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「王さま、僕はあなたのことが嫌いになりそうです」

世界一周160日目(12/5)

今日で東南アジアをぐるぐるまわる旅もおしまいだ。

ロシア、モンゴル、中国を第一部とし、ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマーを第二部とするなら、ここから「インド、ネパール編/第三部」が始まるわけだ。

『もうこれは、「清水陽介」という旅人の
旅路を綴ったロードムービーだよぉぉおぉぉお!!!』
...と一人で興奮している次第であります。

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出発は10:55PM。まだまだ時間がある。
僕は日記を書いたり、同じ宿の日本人の方々とお喋りをしながらして時間を過ごした。

今日はタイの王様の誕生日。

ネットのニュースを見たところこの日は一日国民が王様の誕生日を祝うそうだからデモも沈静化するようだ。これなら空港までスムーズに行けるだろう。

それにしてもデモメシに今日もありつけたのは意外だったなぁ...

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「で、何時に出るの?」
「3時には出ようかなと思います」
「えっ!?それ早すぎない?」
「いやぁ、空港で遊ぼうかなと。カフェでWi-Fi使ってネットしたりしますよ」

なんて会話をしてフロントに置かせてもらったバックパックを担いで宿を出たのは4時前だった。ここから安く空港を目指すため「59」番のバスに乗らなくてはならない。

デモが落ち着いたからと言っても大通りは車が通れるようにはなっていない。バスはちゃんとやってくるのだろうか?

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バス停で待っていても59番のバスはなかなか現れなかった。

近くの服屋のおばちゃんは僕がiPhoneの手描きアプリに書いた「59」を見て「ここに来るから大丈夫!」と言ったけど、さっきから目の前を通り過ぎて行くのは全く違う番号のバスのみ。

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頻繁にやって来る12番のバスに乗れば行けないこともないのだが、乗り換えをしなくちゃならない。

お金を節約したいのもあるし乗り換えもめんどくさい。なにより僕には時間がある。

おばちゃんの言うことが信じられなかった僕は側で待っていた人にも訊いてみた。二重、三重チェックは大事だ。

彼らは知ってそうな他の人に確認しに行ってくれた。どうやら59番はここへやってくるそうだ。


「まだかぁ...?まだかぁ...?」

だんだんとソワソワする。40分以上待ってもバスはやって来ない。にしてもなんで59番だけ!

一時間後、ようやくやって来たバスに僕は飛び乗った。

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この時もこのバスが空港に行くのかちゃんと確認しておいた。ふう。これで空港に行ける。



だが、ようやく来たバスはちっとも進まない。


「ジリジリジリジリ」ほんの少しずつしか進まないバス。アイドリングストップなんてここでは通用しない。排気ガスなんて常時出ているし、どこもかしこも車だらけ。車が都市に集中してしまうことも問題なんだなぁ...

なぜか途中で59番から別の59番へ乗り換えさせられて、バックパックを席に立てかけると僕は窓の外を眺めた。

『あれ?昨日より人が増えてないか?』

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....増えてるっ!

わらわらわらわらわら蟻の大群を見ているように黄色いTシャツを着たタイの人々が車道もおかまいなしに途切れることなく渡って行く。

バスはほんとうに少しずつしか進まない。
だ、大丈夫だ!僕には時間があるんだから...!!!

焦る気持ちを紛らわせるために前にいるベビーカーの女のコに向かって変な顔をして笑わせていたんだけどー...

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『あれ?ここって?』

乗り場から一時間かけてぐるっとまわって来た場所はまさにデモの中心地。

てかこの場所まで宿から歩いて15分もかからない。
前に座っていたベビーカーの家族は途中でバスを降りた。

「15kmだったら歩いて行けば5、6時間で着くんじゃない?」「はっはっは!バックパックを背負ってそこまで歩かないっすよ!」
なんて宿の方々と冗談を言っていたが、マジで歩いて行った方がよかったかもしれない。

なぜか群衆のど真ん中を突き抜けようとするバス。
おかまいなしのタイ人。渋滞なんて気にしない。

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今日は王様の誕生日なんだからこんなところを通る車が悪いんでしょう?と車の間を縫うように行き来する。

誰か!!!いいかげん交通整理してくれぇぇえええ!!!

王様の誕生日を祝うのと、交通が麻痺するのは違うだろぉぉおおお!!!

おうさま...、この国ではたくさんの人があなたの誕生日を祝っています。
ですがー、僕はー、

あなたのことが好きになれそうもありません(←逆恨み)。


群衆のまっただ中でバスが立ち往生していると、ようやく誰かがフエを鳴らして交通整理が始めた。それでもスムーズには進まない。時計を見ると19時前。

バスを待って1時間、
バスに乗って約2時間。
進んだ距離は宿から徒歩15分の距離。

フライトの時刻は22:55だが、チェックインは2時間前にしなくてはならない。リミットは8時55分。
残り2時間。

こ、このままバスに乗って空港まで辿り着けるのか?
もし間に合わなかったとしてもこの状況を考慮してくれるのか?

そういや、ナオト・インティライミが世界一周にでかける時、調子のって15分前に行ったら搭乗拒否されたんだっけ?

僕と一緒に乗っていたタイ人は「This is Thailand!」とか「たぶん、2時間で着くわよ」とかすげえ曖昧なことを言ってくる。




「すいません!ここで降ります!」

お金のことよりもリスクのことを考えた。

マップアプリを見てとるべきルートを決め、可能な限り早歩きで近くの駅へと向かった。歩き出してみると分かる。意外と駅が遠い。時間は僕の気持ちなんて全く無視してコチコチ進んで行く。ヤヴァイ...

車だらけの道路。その脇に一台のバイタク。
「お〜い!ちょっと待って〜!」
日本語でバイタクを停め、空港までの値段を訊いた。

タイのバイタクやタクシーはしょっちゅうツーリストを騙して来るから僕は一回も使わなかったがまさか最後の最後にお世話になるとは...頼むからボってくるなよ...。

「ドンムアン空港までいくら?」
「180バーツ」
「お願いします!(即答)」

バイタクは車の間をすり抜けて走り出した。

渋滞を抜けるとアホみたいに快調に走る。

「ひゃほぉおおおぉぉぉいっっっ!!!」
「ドルン...」
なんの前触れもなく停まるバイタク。

えっ?空港ってもっと先でしょ?

目の前にはスカイラインの入り口。

「エアポート!」狡猾なドライバーが言う。

ははは。わかったよ。電車で行けと。
てか、スカイラインって
空港まで走ってたっけ?

近くにいた歩行者に空港まで行くかと尋ねると「Yes」との返答をもらったので僕はファッ◯ンドライバーにお金を払って階段を駆け上がった。

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現在7時20分。

「空港まで行きたいんですけど!」
「じゃあモーチットまで行ってそこからタクシーだね」
結局そうなるかぁ...

僕はウィークエンドマーケットがあったモーチットまで34バーツ払ってカード型の切符を買った。

スカイラインは渋滞なんて関係ない。下を走る車もここまで来るといつもと変わりなく走っていた。問題はさっきのバスでここまで来るのにどれだけ時間がかかったかってことだ。大丈夫。僕の選択は間違ってない。

終点のモーチットまで行き、僕は再び係員に空港までの行き方を尋ねた。

「左に降りていって、
「A1」のバスに乗ればいいよ」
なに!バス!これで交通費を抑えられるぞ!

バス停には何人かの人が待っていた。僕はチェックにチェックを重ねた。本当にここに来るバスで空港までいけるのか?

現在7時35分。

「29番のバスでも空港に行けるわよ」
尋ねたおばちゃんは教えてくれた。

これでバスをゲットできる可能性が上がったぞ!

「だけど、30分に一本ってところね」

ぐっ...


搭乗手続きなんかの時間を考えるといつ来るか分からないバスを待っているのはリスキーだ。

忘れてはならないのは今日が王様の誕生日だってこと。もしかしたらバスは遅れるかもしれない。

「タクシーだと空港までいくらくらいですか?」
「100バーツくらいじゃない?」
「タクシー!!!」

「ちょっと値段の確認してもらってもいいですか?」

僕はおばちゃんにタクシーまでついてきてもらい、値段のチェックをしてもらった。現地の人を通せばボられることもあるまい!

「これはメーターみたいね」

うぬ...どっちの方が安いんだ?
だが、そんなこと考えている余裕はない!僕はタクシーに乗り込んだ。

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快調に飛ばすタクシー。

「空港まで20分ってとこかな」

なんとか間に合いそうだ。

「ハイウェイ通ると60バーツだけど...」
「ハイウェイじゃない方で!」





8時15分。タクシーはドンムアン空港に到着した。

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僕はドライバーにお礼を言い、ちょっと奮発してオレオを買って糖分を摂取した後、手にはプリントアウトした航空券を持ってバックパック預けるカウンターへ向かう。

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この日のために買った30キロ分の受託荷物申告。5000円。そして、Penny Boardやギターをひとつにまとめたフライト使用にカスタマイズした僕のバックパックの重さはー...

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「27.4キロ」

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よしっ!ありがとう!お姉さん!

出発の何時間も前に来て時間をつぶそうとした空港は特に見るべき物はなかった。

水やコーヒーの価格は2倍になり、Wi-Fiが無料で使えるくらい。作業をするのにぴったりな感じはしなかった。時間配分的にはちょうどよかったのかもな。

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搭乗時間になり、僕はエア・アジアの飛行機にのりこんだ。
行き先はインド、コルカタチャンドラボース空港。

3年前に訪れた「始まりの地」へ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。