。その表れの一つであろう久遠寺の枝垂れ桜は、今も美しい姿を見せて久遠寺を守っている。

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