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「港町パトナへ in ギリシャ」

世界一周385日目(7/18)

尾てい骨がちょうどベンチの板の間にくるそんなベンチだった。

僕はキャンプで使うマットを持っていない。だから直に固いベンチに横になる。

人間の体は背中から腰、お尻にかけて曲線があるので、真っ平らな場所に寝るのには向かないんじゃないかと思う。そう言えば背骨ってS字になってるんだっけ?



野宿を始めて最初は全然眠れなかった。
片足を折り曲げたり。ちょっと横向きになってみたり。

だけど、今は割とすんなり眠ることができている。腰がバッキバキになるようなこともー、あまりない。たぶん、平面でも寝れる技術を知らないうちに体得したのかもしれない。トルコのパムッカレで買ったタオルも今では枕として大活躍してくれている。よくわからないけど、サブバッグも枕として頭にフィットするようになった。

だんだんとバックパックがキャンプ仕様になってきている。カフェでコンセントを確保しやすいように、電源プラグなどはフロントの部分に。

サイド部分は今はめっきり使わなくなったパックセーフと洗濯の時に使っているScrubba。逆側は洗面用品やらスイムタオル、歯みがきセットが入っている。

今日も元気にキャンプしています♪



さて、これから向かう場所はパトラという港街だ。そこから向かうのはイタリア。そう。僕は船でイタリアに向かおうと考えているのだ。

いや、だってロマンあるじゃないっすか???船っすよ!船!

よくわからない港街で

「ふっ...、とうとうイタリアに来ちまったぜ…」

なんてそんなシチュエーションに酔いたいじゃないですかっ!あー、フェリーっていくらするんだろう?2万とかだったら辞めてアルバニア行こうかな?

前日しっかりパトラへの行き方もしらべておいた。iPhoneのリーディングリストにデータを残しておいているので、オフラインでもチェックできる。今回は街の外まで行くのは簡単そうだ。メトロと電車を乗り継げば簡単に郊外のヒッチハイクできるポイントまで出られるらしい。しかもうまく行けばタダ乗りできるのだとか!バレても罰金が発生しないというおおらかさ!

「じゃあいっちょチャレンジしてみましょうかね」と僕は一本目のメトロを無賃乗車し、二本目の郊外へと向かう電車へ。

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話によると、駅員が切符を確認しに来る駅は決まっているらしい。5両ある車両のうちの2番目か3番目にいればチェックを逃れることができるのだとか。

僕はネットの情報の通りに3両目に乗車した。

ドンピシャのタイミングで駅員らしき人が僕に切符の提示を求めた。


「切符を見せてくれる?」

「あ、僕ここの駅なんで降ります」

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ビビって降りてしまった…。

降りた駅はほんとうに何も無いローカルな場所。海が見え、後ろのハイウェイでは車の走行音が途切れること無く聞こえていた。駅の反対側のホームでは野良犬が掃除のおばちゃんにじゃれついていた。そんなのどかな駅だった。待っていれば次の電車が来るだろうと考えたが、ここが郊外だったと思い出す。次の電車は一体いつ来るんだろう?

素直に3ユーロ払っておけばよかったのかもしれない。たった3ユーロでよかったのだ。400円ちょっと。ヒッチハイクポイントは次の駅だった。だが、歩いていける距離ではない。どうするここでヒッチハイクするか?いやいや、ギリシャがヒッチハイクしにくいって分かってるじゃないか。待つしかない。

駅のホームでやることなしに、ただただぼっと電車を待った。
お金をケチったばっかしに時間を無駄に過ごしてしまう。

ようやく来た電車に乗り込む。

目の前には駅員のおばちゃん。

「切符を見せて」

「あ、すんません。いくらですか?」

「あなた歳は?」

「25歳っす」

「2ユーロ」

僕は素直に2ユーロ払った。

電車にタダ乗りできるという情報は「hitchwiki」によるものだった。きっと欧米人の貧乏バックパッカーがよくやる手口なのだろう。彼らがタダ乗りできるからといってみんなができるとは限らない。僕はこういうズルは向いてないのだ。くっそ...





メガラという駅で降り、ヒッチハイクポイントを目指した。

近くのガソリンスタンドとレストランが目印で、僕はそこで朝食を食べ、Tシャツを洗濯して濡れたままで着た。外は暑いからすぐ乾くだろう。

サイトには「under way」と書かれていて、地下道かなにかだと思ったが、上にも車道が走っている場所のことを言っているらしかった。ハイウェイに入る前の道で、車はそこまで速度を出していない。でも、こんな場所に車が止まってくれるのだろうか?

とりあえず笑顔で親指を立てる。運転席からレスポンスはある。だけど、止まってくれそうにない。

ヒッチハイクをしながら頭の中では葛藤があった。あのサイトの情報を鵜呑みにしていいのだろうか?さっきの電車はもっと遠くまで走った。そこからヒッチハイクすればよかったかも…。

一時時間過ぎた頃、一台の車が止まってくれた。


「どこまで行くの?」

「パトラです」

「コリントスまでだったら行くけど」

「う~、お願いします!」

ここで考えていてもしかたない。ここは少しでも前に進みたい!



乗っていたのはお母さんと二人の娘と一匹の子犬だった。

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アテネ在住で他にも別荘があるらしい。今日はそちらに向かうのだとか。子供たちは夏休みの真っ最中だそうだ。

「宿題はもうやった?早めにやんなきゃダメだよ?」と言ったが、女のコはきょとんとしていた。

そらそうだ。僕も5日前から焦りだすそんな子供だった。

お母さんは若い頃ドイツに留学経験もあったそうで、英語も喋れる方だった。

日本人の女のコとルームシェアをしていたようで、こうしてヒッチハイクしている外国人に理解があるそうだ。



「それでも前回ヒッチハイクしている人を見たのは一年前ね。それに子供がいるじゃない?だから最初はあなたを乗せるかどうか迷ったの」

そうですよねー。知らない外国人を車に乗せるわけだから。乗せる側にもそういう考えもあるのはよく分かる。

「最初あなたのことを女のコだと思ってたの。声を聞いて男なんだって分かったわ」

伸びた髪を頭の後ろで二つに折って結んでいるこの髪型も役に立つのだ。前回かなり嫌な目にあったけどね笑。

「あの、ヒッチハイクできそうな場所って知ってます?」

「大丈夫よ。ここには観光地があって、
車やトラックが近くのレストランに止まるわ。
そこで降ろしてあげる」

「ありがとうございます!」


最後の別れ際に「ここがコリントスで一番おいしいピタの食べられるお店よ」と僕にピタをごちそうしてくれた。

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厚手の皮にトマトやレタス、チキンにフライドポテトが挟まったボリューム満点のピタだった。それにお母さんは僕に1リットルの水まで買ってくれた。

ありがとうございます。

なんだかおもうんですよ。
僕があんな場所でヒッチハイクしていたのは、
あなたに会うためだったんじゃないかって。



次なるヒッチハイクポイントで降ろしてもらい、僕は車を探そうとした

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のだがー…
タイミングが掴みきれない。

車やトラックは数台停まっているのだが、みんな目の前のレストランで食事をとっているらしく、なかなか戻って来ない。

ダメもとでトラックの運転手に声をかけたが、「行かない」と言われてしまった。ここでパトラ行きの車をつかまえることができるのだろうか?
待っていてもしかたない。僕はやってくる車に向かって親指を立て、レストランの駐車場に停まったトラックに声をかける2重の作戦でいくことにした。


そんな簡単に車は停まらない。トルコがいかにヒッチハイクに寛容だったのかが分かる。何度もそのことを考えてしまう。



2時間が経過した。

ずっと日差しの中。さっき僕を乗せてくれたお母さんからもらった水はもうほとんど残っていなかった。『まだこれだけ残っている!』とも思えなかった。

一旦休憩を挟むべく、レストラン内にある売店でクソ高いアイスを買い、近くの売店でスプライトを買った。

気持ちを切り替えよう。焦ってヒッチハイクしたところで何も状況は改善されやしない。きっとそういうのはドライバーさんに伝わっちまうもんなんだ。ヒッチハイクを楽しむくらいの気持ちでいうこう。

僕はヒッチハイクがどこか「釣り」に通ずるようなものがある気がした。

どこが釣れる場所なのかよく考え、魚が食い付くように身ぶり手ぶりでアピールしたり、静かに親指を立てるだけだったり。何より忍耐力が必要なのだ。
次の街に向かう車が止まってくれるチャンスを待つ忍耐力が。

そこには運が必要だし、ドライバーさんとの相性もあるだろう。

アジア人の僕でも乗せてもいいなって思ってくれるドライバーさんが。



場所をずれして親指を立てると、さっきよりも明らかに運転席からレスポンスがくるようになった。頑張れよ!と親指を立ててサインしてくれる人には見送って手を振った。

2台ほど止まって行き先を尋ねてくれた。逆方向だったので、お礼を言ってヒッチハイクを続けた。一応駐車場に新しく止まったトラックにも行き先を尋ねておく。


「あの、パトラまで行きます?」

「行くけど?」

「の、乗せてもらっていいですか?」

「いくらだ?」

「お金ないんで5ユーロでいいですか?」

「パスポート見せてくれ?
お前もしかして問題があるんじゃないのか?」

「いやいや嫌だなぁ~、大丈夫っすよ」

「ちょっと待ってろ。
お前、コーヒーいるか?」

「いや。大丈夫っす。
ノーセンキュー(ほんとは欲しかったけど)」





乗せてくれたのはアルバニア人の
アリスという運ちゃんだった。

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なんだかヨーロッパの人はどんどん日本のそれに近づいてきた気がする。

なんだかプライベートの領域が大きくて、他人にそこまで心を開こうとしない。ガードが固い印象を受ける。そりゃ、変な外国人が親指立ててるんだもん。乗せる人がどんだけ心がデケえんだよって話だ。



アリスと僕を乗せたトラックは海沿いをずっと走った。

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僕が眠気と戦ってウトウトしているのを見るとアリスは「寝てもいいんだぜ?」と言ってくれた。けっこういいヤツだった。頑張って起きてたさ。だって、悪いじゃないか。


降りる時に5ユーロを渡した。

「じゃあな」とアリスは特にお金をそれ以上要求する様なこともなく、ふつうに去っていった。



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来たぞ。パトラだ。

時刻は17:30。もしかしたらフェリーに乗れるかもしれない。

歩いてフェリー乗り場まで向かう。地味に遠い6km。ひたすら一本道を歩いた。


パトラの街を抜け、ヘロヘロになって到着したフェリー乗り場へ到着。窓口を探して出発の時間とチケットの値段を訊いた。

チケットを扱う会社は2つあった。イタリアのバリーという港まで100ドルちょっとが明日の出発。ビリンディシという港があさって出発の約50ドル。どうする?

どっちにしたって、今日出発はできない。考えますと言ってあてもなく街へと戻った。


このままここに滞在しても、お金を使ってしまう。ここで節約できるかがポイントだ。

アパレル店や雑貨屋やレストランが並ぶ通りで僕はギターを構えた。ダメもとで。だが、ここでどういうわけだかギリシャで一番のレスポンスを得ることができた。特に子連れのお父さんお母さんが笑顔で小銭をジャラジャラと入れてくれる。なんだよ!この街は稼げる街だったのか!

これだったら明日もバスキングしてフェリー代を稼いじまおう!


24時間営業のエベレストカフェで僕は明け方5時過ぎまで作業していた。ネットも良好♪

ギリシャ最後の港町、パトラ。

そして次の目的地イタリアはもうすぐそこだ。

現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。