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発刊順:61 魔術の殺人

発刊順:61(1952年) 魔術の殺人/田村隆一訳

妹のキャリイ・ルイズのところへ行って欲しいの。彼女がとても心配だから―マープルは、旧友のたっての願いを聞き入れて、変わり者の男と結婚したキャリイの住む邸を訪れた。キャリイが夫とともに慈善事業として未成年の犯罪者ばかりを集めた少年院を経営していることもあってか、その邸には一種異様な雰囲気が漂っていた。キャリイの夫が妄想癖の少年に一室に閉じ込められ命を狙われる事件が起きたのも、そんななかでだった。しかもそれと同時刻に、別室では不可解な殺人事件が発生していた!魔術的な殺人をあばくマープルの推理は?

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より


ミス・マープルは、50年以上も昔の同級生の依頼を受けて、キャリイの住む屋敷へ赴く。そこは、キャリイの3度の結婚による縁者達が集まっており、登場人物がとても多くて混乱する。
 
いつもクリスティーは、事実は見たとおりではないというところにトリックをしのばせる。今作は、屋敷自体が舞台となって、そこに魔術の仕掛けが施されて、マープルが手品のトリックを見抜くように、見事にその実体を暴く。
 
重要な役割を演じるエドガーという精神薄弱的な青年を見たマープルは、

自分の住んでいるセント・メアリ・ミード村でエドガー・ローソンとそっくりのパセティックな性質の人間にお目にかかったことがあるのだが、誰だったか、それさえ思い出されたらどんなにいいだろう…

と思うのだった。
もちろん、物語の終盤には、エドガーとそっくりな人物が思いだされ、それが事件の真相へと導くヒントになっている。
 
登場人物の多さと、それによって物語を複雑にして犯人の姿を隠してはいるのだが、その分面白味があまり感じられなかった。
 

HM1-65 昭和62年9月 第13刷版
2023年3月19日読了

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