Intellectual Giftedness - 才能についての科学 #5

ギフテッドと優等生- 学習に対する根本的な違い

 ― フィリップが小学生だったころ、アマンダは息子の学力を伸ばすためにどうしたらいいのか、悩んでいたことがあった。そんな折、プリンストンの教育ママのひとりから、「クモン」という塾に行かせたらどうかとすすめられた。(中略) 何列にも並んだ子供たちが小冊子のようなものになにかを書き入れていた。問題を正確に解いた子供たちには、褒美としてキャンディーが与えられる。アマンダは、このような場所に息子を入れることにためらいを覚えた。あまりに受身で与えられたものを消化するだけの方法だと思われたからだ。 ジュディ・ダットン 『理系の子 - 高校生科学オリンピックの青春』

 どのクラスにも、努力によって高い学力を身につけた優等生がいる。

 優等生たちはとても勉強熱心で、彼らの教師から言われた通りに学習する。もちろん、賢くて知的である。優等生たちは教師の言うことに疑問を挟むようなことはせず、質問された時には期待されている通りの答えを返す。真っ先に問題を解いてキャンディーをもらいにくる彼らのことは、教師たちも大のお気に入りである。成績はほとんど満点で、ティーチャーズ・ペットなんて揶揄されることがあるようなタイプだ。学校によく適応してくれる彼らがいてくれるお陰で、今日もクラスは平和で、問題なく過ぎていく。その教師に、「あなたのクラスにギフテッドはいますか?」と聞いてみると良い。指示される先に、その優等生の顔があったとしても文句は言えまい。

 あなたはもう答えを知っているはずだ。本当にギフテッドであるのは、そのクラスの端っこで、皆から変わり者だとレッテルを張られている別の子供だ。彼は多くの点で風変りだ。教師によく議論を吹っかけてくることが多く、反抗的だ。質問に答えてくれると思ったら、期待していたものとはまるで違う。どこからそんな発想に至ったかまるで見当のつかない、脈絡のない突飛なアイディアが飛び出してくる。内容の繰り返しの多い授業にはほとほと飽き果てている様子で、いつも関係のない本ばかり読んでいる。仕舞いには、授業の内容からも大きく置いてかれてしまったようだ。

 多くのギフテッドは、学校が嫌いだ。普通の授業では、彼らの知的好奇心を満足させることは難しく、その能力を出し切って挑戦するほどの課題も与えられない。どうして、既に代数を理解できているのに、自分が小学生だからというただそれだけの理由で、鶴亀算で問題を解かなければならないのか?クラスの平均とはあまりにも知的能力がかけ離れてしまっているのだ。それに、既に大まかな考え方を習得してしまった内容に対して、いつまでも同じドリルを課されるのは苦痛以外の何ものでもない。枠に囚われずに想像力を羽ばたかせることができる頭脳にとって、単調なドリルの繰り返しなど苦行以外の何ものでもない。フラストレーションを抱えたギフテッドは、一見するとふざけているような突飛な発言をして、クラスの調和を乱そうと試みる。それでも不思議なことに、いざテストを行ってみると、非常によくできるのだ。

 もちろん、学校によく適応できたギフテッドは優等生にもなる。しかし、逆は成り立たない。努力によって高い学力を身につけた優等生と、ギフテッドは根本的に違いがある。優等生は確かに賢く、知的であるが、ギフテッドはもっと賢く、もっともっと知的であるのだ。

 ギフテッドと、努力による優等生を見分けるためには、次のような小さなヒントを見逃さないようにすることだ。

 ギフテッド: たくさんの質問をする
 優等生: 質問に対してストレートに答える

 ギフテッド: 機敏であり、落ち着かない
 優等生: とても落ち着いている

 ギフテッド: 遊ぶことに興味を示す
 優等生: 授業に集中する

 ギフテッド: 粗削りで、一見すると馬鹿げているようなアイディアを出す
 優等生: 保守的な提案ばかりする

 ギフテッド: ディスカッションに喜んで加わる
 優等生: ディスカッションには促されて参加する

 ギフテッド: 授業の枠を超えて学ぶことを好む
 優等生: 授業の内容やカリキュラムにこだわる

 ギフテッド: 新しいことを易々と自習し、身につける
 優等生: 親や教師のサポートが必要である

 ギフテッド: 学ぶことは好きであるが、学校は好きではない
 優等生: 学校にいることが大好きである

 ギフテッド: 膨大な知識から推論することができる
 優等生: 良い記憶力を持つ

 ギフテッド: グループの枠を超えているが、テストでは良い成績を収める
 優等生: グループのトップの成績を取る

 たいていの場合、教師や両親はギフテッドの子供を持て余してしまう。生意気で扱い辛いギフテッドは脇に置いて、従順な優等生に時間をかけるほうがよっぽど楽なのだ。ギフテッドはどうしてこうも問題ばかり起こすのか?その敏感すぎる神経系の謎に迫ってみよう。

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