道しるべ(3)

【成功のキーファクター】
 私自身がサラリーマンとして一応成功したキーファクターの一つに強烈な好奇心(CURIOSITY)があったと感じています。
 1970年代後半、出向から帰任すると上司との折りあいが悪く(生意気?)仕事もそんなに与えられていませんでした。暇に任せて生産性本部に財務管理の資格取得に通っていた私ですが、たまたま社宅のお隣の先輩と懇意になり(遅刻仲間)、ある「商品プロジェクト」に誘われました。会社の主力商品は差別化しにくい製品で、競合とは「品揃え、メーカーイメージ、宣伝量」等で圧倒的な差をつけられていた時代でした。そこで、他メーカーとは一線を画した「差別化戦略を用いた商品プロジェクト」を開始していたところでした。先輩が多少の経理知識のある私を「使えるかも?」と声をかけてくれたのだと思います。(金勘定のできる人を探していた?)
 参画してびっくりしたのが、いろいろな部門の人が、他社に勝ちたいという一つの目的のために、楽しく面白く仕事をしている姿でした。それまであてがいぶちの仕事を「仕事」だと思っていた私の好奇心が動き出しました。
 市場調査?技術開発?生産方法?広告宣伝?金の配分?初めて聞く専門用語の意味?何でこんなに楽しく?
 素人の私は興味津々。一つ一つの機能が複雑に絡み合って商品が出来上がっていく様を「何故?何故?」と食い下がり問いかけながら勉強しました。サラリーマンとしてはやや干されていた私にとって初めて「仕事」というものを実感させてくれたプロジェクトでした。
 成果として1980年代初頭に当時「グレード」という考え方のなかった業界で「ブランド戦略」を打ち立て、特長のなかった中堅企業が「ユニークな戦略を持つ企業」として復活を遂げる起爆剤となったのです。
 このプロジェクトを通して、私は、市場調査~商品企画~技術開発~生産~広報宣伝~営業~物流といった機能を一貫したプロセスワーク、商品コストの成り立ち、ユーザー付加価値の考え方を身につけていったのだと思います。そして内外を問わずその道の専門家と知り合うことができました。
 わずか1年間ほどの期間でした。後になって整理すると、「ある偶然」と「人一倍の好奇心」がこのプロジェクトとの出会いと仕事の面白さを呼び込んだのだと思います。社宅の隣人との出会いという偶然と強烈な好奇心が動機になり自然と楽しく実践的な知識と行動が身についたのだと。また同時に「俯瞰して」物を見る癖もついたような気もします。
 いろいろな事象に「興味」を持ち、観察し、疑問を感じる、調べる、やってみる、こうした「好奇心」が自信につながり、仕事が楽しく思えてきます。「好奇心」感性の高い若い時こそ大事だと思います。

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