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[SS]居場所

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本を読みながら母を思った、母は世界を豊かにする為に働いているのよと言います、私も大人になったら働かなければいけないのかしら、数%の人が世界の富を独占しているのよ、私達のすべき事は世界の権力者とお金持ちが共感している豊かさに気づくべきよ、それが今の時代の文化で未来の暮らしになる筈よ

私がショートに入ったのが昼を過ぎてからだったので、夕食迄時間があったのと高揚して眠れなかったので、談話室を利用して読書しようと思った。ある本を手に取ると吉田松陰先生の本でした。安倍元総理の愛読書でもあり、母が以前に教えてくれたのだ。その本は日本を豊かにする国作りが書かれています。

私はリハビリ病院のショートステイを利用していた、Mさんと一緒に大内弘世に逢いに行った母を精神世界から救う旅に出る為だ。病院の個室は過ごし易く、食事も運ばれて、利用者はぐっすり眠る事が出来た。弟も母も病院の他の部屋で同じ様に過ごしているのである。談話室もあり図書館の様になっている。

私は母に合わして下さい、Mさんは弟さんの世界に行ってらっしゃいますと答えた。私は弘世に会えたんですか、それは分かりません、でも納得されればお母様の意思で戻ってこられるはずです。私は母の事が心配です、だから母を精神世界から連れ戻したいのです。Mさんは解決するには時間が必要なのです。

Mさん世界は、現実で生きる事も夢の世界にいたい事、両方とも正しいものだよ。心を傷つける事をしなくなれば、戦争はなくなり、両者はお互いを大切にして必要不可欠なものになるはずだ。現実と夢の境界で、あなたを支えている世界に頼ってくれたら良い。私はこの病院の入り口でいつも待っていますよ。

Mさんはリハビリ病院で心理療法士をしている。心の病を抱えている人の気持ちを受け止めてあげる事が仕事である。Mさんは母を弟の精神世界へと導き、大内弘世と対話したいという気持ちを受け止めました。Mさんも精神世界の住人なのである、現実とファンタジー、両方の世界で患者さんを支えています。

母が突然、現実の世界から姿を消してしまう。私は母が弟の精神世界へと導かれて、室町時代の煌びやかな文化を現実の社会に再現する為に、大内弘世に会いに行ったのだと確信した。私は母を探す為に、リハビリ病院へと向かったのである。リハビリ病院にある、精神世界の入り口にはMさんが居たのである。

精神世界は山がそびえ、耕作地があり、海に面している、豊かな大地に人々の暮らしがある。人の生活の中には神様がいて、それを守る人が祭り事を行ない、多くの人が百姓として働いている。何百年という長い間、人の営みは変わらずに先祖代々が受け継いできた文化を守っています。長い歴史があるのです。

食べたいものある?僕はトンカツと答えた、彼女が作ってくれたカツ丼を頬張り、話に耳を傾けていると、店には内緒なんだけど私のオプションがあるのと艶っぽい表情をする。僕はメニューからレンタル彼女を選ぶ、彼女は友達の振りをしてくれて、期待したスキンシップをしてくれる。太ももにタッチした。

女性は25歳の介護福祉士で週一回食事を作って貰っている。僕は鬱病を患っていて心療内科にかかっている。一人暮らしで栄養バランスが悪いので彼女を紹介して貰ったのだ、通所介護を5年経験して派遣介護に登録した。理由を聞くと良い給料で働いてみたかったのだ。僕が初めての派遣の患者さんでした。

マッサージしてあげましょうか、その女性は怪しく微笑んだ。僕はソファーにうつ伏せになるとバイトが忙しくて身体をほぐす暇もなくて、女性は両手で背筋の筋肉を優しく押すと、上半身裸になって貰えますかと話した。手慣れた手つきで、オイルを肩の筋肉の周りに染み込ませる様に揉みほぐしたのだった。

弟は夢の世界を持ち、自らの精神世界を守る為にリハビリ病院に入院した。声はまるで人間の様に弟に話しかけてきたが、弟の理解では対話するものではなく、ただ世界が存在するのである。夢の中では自由に空を飛ぶ事も出来たし、現実の世界の望みを全て叶える事が出来た。弟は精神世界の主になったのだ。

母の記憶には弘世が成長する姿が映る、自分が何者かは分からないが、弘世の様子を観ると親密さがうかがえる、今考えると弘世の母なのではないかと思うのである。母が体験した室町文化は派手さはないが、高い人の教養を感じる事ができたし、躍動する生き方に日本人の誇りを伝えていけると思うのである。

弘世の母は弘世が武士として成り上がっていくのを側で見続けた人である、京都の街にも弘世に付いて長く滞在した事がある。弘世が京の都を山口に勧招したのも、母の影響があったのではないかと言われている。弘世は室町文化の能や歌舞伎を体験して素晴らしい工芸品を山口に伝えた、今の大内人形である。