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「ガイドブックを見ないで観光地に行こうとするとこうなる in トルコ」

世界一周347日目 (6/11)

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相変わらずトルコの夜明けは早い。

4時には空が明るくなり始め、
6時頃には完璧に朝がやってくる。

ここはトルコの東にある
TATBAN(タトバン)という町のー…

えっとグラウンドかな?
相変わらずキャンプしてます。


えっ?なんで「キャンプ」かって?

だってその方がオシャレやん!

野宿だと…ほら?
なんか「お金ないです。ハングリーです」
って感じじゃん?

でも「キャンプ」って言うと、
あら不思議。なんかお洒落な感じしませんか?

あ、ただの
浮浪者、不審者っすね。

近所のおじさんに怒られる前にとっととずらかろう。



早々に撤収を済ませた僕はモスクの水場で髪を洗った。

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ここではそういう公共の水場があるのがありがたかった。

朝の水はとても冷たく、ごわごわした髪はなかなか泡立たない。

実際、キャンプ生活するのであれば
長い髪じゃない方がいいに決まってる。

じゃあなんで旅人は髪の長いヤツが多いんだろう?
ふとそんなことを考える。

水分を含んだスイムタオルを4等分に降り、
バックパックの外側に括り付ける。

いくら長くても髪は外にいれば
あっという間に乾くから気にしません!

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ここに来た目的は
ネムルト山というところにある遺跡を見るためだ。

隣り町のAFLAT(アフラト)に行けば
そいつが拝めるらしい。

なんかすっげー昔の
石像の首のパーツだけ残ってるらしいのよ!

『なに?トルコにモアイあんの?』

ってイメージとしてはそんな感じ。


トラブゾンの近くのマチカという町から
ここまでヒッチハイクで来たわけだけど、
「ネムルトに何しに行くんだ?」って質問に対しては、
モアイみたいな顔芸を駆使して

「いやだなぁ!コレ(今顔作ってます!)
観に行くに決まってるじゃないっすか!」

と説明してきた。

その度に「あははは~!あぁアレね~!分かる分かる!」
とすぐに納得してくれた。
トルコ人の間じゃそのくらい有名なのだ。

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僕が昨日バスを降ろされた場所は町の中心地だった。

ヒッチハイクをするためには町はずれまでは
行かなくてならない。
フル装備で汗をかきながらヒッチハイクポイントまで歩いた。

きっとマルシュに乗ればあっという間だし、
時間も体力も使わなくていいんだけど…

どのマルシュに乗っていいか分からないし、
都合よくヒッチハイクポイントまで連れて
行って欲しいとも運転手には伝えずらい。
だから僕には歩くしかないのだ。
トータル30kgの荷物と共に。


誰かが僕の姿を見て言った。

「それ、もはや家だね」と。

まさしくそうだ。

高橋歩が奥さんと一緒に
世界一周していた時の話を思い出す。
彼も自分たちの荷物について同じ表現をしていた。

にしてもいい天気だぜ。

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途中売店で朝食を挟みながら1時間かけて
町はずれまで出た。

さぁ!今日も張り切ってヒッチハイク行くぞぉ~~~!

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15分かけて止まってくれたのは
アムラッという名前のお兄さん。

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途中までだったら乗せてってくれるらしい。
朝からご機嫌なお兄さんだった。

タトバンからアフラへと続く道。

助手席側から大きな湖が見えた。

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朝日が反射して、
思わず日本語で「うわぁ~…」と息をのんだ。
朝の湖はそのくらい美しかった。

「あぁ、ビンギョル・レイクだよ」
とアムラッは教えてくれた。

下調べをろくすっぽしていない僕は
この思わぬ発見を喜ばずにはいられない。

旅ってこういう「思いもよらない」ことの連発だ。

ビンギョル・レイクでアムラッと並んで
写真を撮ったりして、一発目のヒッチハイクは終わった。

よぉしっ!この流れで二台目もいっちゃうぞぉ~!

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朝から交通量はほとんどなかったが、
二台目はすぐに止まってくれた。

今度は大型のトラック。

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トゥシュクレデレム~!と叫びながら
助手席へとよじ上ろうとすると、
運転手のおっちゃんは僕に
「あ~、土足禁止なんだよ」と注意した。

中はトラックの中とは思えないゴージャスな作り。

僕がその内装に驚いていると運転手のジャスティンさんは

「これはおれのうちなんだよ!」

と自慢げに言った。

今の日本車もそうなのだろうか?

ジャズティンさんの乗るベンツの
大型トラックのハンドル部分にはカーステレオのボタンだったり、
空調をいじるボタンだったり、
他のトラックと会話するための
何種類もあるクラクションのボタンなんかがついていた。

「で、アフラに何しに行くんだい?」

「何って「コレ(顔芸)」を観に行くんですよ~!」

「はっはっは~!面白れえなそれ!」

ゴキゲンなドライブは続いた。

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アフラは町とも村とも言えない様な
ちっぽけな場所だった。

えっと、ここからどこに行けば
「アレ」が観れるんだろう?

近くにいた土木作業員のおっちゃんに
旅ノートに描いた石像のスケッチを見せて
「ネムルトダーの石像はどこに行けば観れますか」
と尋ねた。

「はっ?何言ってんだお前?
それネムルトじゃなくて
アディヤマンだぞ」

はっ???!!!

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おっちゃんは持っていたスマートフォンで
Google検索をかけ、僕がスケッチしたのと
同じ画像を見せてくれた。

「ほら!アディヤマンって書いてあるだろう」

「えっ???!!
だだってネムルト山ってここでしょ?」

「ああネムルト山は確かにここだ。
だが、ここにはその石像はない!」

ど、どういうことだ??
意味が分からない。

僕は検索して出て来た山の名前を
マップアプリに打ち込んでここまで来たんだ。
それにこのおっちゃんもここがネムルト山だって言っている。

同じ名前の山がふたつあるのか??!!


僕が理解したことは
ここには目当ての遺跡はないということだった。

アホやん…。

まぁ、ここまでヒッチハイクで来たのは
すげーいい体験だったけどね。


そんなアホな僕を慰めてくれるかのように
ここには別の遺跡があるようだった。大昔の墓地。

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入り口でとりあえず350mlのジュースを飲んで
気持ちを切り替えた。

敷地内には綺麗に整備された野原に、
ポコポコと文字が刻まれた墓石がいくつも立っていた。

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僕は気の向くままに敷地内をブラブラ歩き、
味のある墓石をiPhoneで写真を撮った。

15分くらい観ると、同じ様な墓石を十分に感じてしまい、
近くの美術館でトイレを済ませ、
年配のフランス人バイカーのおじいちゃんたちに向けて
ギターを披露したりした。



さて、そろそろ行くか。

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とりあえずさっきまでいたタトバンまで戻ることにした。
そこから朝のヒッチハイクポイントからムシュまで戻った。

一人は無口なおっちゃん、
もう一人はクルド人の学校の先生。
最後はカーペットのセールスマンの方だった。


カーペットのセールスマンの方は
フサメッデインさんという、かっちょいい名前の持ち主だった。

BMWには自動操縦機能がついていて、
指を軽くそえるだけで車線をスマートに
時速100kmを保ったまま走った。

この先のルートについて訊かれた。

僕がアディヤマンを目指すと言うと、
昨日と同じように「ビンギョルはプロブレムだ」と
僕に教えてくれた。
どうやらまた迂回しなくてはいけないらしい。

またフサメッディンさんはアディヤマンまでの道のりで
オススメの場所をいくつか教えてくれた。

ディヤルバクルとマルディン、ウーファという街は
是非行くべきだよと。

「ムシュからバスか何かで行けないんですかね?」

「行くとしたら。ビトリスだね」

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「ビトリス…、
って後ろにある町っすよねー…」

今進んでいる方角と逆方向。

ヒッチハイクでムシュまで来たのに
また戻んなくちゃ行けないってこと???
もー嫌だぁああああ!!!!
心が折れるゥゥゥ~~~!!!

「うん。じゃあマルディンについたら
電話ちょうーだいね」

と言ってフサメッディンさんは
爽やかに去って行った。
僕は再びムシュの町で立ち尽くす。

先へ進むためにはまた戻らなくちゃいけないのか….???
そんなのってあり?
てかビンギョルで何が起こってるんだ???

みんな「危ない。プロブレムだ」って言って
銃を撃つポーズをする。それってヤバくねえか?


失意に沈んだ僕は

とりあえずバスターミナルで
ビンギョルを抜けて次の町に進めないか訊いておいた。

「えっと~、
バットマン(ほんとうにそういう町があるのだ)まで
行けます?」

「バットマンはないよ。
行くならディヤルバクル」

えっ!!???あんの???



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ディヤルバクルまで25リラ(1202yen)。
1リラコインで支払いを済ませる。

30分後にバスは出発した。

マップアプリで確認すると自分の現在地を示した矢印は
幹線道路を抜けて細い道へと入っていった。

そうかビンギョルがゴタゴタしていることは
さすがにバス会社も分かってるよね!
なにもその道だけじゃないもんね!やるじゃんバス会社!

安心した僕はイヤホンを耳にぶっこんで眠りに落ちた。



2時間ほどしてバスは来た道を引き返した。

乗っていた人は「道がストップされている」と言っている。

は?どゆこと?

すぐ近くのレストランで待機するバス。
工事中とかってこと?それとも例のゴタゴタなのか?

僕はギターを弾いて時間をつぶした。

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最近バックパックにくくることを止めた。

これと言って理由はないんだけど、
いっつも手に提げて持ち歩いている。
バスに乗り込むときも一緒だ。
まるで侍の刀のように肌身離さず。

こういう空いた時間に弾けるのもいい。

バスはなかなか出発しなかった。
一杯チャイが振る舞われた。

僕は小腹を満たすためにレストランに入り、適当に注文した。

スタッフたちはヒマなのか、4リラを受け取って
適当なサラダしか僕に出さなかった。

メニューはどれも6リラ以上でだったのだが、
スタッフが4リラでもいいと言うもんだから注文したのに…。

ちくしょうバカにしやがって。
やれやれだぜ。最終的にはちゃんと
ミートパイを出してくれたけどね。


「それ、なんだ?」

「ん?ああこれ?ギターだよ」

「何??!!ギターだと!弾いてくれ!」

「(ふっ…)仕方ないなぁ」


レストランで知ってそうな
Stand by meとLet It Beを披露する
(てかメジャーな曲はこれしか知らない)。

お客さんのいないレストランに声がいい感じでエコーした。

途端にフレンドリーになるスタッフたち。

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話によると彼らはトルコ人ではなくクルド人だという。

両手でピースサインを作り、
「独立万歳!」みたいなことを言っている。

ムシュまでヒッチハイクさせてくれた教師の人も自分を
「ターキッシュ」ではなく「クルディッシュ」と名乗っていた。

トルコ国内にいながら、自分たちがクルド人であるという
アイデンティティを持っている。

彼らはどういう気持ちでトルコに住んでいるのだろう?

日本にも北海道のアイヌや沖縄の人たちが
似た様な状況なのかもしれない。
「国」というひとつの括りを作るために
無理矢理従属を強いられた人たち。

彼らもまた、トルコという国にいながら、
トルコ人ではないのだ。

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2時間くらいして再びバスは動き出した。

今までの遅れを取り戻すようにバスは道を駆け抜ける。

だが、速度を落とした。

昨日もみかけたサングラスに
口元をバンダナで覆った若者が車をチェックしている。

僕と一緒のバスに乗っていた他の乗客たちは
クルド人の独立に賛成の意思を示すように
ピース・サインを作り彼らに見せた。

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ディヤルバクルに到着したのは20時過ぎだった。

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いつもの様にバスには僕一人だけ。
ここがどこなのか分からない。

目の前にショッピングモールを見つけたので、
Wi-Fiがありはしないかととりあえず中へ。

だが、どのWi-Fiもパスワードがかかっており、
入ったカフェでも使えないと言われてしまったた。

電源が確保できる席でパソコンを広げて日記を書いた。

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「Where are you from?」

カフェのスタッフたちが突然の来訪者に興味津々だ。

「それ、何?」

「あ、これ?ギターだよ」

「ちょ!弾いて弾いて!」

「(ふっ)仕方ないなぁ〜...」


なんかトルコのみんなって
ギターに対する食い付きいいなぁ~。

閉店前の静かなカフェで。僕は静かに唄った。

「え!ちょ!もっと唄ってよ!テラス行きましょ!」

と僕のサブバッグを持ってテラスへと案内するスタッフたち。

数曲唄うと、リーダー的な女のコが
僕にチャイやらケーキやらを差し入れてくれた。お、おお!

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「で、今日はどこに泊まるの?」

「う~んと…公園?」

「え?何??!!公園に泊まるの?」

マップアプリを見せて今夜の寝床になりそうな公園を指す。

友達に電話をかけ始めるスタッフたち。

英語の喋れる友達と通訳みたいなことをして
スタッフの女のコたちとやり取りをした。

これはもしかして…
ホームステイってやつか?!


一通り電話のやり取りが終わって彼女たちはこう言った。

「じゃあ気をつけてね~!」

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ってまたかよ!
は、はははは。いいもん!いいもんよ!
僕には寝袋があるもんね!



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バックパックを背負って僕は町を歩き出した。
公園まではけっこうな距離だった。

治安の面では申し分ない。
女のコも夜遅く歩いている様な町で、電灯も多い。


そしてメジャーな公園では人が多かった。

12時前だというのに、
どこかしらのベンチには誰かが座ってくっちゃべっている。
こんなんで寝れたもんじゃねえよ…。

静かなところを求めてさまよったが、
いい寝床は見つけられず。仕方なくベンチに横になった。

同じ敷地内にもおっちゃんが寝ていたからである。
まぁ、大丈夫っしょと。


風がどんどん冷たくなってきた。

サブバッグからアウターを取り出して着て、
寝袋を布団の様にかけた。

ウトウトしてはベンチの固さに何度も寝返りを打った。

明るい町の上には一等星の輝きくらいしか確認できない。
アザーンがそんな夜の中、
スピーカーから浪々と朗々と響き渡った。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。