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「ここは日本じゃない。トルコなんだ」

世界一周374日目(7/7)

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みんな起きてこない。

昨日僕がベッド入ったのは深夜2時。

サジュークもペリンもあとから帰ってきた
バーのマスターのビギンも遅くまでずっと起きてた。

時刻は11時。あ~、どうしよう?


ここはトルコ、イスタンブール。


僕はイズミルで会った
バスカーのサジュークとその元彼女と共に
バーのマスター、ビギンの家に転がり込んだ。

いつもだったら外に出て、
ヒッチハイクして次の目的地を目指すか、
暑い日差しを避けてカフェでコーヒー飲みながら
Wi-Fiにありついてるかだ。

泊まらせてもらっている身なので、
勝手にどこかに行くわけにもいかない。

彼らが起きるのを待とう。

顔を洗い、歯磨きを済ませて暗い部屋で
パソコンを広げて日記を書いた。

光の差し込まない部屋の中では
時間がとまったように感じた。



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サジュークたちが起きて来たのは13時を過ぎたころだった。

完全に昼夜逆転してるなぁ。
ここが日本だったら、
僕は罪悪感に苛まれていることだろう。

『あぁ、僕はなんでったって
午前中を無駄に過ごしてしまったんだろう?
なんて僕はダメなヤツなんだ』と。

軽く自己嫌悪に陥って、
何もする気がなくなってしまう。


だがここはトルコだ。

しかも今はラマザン。

これは言い訳にしか聞こえないかもしれないが、
日中のエネルギー消耗を減らすために
活動時間をずらす人もいるらしい。
僕のまわりにはラマザンやってるヤツはいないけどね。

トルコは日照時間も長いし、
別に活動時間がずれてもいいんじゃないかと
思うようになってきた。


いかに自分が日本的な時間感覚に
捕われているのが分かる。

起きて来たみんなはテキパキと
身支度をするでもなく、のんびりしていた。

サジュークも免許の受け渡しまでは
イスタンブールにいると言っていた。
まぁ、大学生の夏休みみたいなもんか。29歳だけどね。

ビギンもバーの仕事は涼しくなってきた頃から
深夜まで働くわけだし、
これが彼らのライフスタイルなのだ。



そんな中で僕はひとつの悩みに直面している。

黄熱病の予防接種だ。

アフリカや一部の南米諸国を訪れるためには、
予防接種を受けた証明書である
「イエローカード」の提示が義務づけられる。

去年まではイスタンブールで
無料で打てた黄熱病の予防接種。

だが今年からその制度が代わり、
無料で打てなくなってしまったというのだ。

てかそんなの聞いてねえし!

昨日さっと調べた段階では、
Eチケットがないと打ってもらえないだとか、
摂取できなくて諦めたみたいなブログを読んだ。

えっ?おれアフリカ行けないの??!!
どこか他の国で打てるところはないのか???

調べておいたヘルスセンターに電話をかけて
サジュークに訊いてもらう。


「あぁ、はい。いや、僕じゃなくて、
友達です。ジャポンの。はいー。それでは。」

「で、どうだった?」

「明日の14時半に来てくれて。
フォームを打ち込んでいくらかかるか分かるってさ」

「え?予防接種打てるってこと?
Eチケットとか訊いてこなかった?」

「いや。訊かれてないな。
とりあえず明日一緒に行こう」

「て、テシュケレデレム!!!」


こ、これはもしかして!!!希望が見えたぞ!

日本で打てば1万円。
タイで打てば半額の5千円。
その間くらいだったら打とう!




16時を回って
僕たちはビギンの家をあとにした。

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ペリンは美容室に髪を洗いに行き、
僕とサジュークは近くのスーパーで食べ物を買った。

朝食でもランチでも夕食でもない。
お腹が空いたから食べる。決まりはない。

お腹が減った僕は
「フルーツジュースの冷えたのがないなぁ」と
マイペースに食材を選び続けるサジュークに
若干イライラした。

だから別れたのかなぁ?
僕だったらそこらへんの
安いケバブすぐに喰っちゃうよ。

1リラもしないパン、トマトやフルーツ、そしてお菓子。

ゲジ公園へと歩いていき、
木陰を見つけて芝生の上に寝転んだ。


「な?最高だろう?」

「あぁ」

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木陰はひんやりと涼しい。

今いる場所はトルコのデモで有名なゲジ公園だ。

デモ隊と警備隊の衝突をテレビで見たことがある。
それはまるでギャングとの抗争のようにも思えた。
催涙弾だか本物の銃声なんだか、
物騒なサウンドがテレビから聞こえた。

『これでイスタンブールに行けるものだろうか?』
とその時の僕は不安になった。
グルジアで会ったツーリストはデモの様子を見て
イスタンブールに行くのをやめたと言っていた。

物騒に思えたイスタンブール。
そのデモの一番ホットだった場所。
それがどうだろう?
周りの人たちは僕たちと同じように
木陰でのんびりしている。



「おれ、ここだったらキャンプできるな」

「や、仮にもデモがあった場所だからね。
当時はここにテントを張って
座り込みしてた人たちがいたけど、
警察はそのテントに火をつけて燃やしてしまったんだ。
さすがにキャンプはできないだろう。
まぁ誰が寝てたところで
ここの人たちは気にしないと思うけどね」


さっき買った食材を二人で分けあって食べた。

後からペリンも合流してタバコを吹かした。

近くにいたショーツにTシャツ、
ダウンベストの組み合わせのユルめの格好をした
おっちゃんがフレンドリーに絡んで来た。
手にはTuborgビールの500ml缶を持っている。

いいキャラしていたので、iPhoneのカメラを向けると
「写真が嫌いなんだ」と手で制した。


「ここにいるとヒマしないな」

「そうだね。さあ、行こうか」




そのまま僕はWi-Fiに
ありつくために昨日のカフェへ。
ペリンがまたついて来てくれた。

サンダルも修理に出しておく。

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その後は待ち合わせ場所のカフェに行ったり、
ご飯を食べに行ったり、
ちょっとイスティカル通りでバスキングしてみたり。

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バスキングの方は全然だめだった。

ここの通りは僕意外にも沢山のバスカーがいて、
中には5人編成くらいのガチなのもいる。

観光客もそんな風景に慣れ切ってしまていて、
一人でやるようなバスカーもそこまで稼いではいなかった。

僕はミュージシャンじゃない。
こりゃだめだ。

結局トラブゾンやカイセリなんかの大きな街で
バスカーのいない場所が一番稼げたな。

ま、楽しけりゃオーライ♪
音楽やってってサジュークにも会えたことだし、
最高じゃねえか。

そうポジティヴに考えようとしたものの、
こんなに観光地で10ドルも稼げないことに
ちょっと自信喪失した…。



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今日もバーのマスタービギンの家に泊めてもらうことに。

昨日と同じメンバーでイスティカル通りを抜け、
ゲジ公園を横切った。

ゲジ公園でもバスカーが人垣を作っていた。

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「これはアラブの音楽だね」

有名な曲になると人垣から
「ヒョ~!」っと歓声があがる。

近くの人に訊くと、これはシリアの音楽だと言う。

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街ではシリアの紛争から逃れて来た
物乞いたちの姿を多く見かける。

ここでバスキングをしているのは
身なりのしっかりしたバスカーだったが、
隣国のトルコ、イスタンブールという
大きな街で奏でる音楽には
どこか仲間に向けたエールのようなものが
混じっていたんだと思う。

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ビギンの部屋につき、水シャワーで汗を流した。

パタゴニアのハーフパンチに穿き替えて、
椅子に腰をおろす。

ビギンが帰って来ると、部屋は煙がくゆり、
パソコンからトルコの音楽が流れた。


「Let's SMOKE, MAN!」
夜型の二人が酒を片手にタバコに火を付ける。

ビギンが部屋の電気を消し、
YouTubeから流れる音楽が僕の耳にぶっ刺さる。

下戸の僕はすぐに酔っ払ってしまう。

ぼやぼやした頭で目を瞑り、
彼らのルーツの音楽に耳をすませると

それが身近に感じた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。