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FIREした理由③会社員時代の苦悩


東京の本社へ転勤

西日本の企業城下町での工場勤務から、入社3年目で晴れて東京へと転勤になりました。
しかし、相変わらず会社の業績は悪く、経済的にもあまり余裕はありませんでした。
東京勤務と言っても、当時は日本全体で景気が悪く、千葉の寮と会社との往復で疲弊し、都会の生活を満喫するという感じではありませんでした。

配属されたのは人事関係の部門で、ちょうどリストラをやっていた真っ最中なので、周囲の人間関係もぎくしゃくした雰囲気でした。
また、ベテラン社員もたくさん退職していて、人手不足で多忙な状態でした。
そのような中、運が悪いことに、配属先の上司が今の言葉で言う「パワハラ上司」でした。

パワハラ上司の下で「抑うつ状態」再発

もっとも、20年以上前の当時は、現在の感覚から振り返ると明らかな「パワハラ」や「モラハラ」が当たり前に行われており、「サービス残業」も横行していました。
私の会社はさほどパッとしないメーカーなので、そこまで体育会系のイケイケどんどんの雰囲気ではなく、むしろ厳しい世間に比べたら、緩くてのんびりした雰囲気だと感じていたくらいでした。

転勤後は、はじめのうちこそ丁寧に扱われましたが、次第に仕事のレベルが高くなり、ある一線を超えたところで「うつ状態」に陥ってしまうことになりました。
きっかけは、その上司の方針として、ギリギリまで負荷をかけ、いわゆる「詰める」という状態に追い込まれたからです。
それは、配属された人事部門の伝統的な育成方法だったようですが、理論よりも根性を重視する、かなり時代錯誤のやり方だったような気がします。
また、私の性格として他人に気軽に相談するとか、仕事を任せるということが苦手だったこともあり、自分の一人の能力では処理しきれない量の業務を抱え込んでしまっていました。

そのような中、転勤後半年くらいのことですが、あまりの業務量の多さのため、日曜日に休日出勤して一人黙々とパソコンに向かっていたところ、何とも言いようの無い不安な気分に陥りました。
パソコンの画面に向かってエクセルを処理していたのですが、そこに表示される数字が読めなくなってしまったのです。
画面に表示されている数字が何なのか分からなくなり、1から順番に2、3、4...と数えて行くのですが、いくら数えてもその数字まで辿り着きません。
その内、胃がキリキリする程気分が悪くなってきたので、誰もいないオフィスの中、床に寝そべってしばらく横たわっていると、少し気分が回復していきました。
その日は仕事にならないと思ったので、切り上げて会社を後にしました。

今から考えると、明らかなメンタル不調で、神経性の胃炎や過呼吸もあったように思います。
しかし、その当時はまだ心療内科やカウンセラーを受診するということが一般的ではなく、気分転換すれば治るだろうと思い、軽い運動をしたりお酒を飲んだりしましたが、夜はなかなか寝付けませんでした。
翌週は何とか会社に行ける状態でしたが、仕事の効率は低下し、自分で自分の仕事がどれくらい進捗しているのかも分からず、ただパソコンの画面を見つめているという状態が続いていたように思います。
さすがにそこまで来ると、「パワハラ上司」も私の変調に気付いたようですが、業務量を少し減らしてくれた程度で、休暇を取ったり、産業カウンセラーの面談を受けたりというアドバイスはありませんでした。

「冬季うつ」

その後、体調はやや回復し、仕事にも支障が無い状態だったため、異常なメンタル不調は一時的なものと考えていました。
うつ病は「心の風邪」という言葉が使われていたため、風邪をひいただけだろうと軽く考え、カウンセラーへの相談などもせず、普通に仕事をしていました。

ところが、翌年の暮れ頃にまた「プチうつ状態」に見舞われました。
夜眠れなかったり、仕事に集中できないという状態になりますが、食欲がなかったり朝起きられないということは無かったため、会社へは出勤していました。
ただ、会社の近くまで来ると、その日の仕事や人間関係のことで不安になり、近くの公園や喫茶店で始業時間ぎりぎりまで時間を潰してからオフィスに向かっていました。
そういった「プチうつ状態」の間は、思考能力が低下し、考えがまとまらず、会議などに出ていても他人の発言を聞いていないという感じで、明らかに業務効率は悪い状態でした。
しかし、そのような症状は数日から数週間で軽快し、ある朝ふと気分が軽くなるという感じでした。

私は人事部門に所属していたため、心のケアを重視する風潮が高まったこともあり、企業研修でメンタルヘルス講習を開催する機会が増えました。
自分でもいくつかの講習を受けてみて、私が学生時代から感じていた症状は、恐らく軽度の「抑うつ状態」であるということを、その時初めて自覚しました。
また、その時「冬季うつ」という症状があるということも初めて知りました。
「冬季うつ」とは、毎年秋から冬にかけてうつ症状が現れる「季節性の気分障害」だそうで、日照時間の短さや気温の低下が要因になっていると考えられています。

振り返ってみると、会社員になってから「プチうつ状態」になるのは、冬のことが多かったような気がします。
それまでは、年末で業務が多忙になるのが「プチうつ状態」の原因だと思っていましたが、日照時間や気温も関連していたということが自覚出来ました。
「冬季うつ」への対応としては、起床時間を固定して規則正しい生活を送り、太陽の光を浴びる時間を意識的に増やすのが効果的であることを知りました。
冬場は意識的に早起きして外に出るようにしたところ、毎年のように苦しんできた「プチうつ状態」は、重症になる前に改善するようになりました。

退職について考えるように

このように、メンタル面の不調と折り合いを付けられるようになり、仕事も順調にこなせるようになっていきましたが、やはり自分は会社員として向いていないのではないかという違和感は消えませんでした。
ただ、仕事の面では他人よりも評価されることが多く、責任ある仕事も任されるようになり、それなりに順調に昇進していきました。

しかしながら、常に「プチうつ状態」が再発するかもしれない状態で仕事をしており、更に管理職など責任の重い立場になると、精神的重圧により本当にうつ病になってしまうのではないかという不安は拭えませんでした。
傍目には順調に仕事をしていると思われていたかもしれないですが、私は30歳前後で下級の管理職になった頃から、早期退職を夢想するようになりました。


気分転換

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