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「トルコでヒッチハイクをしてみたら想像以上に凄かった話」

世界一周346日目(6/10)

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『どっちの方が面白いか?』そんな問いが頭の中に浮かんだ。

ここから次の目的地、エルズルムまでは直通のバスが出ているが、僕はそれに乗らなかった。

朝6:30にベンチの上からむくりと起きると、さっさと寝袋をたたんでエルズルムへと続く道に向こうからやって来る自動車に向けて親指を立てた。

ヒッチハイクで向かおうと思うのだ。

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昨日エルズルムまでバスで行く場合にどうするかメシ屋のおっちゃんに訊いておいた。エルズルムまで道は続いているが一本道ではない。いくつかの分岐点がある。だが、運良く一発でそこまで走る車に乗せてもらうことはできないだろう。きっと何回もヒッチハイクで乗り継いで行くことになる。

下の写真は僕が使っているマップアプリ「maps.me」の画面だ。このアプリではオフラインでダウンロードした地図を見ることができるのだ。

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トルコで始めての本格的なヒッチハイク。僕はちょっと不安だった。

最近髪をゴムで結ぶようになって、女のコと間違われることが多くなってきたから(ヒゲは剃らないようにした)、もしかしたらもしかするんじゃないか??!!

「まぁ明るい時間帯だったら大丈夫でしょう!」と僕は前向きになって路上に立った。

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7時の道路はほとんど交通量がなかった。

向こうから来る車の半分以上はトラックでスピードを落とさずそのまま走り去って行く。大きな車だと、スタート・ストップにコストがかかるのかなぁ?そんなことを考えた。

近くで僕のことを見ていたおじちゃんは『朝早くから何をやってるんだ?』そんな顔をしていた。20分も経過することには、だんだんと自信がなくなってきた。

「一体誰が「トルコでのヒッチハイクはクソ簡単です!」なんて言ったんだ??!!全然止まらねえじゃねえか…!!!」

ネットの書き込みに対して腹が立てながらもニコニコしながら手を振る。



すれ違いざまにウインカーを点滅させるフォルクス・ワーゲン。

えっ…止まった??!!


「うわぁああ~~~~!!!
ティシュクレアデレム!」

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バックパックとサブバッグを大急ぎで体に身に付け、
今だになんて言うのか分からない
トルコの「ありがとう!」をシャウトして車に駆け寄った。

開始から30分。いい出だしだ。



欲張って二つ先の中継地の名前を挙げたらすんなりと乗せてくれた。

僕を乗せてくれたのはベッチィズさんとイブラエムさんというおじいちゃんの2人組。後部座席にバックパックとギターを乗せ、サブバッグは肌身離さず。これが旅人スタイル。

海沿いのトラブゾンの町並みから景色は
どんどん自然豊かなものへと変わっていった。

車の窓越しに見るトルコの風景。むき出しの岩肌はどこか映画の世界を僕に思い浮かばせた。

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途中、食堂に立ち寄り、僕は朝ご飯まで一緒にさせてもらうことになった。ヒッチハイクをしているのにこんなによくしてくれるなんて…。

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2時間ほどでやって来たのはBayburt(ベイバート)という街。今日の目的地である「エルズルム」までの標識が立っていた。

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近くのレストランでトイレを借りた。

お店のスタッフはニコニコして、僕みたいな薄汚いバックパッカーを煙たがるようなことはしなかった。それがどこか嬉しかった。そしてこういう時に携帯ウォシュレット持っていると本当に助かる。世界一周の旅に持ってきてよかったもののひとつだね。

お腹もスッキリさせた僕は景気付けに高めのアイスを買って次なるヒッチへの願掛けをした。や、たんなる贅沢か笑。


だんだんと分かってきたのヒッチハイクをするポイントというものがあるということだった。今回特に意識したのは車が停まれるスペースがあること。二車線ギリギリの道なんかは絶対に車が止まりっこない。

そしてヒッチハイクできそうな場所とは町のすみっこなのだ。町の終わりで次の町へと続く道。僕はベイバートの端っこまで歩いた。

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時々車が来るとバックパックを背負いながら親指を立てた。

車が停まれそうなポジションまで来ると僕はヒッチハイクを再開した。

ここの町ではそれほど車が速度を出して走っていない。
これならすぐにつかまるかも!


僕の思った通り二台目の車はあっさりとまった。
しかも止まらないと思っていたトラックだ。
さらに言うなら目的地のエルズルムまで!

運転手のおっちゃん、モースンさんは
サングラスをかけてちょっとイカつそうだったが、
ノリのいい人だった。

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これがトルコの音楽なんだぜ!とか
カーステレオからかかるターキッシュ・ミュージックに
僕も縦ノリする。

英語なしだとそこまで会話は続かないのがちょっともったいない気がするが、ジェスチャーも織り交ぜながら「昨日はスメラに行ってきたんだぜ!」とか「最終目的地はネムルトダーなんだ」とかそんな話をする。

モースンさんは途中の町で仕事場に向かった。何かの配送センターみたいだ。僕はそこでもチャイやらクッキーをごちそうになった。

お礼に僕もモースンさんの似顔絵を描いてプレゼントする。この調子だと、僕の名刺の多くはトルコの人たちに渡すことになりそうだな♪。

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目的地のエラズルムに着いたのは14時過ぎだった。
モースンさん僕をランチに誘ってくれた。

エラズルムの配送センターの二階には
仕事仲間たちが仲良くテーブルを囲んで
ご飯を食べている最中だった。

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仕事仲間たちは突然の来訪者をたいそう面白がってくれて
みんなが僕に向かってスマートフォンのカメラを向ける。

ふふふ。エンターテイナーには嬉しい限りのレスポンスだぜ。

ここで食べたスイカがビックリするほどシャキシャキして、
それでいて甘く美味しかった。

世界中でみかけることのできるスイカ。
日本のそれと比べて1.5倍くらい大きさだ。

それでも海外のスイカを食べることはあまりなかった。

『こんなに美味しいんだ!』

海外のスイカを知らない人に
教えてあげたくなるようなスイカだった。

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さて、ここの町も治安がよさそうだ。

町をぶらついて、てきとーにバスキングして、
キャンプすることにしよう。

配送センターを去りかけたその時、
ノリのいい兄さんたちが僕のバックパックを
トラックの荷台にぶちこんだ。


「えっ!!?ちょっと何??!!」

「いいから!いいから!乗れ!」

えっ?何??!!頼んでないのにヒッチハイク?


兄さんたちは一方的にトルコ後で
話かけてくるもんだから意思疎通することが難しかった。


「で、どこまで行くんだ?」

「ネムルトダー(山の名前)の近くの町。
アグリを経由してアフラトまで。
てかビンギョルって危ないの?」


今日の目的地はエルズルムまでの予定だったが、
最終目的地はネムルトダーにある遺跡を観に行くことだ。

情報収集をしていたら
頭だけの石像がいくつもある写真を見つけた。

すぐにマッププリにその名前を打ち込んで、
トルコの東側にあるネムルト山を目指すことにしたのだ。

全然情報収集はしてないけど、
どこに行けば遺跡があるのかは
現地の人に訊けば分かるだろう。


マップアプリでヒッチハイクのルートも確認しておいた。
そこまで向かうには2つのルートがありそうだ。

もともとはビンギョルまで行って
ネムルト山の近くのアフラトという町まで
ヒッチできればいいなと思っていたのだが、

どうやら
ちょっと危ないらしい。

さっきトラックに乗せてもらったモースンさんは
ジェスチャーで銃を構えるジェスチャーをしていた。

え?銃?
…なんかやばそうだな。



「ほらここで降りな」

と降ろされたのは
ビンギョル行きの幹線道路の始まり。

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ええぇぇぇ~~~~~~…???

てか半強制的にトラックに乗せておいて、
会話もトルコ語、てかなんか僕のことを
ネタに楽しんでいた節がある。

「え?お前オンナみたいな髪型してんなー」
みたいにケタケタ笑って。

たぶんめんどくさくなって
ここで降ろすことを決めたのだろう…。
てかビンギョルって危ないんじゃないの???


僕はその場に立ち尽くした。

時刻は3時。
トルコだったらあと5時間太陽が昇っている。

「行くしかねえか…」

や、もちろん危険なマネはしない。
手前のKarliova(カリオバ)からVarto(バート)という村まで
抜け道のように道が続いており、
危ないとされるビンギョルを迂回することができる。
それしかない!

僕はビンギョルへ続く幹線道路をテクテクと歩き、
ヒッチハイクできそうなところで親指を立てた。

時間を無駄に過ごす分けにはいかない!
てか車が少ない!

一人一殺くらいの気合いの入れ様で
僕は親指を立てた。
殺意の波動でどす黒い波動券が撃てそうだ。



ここから怒濤のヒッチハイクが始まる。

まず一台目!無口なおっちゃんだった。

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目的地を告げるとぶっきらぼうに「乗りな」とジェスチャーする。

こっちもニコニコして、
トゥシュクレデリムー!(カタカナだとなんて当てんの?)と
助手席に乗り込んだのだが、
降ろされたのはそこから10分も走らない距離。

マジで回りになんもない。


よしっ!二台目ぇぇええ!!!

気合いの入れ用が違う!
来た車を確実につかまえないとぉっ!
どこだここぉぉっっ!!!!

次に乗せてくれたのはBMWに乗る
ちょいワル風のお父さんとその息子、
ポラッツさんとナマティくんだった。

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途中のチャスという町まで。

この際、ちょっとでも前に進めるだけありがたい!

エナジードリンクを一本頂いた。
マジありがとうございます!

よっしゃ!次!


三台目はマルシェだった。
今は金より時間!

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乗客は僕一人、ドライバーさんは
話し相手が欲しかったのか僕を隣りに座らせて、
トルコ語でお喋りをした。
何言っているのか全然分からなかったけど笑。

これで迂回ルートのカリオバまで行ける!

「ありがとうございます」と降りる際、
小銭入れを出したて、ここまでの値段を訊いたが、
ドライバーさんは「いや、いいよ」と言う風に
お金を受け取ろうとしなかった。ざっす!染みます!

ここから先に行くと、
治安の悪いビンギョルが待ち構えている。
分岐点にはアーミーと装甲車が止まっていた。

笑顔で彼らに「今からバートまで行くんすよぉ♪」と
アピールしておく。僕は部外者だ。
全然怪しいもんじゃないよと。

するとアーミーのお兄さんたちは
バート方面へ行くトラックに何やら話をしている。

大型トラックの助手席側の扉が開いた。

本日最後のヒッチハイク。
通算六台目。

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空はどんより曇り空で、
いつ雨が降り始めてもおかしくない状況だった。

ほんとうに助かった。
てかヒッチハイクに
寛容な国だよ!!!!!



車が走る幹線道路からはずれた道は
舗装されていないデコボコ道だった。

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横には簡素な民家が集まる集落のようなものがいくつもあった。

時々外の人と目が合うと、僕は窓から手を振った。
向こうも笑顔で手を振り返してくれる。

途中でサングラスをして
口元にバンダナを巻いた4人くらいの若者が
道路を封鎖していた。

一人が運転手側をよじ上ってきておっちゃんに何か質問している。

おっちゃんは「トラブゾンから来たんだ」
みたいなことを言って、通してもらえたが、
ビンギョル付近の治安が悪いことは違いない。

な、なんなんだ?何が起こったんだ?

緊迫した3分間を抜けると、
おっちゃんは「ふぅ」っとため息をついてタバコをふかした。


外には相変わらず広大な自然が広がっていた。

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ゲリラ雷雨に降られ、
フロントガラスをワイパーがせわしなく動いた。

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おっちゃんはバトーまでではなく、
僕をその先のMUS(ムシュ)という町まで乗せて行ってくれた。

町の入り口で降ろしてもらった。

僕はおっちゃんに向かってありがとうと手を振った。



あてもなく町の中心地へと歩いていると、
マルシュが僕の横に止まった。町まで1リラ(48yen)。

乗っていたお兄さんは僕がネムルトまで行くと告げると
バスターミナルの場所で僕に
「ここで降りなよ」と教えてくれた。



自分では何もできない。

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こうして沢山の人の助けがあって
僕はトルコを旅することができる。

まぁ、行けるとこまで行ってみよう。

バスターミナルで10リラ(480yen)の
Tatvan(タトバン)行きのバスチケットを購入する。

バスの時間は22:30。
それまでムシュの町を歩いてみよう。

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雨上がりの町をバックパックを背負ったまま歩く。
だんだんとこの重さにも慣れてきたようだ。

いつものようにおっちゃんから
チャイをごちそうになったり、
途中で雨に降られ雨宿りしたり、
近所の子供たちにせがまれてギターを弾いたり、
町でバスキングをしたり。

短い滞在時間だったが、僕のムシュはそんな感じだった。

ちなみにトルコのコーラお姉さんはこんな感じ。

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急にかしこまるガキんちょ。

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雨宿りで一緒になったおばちゃん。スカーフ越しでもいい笑顔!

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スーパーの前で唄って子供たちに取り囲まれた。

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やって来たバスの中で仮眠をとった。
1時間半でタトバンの町に到着した。

辺りはすっかり暗い。

ただ、街灯が等間隔に続いており、
僕の姿をみたお兄さんが「ホテルは大丈夫?
ツーリストインフォメーションだったらあっちだよ」
と教えてくれた。

整備された町だったら治安も大丈夫だろう。

お兄さんに「大丈夫っすー」と言って
寝床を探しに僕は歩き出した。


町のメイン通りからはずれて
僕が入っていってしまったのは住宅地の方だった。

今日はローカルなお祭りなのか
スピーカーがいくつもセットされ爆音で音楽が流れている。

23時前でも子供たちが出歩いており、
バックおパックを背負った僕の姿が珍しいようだった。

そして彼らはしきりに「マネー!マネー!」と
ニタニタしながら金を要求して僕のあとをずっとついて来た。

まるで靴の裏にへばりついたガムのようだ。

最初は苦笑いで「ノー、ノー」と断っていたが、
ずっと僕の跡をバカの一つ覚えみたいに
「マネー!マネー!」とついてくる。

時々、「変なアジア人がいるぜ!ひゃっはっは!」と
笑っているのが分かった。

頼むからほっといておいてくれないかな?


この近辺に寝れそうな場所がないことが分かると
僕は道を引き返した。

ガキどもの何人かはまだ僕のあとについてくる。

それを見たお兄さんの何人かは
「大丈夫か?ホテルか?」と世話まで焼いてくれる。

うん。大丈夫だよ。ありがたいんだけどね。
ちょっと一人にしてくれないかな?


「マネ~!マネ~!ひゃひゃひゃ♪」

プチッ…


「あ?なんだって?もっかい言ってみろ」

「マ~~ネ~~!」

「あぁ、くれてやるよ!マネーだろ!マネー!」

この恥も外聞もないガキどもに
小銭を投げつけてやろうとジーンズのポケットから
コインケースを取り出そうとすると、
側にいたお兄さんがそれをやめさせた。

ったく、なんだコイツらは?観光客なめんじゃねえぞ。

こういう時は状況が改善されることはない。
自分がその場から離れるのが一番だ。


この日の最後に僕が見つけたのはどこかの広いグラウンドだった。

門が開放されており、さすがに敷地内には誰も入って来なかった。

僕はそこでブルーシートで
簡易的テントを設営して横になって息を潜めた。

ヒッチハイクでここまで来れた…遠くまで。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。