市民エネルギーとは?

こんにちは!たっくみーです。タイトルの通り、今回はエネルギー問題の中でも市民エネルギーについて扱っていきます。これまでも気候変動やエネルギー問題を取り上げてきましたが、今回のテーマはまさにエネルギー問題の実態に迫るテーマです。

市民エネルギーというものがそもそも定義があいまいなのですが、ここでは、地域に住む市民が出資して作った電力または熱事業という風に考えてください。

東〇電力や〇西電力のような巨大電力事業ではなく、もっと市民が市民のために使うエネルギーを市民の力で生み出すというものが市民エネルギーです。

今回はその一例として岩手県紫波町にある紫波グリーンエネルギー、地域サステナジーという会社にお邪魔したのでレポートしていきます。

紫波グリーンエネルギーは何してる?

紫波グリーンエネルギーは主に紫波町の太陽光発電事業、地域熱供給事業を行っています。

太陽光はみなさんご存知の太陽光です。駅の屋根にも太陽光パネルが取り付けられていましたが、屋根を使った太陽光パネルを進めていました。

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非常にきれいな街並みで、東北本線が開通したタイミングで再開発を行い、魅力的な街が作られています。

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そして、この街づくりの上で重要なキーとなったのが地域熱供給事業です。
この単語はたびたび出てくるので覚えておきましょう。

地域熱供給とは、地域に熱を供給すること。一般的な家庭で言えば都市ガスなどのインフラを整えることです。
ここでは少し変わったスタイルをとっています。
それが木質バイオマスによる地域熱供給です。

木質バイオマス、一度くらいは聞いたことがあるかもしれませんね。バイオマスとは動植物から生まれたエネルギー資源のことを指します。木質バイオマスは簡単にいうと、木を細かくしたチップを使って燃やすことでエネルギーを生み出すことです。これが環境問題を考える上で非常に大切なエネルギー資源となる訳ですね。

ところでなぜ石油は燃やしたら環境に悪いのに、木なら大丈夫なの?と思ったことはありませんか?意外と理解しにくいのですがこれはカーボンニュートラルという概念に基いています。

バイオマスは、動植物から自然に生まれたものを燃やすだけだから、この二酸化炭素はもともと大気中にあったものを戻しただけと考えることができる。これがカーボンニュートラルです???

わかりにくいですよね。伐採などされたほとんどの木はほったらかしにされ、いづれ自然に還ります。でも実はその際に二酸化炭素が出ています。どうせ二酸化炭素出すなら、ほったらかしにするんじゃなくて燃やした方がええやん!っていうのがカーボンニュートラル的な考え方です。理解できたでしょうか?

紫波町では、地元の伐採林や松くい虫にやられた松などをチップと呼ばれる燃料に変換し、それをボイラーで燃やすことでエネルギーを生み出しています。その熱は温水となり、地域の熱を供給しています。まさに持続可能な街づくりを体現していますね!

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再エネが挑む矛盾

一通り見学したあと、ここの社長さんとお話する機会もありました。その中で浮かんできた再エネの課題そして矛盾について共有していきます。

一口に再エネといっても風力や水力、太陽光などと様々な発電方法があり、それぞれに一長一短があります。同様に規模を考えると大きく2通りのパターンが浮かびあがってきました。仮にも大資本型と地域循環型とでもしておきます。
それぞれの特徴をみてきましょう。

大資本型

おおざっぱにいうと大規模に作られた再生可能エネルギーの発電所のことを言っています。外資なども入りながらFITと呼ばれる法律をうまく利用して、再エネが普及していきました。

実際にここ数年で太陽光は7~8%程度増えたのではないでしょうか。しかし、数字の裏に隠された秘密も私たちは知っておく必要があります。

大規模開発による環境負担

基本的に再生可能エネルギーは儲かるような事業ではありません。確かに太陽光などの価格帯も下がり、今まで以上にはビジネスとして成り立ちやすくはなっていますが、それでも火力や原子力と比べて経済的な優位性には勝てません。

その中で補助金などの支援を得ながら進んだのが大規模な再エネの開発です。代表例としてはメガソーラーです。

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広大な土地を買い取り、山を削りとり、太陽光パネルに代えていく。資本主義社会なので大量生産すればするほど価格が下がり企業としても設けが出てきます。

このタイプのエネルギーシフト(いわゆる火力から再エネへのシフト)はある程度の効果を生み出しているように思います。前述したように少なからず太陽光は普及し、他の再エネも同様に増えてきています。

海外から強く非難される石炭火力、国内から強く非難される原子力を中心に電力を生み出しているわが国では、大資本を投じて再エネに切り替える必要があるのかもしれません。しかし、そこには大きな落とし穴があります。

再エネによる環境破壊

上でみたようなメガソーラーは、近年では住民などから強い反対運動が起きています。なぜならば、それが大きな環境への負荷を与えているからです。

森林の割合が非常に高い日本はメガソーラーを生み出す際にしばしば木を削り取って太陽光を設置します。
森林は土や水を育むので場合によっては木だけでなく、付近の農家などにも大きく影響する場合があります。また土に大きく影響するので土砂災害などのリスクが高まる場合があります。

日本では法律によってそういうことがないように十分な環境アセスメントが求められていますが、その法の抜け穴をたどって金儲けのために利用しようとする輩が現れます。

不十分な環境アセスメント、住民の意思を無視した事業の推進。しかも、地域の経済を回すことなく、企業の利益だけに集中してしまうこともしばしばです。

これは太陽光発電だけでなく、風力やバイオマスなどでも同様のことが言えます。再エネはこういったリスクと隣合わせで作られています。

地域循環型

その中で近年では、市民が市民のために市民のための再エネを進めようとしているところが表れています。その一つが紫波町です。他にも長野県飯田市や福島県飯舘村などもそういった事業をしていることで有名です。

ポイントとしては市民が再エネに出資し、地域の資源を使ってエネルギーを作り出し、そこに携わるのは地域の事業者で、そのエネルギーを地域のエネルギーとして供給し、生み出された利益を市民に分配する。それが地域循環型のエネルギー供給システムです。

紫波町では、それを地域の伐採林を利用して、業者にチップにしてもらい、住民に熱という形で供給していました。これは同時に廃れつつあった林業の再生も促しています。

このように住民にも地域にも社会にも役立つ形が求められているのではないでしょうか?

しかし、このスタイルは社会に大きなインパクトをもたらすことが難しいのが現実としてあるようにも思います。

CO2の排出を取り締まることを定めた国家間の条約であるパリ協定では、気温上昇を産業革命以前より1.5℃に抑えることを目標としています。
しかし、このような地域循環型のシステムではコンセンサスを取るのに多くの時間を必要とし、ビジネスとして成り立つのも資源に恵まれた一部の地域という問題もあります。

また、実際に街一つが排出量を抑えられたとしても世界的に与える影響は皆無に等しく、現実的には地域循環型のスタイルはごくわずかな地域でしか進んでいません。

まとめ

世界をより良くするためにはものすごい手間がかかり、与える影響は世界的に見ればごくわずかなものがほとんどです。

エネルギー問題は様々な利権や心理が絡み、物事を単純化して表すことができません。

それでも、自分ができる影響下の中で地域のために社会のために動いている人たちのことを知っていただけたら、少しでも社会は良い方向に進んでいくのではないでしょうか?

最後までご覧いただきありがとうございました!


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