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「ツイてないヤツ。ニクめないヤツ」

世界一周118日目(10/24)

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ルアンパバーンのバスターミナルに到着すると、ビエンチャンからバンビエンへ行く際のバスに一緒に乗り合わせたシンガポール人の男のコの姿があった。

前回はマレーシア人の女のコをはべらせていたのに、今回は欧米人(どこの国かは知らないよ)の女のコをはべらせている。やり手なのだろうか?僕も女のコといちゃいちゃしたい。そんな彼に対する僕の印象は決していいものではなかった。彼らシンガポール人はけっこう癖のある英語を話すくせに、僕が何か話す度に「えっ?」といちいち聞き返してくるのだ。僕の発音が悪いのだろうか?まあそれはいいとして、その「えっ?」(っていうよりかはむしろ「はっ?」に近い)リアクションが僕をイラッとさせた。

彼の中指を見ると、ギブスで固定してあった。どうしたのかと訊くと(もちろん彼は「えっ?」って言ってきた)ツアーの滑車下りで骨折してしまったようだ。内心僕は『ざまぁ…』と思ったのだが、彼は実に前向きだった。「いやぁ、指で良かったよ!だって足だったら旅できないもんね!実にラッキーだよ!」

そのアメリカンなユニークさが女のコといちゃいちゃできる秘訣なのかもしれないな。僕も見習おう。彼らの邪魔をしては悪いので、僕は日本人的な心配りを見せ、早々にバスに乗り込んだ。

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目指すはLuang Namtha(ルアンナムサ)という町だ。

マップアプリで確認したらいくつかゲストハウスを見つける事ができた。もしかしら観光地化されているのかもしれないが、安宿もきっとあるだろう。

一旦バスの外に出て歯を磨いていると、例の彼がやって来た。
「やぁ!奇遇だね!僕も同じバスなんだ」とニコニコしながら言う。あちゃ~…コイツと一緒かよ。できるだけ関わり合いになるのは避けよう。
彼は自信があるヤツ特有の喋り方をした。外国人ってどうしてこんなに自己肯定感が高いんだろう?

自分の席に座り、バスがいよいよ動き出すと、僕はiPodを取り出す。このiPodには僕が高校から、浪人時代、大学生の時に聴いた音楽たちが詰まっている。その多くがちょっと昔のロックとジャズだ。その時に使っていたパソコンにこれらの音楽が入っている。同期するのがめんどくさいのでそのままにしてあるのだ。

流れて行く窓の風景を見ながら久しぶりに聴きたくなった銀杏ボーイズの青春ソングを聴いているうちに、歌詞に登場する「僕」は報われない恋を遂げているんだなぁと思うとちょっと切ない気持ちになった。どんなに人を好きになっても報われないことってある。そう。韓国ドラマみたいに。



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日はあっという間に沈み、辺りは街頭ひとつない道に変わった。

辺りは真っ暗だ。頼りはヘッドライトと民家の明かり。よくこれで事故を起こさないもんだ。これは道からはずれて落ちたらまず生きて帰れないだろうな。でも大丈夫。僕、運いいからー….

「パンッ!」

突然何かの破裂音が聞こえた。ちょっと焦げ臭い。これってもしかして襲撃された!!?場所によっては山賊出るらしいってのはほんとうだったのか!!?えっ!?ちょっと待って!

銃を突きつけられた時、どんなリアクションとっていいのか分からないよ!!!「清水アウト~(笑)」って年末にやる音楽番組みたいに撃たれちゃったらシャレにならない。お、怯えたフリ!こ、声を裏返させるのなんてどうだろうか?あーっ...サブバッグのMac盗られたらけっこうショックだなぁ…まあ死にゃしないだろう…。人間意外と冷静だ。

破裂音を耳にした時、そりゃもちろん「ビクっ!」とした。けれど、頭の片隅では「タイヤのパンクかなにか」だと可能性を絞り込んでいた。

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他の乗客と一緒に外に出てみると後輪のタイヤがパンクしていた。

まぁ、ラオスのみなさん誰一人としてパニックになってる人いなかったしね。冷静でいられたのはそれもあるかな。だが、ここに犠牲者がいた。

シンガポールの彼だ笑。

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ツイてないヤツってほんとツイてないんだよね~。おっと失礼!パンクしたタイヤの真上に座席があったらしく、その破裂の衝撃で足を痛めたらしい。幸い、大ケガや火傷を負ったというわけではなかったが、まさかピンポイントの位置で座っているだなんて…タイヤの真上の座席は衝撃で傾き、座れなくなっていた。

僕はけっこう「運」ってヤツを信じる。「勝負運」や「恋愛運」だとかその色々種類もあるけど、僕は「人生トータルの運」がいい(っていうかそう思うようにしている)特に旅に出てからは顕著だ。人生に良い影響を与えてくれる素晴らしい人たちに出会うことができていることなんか特にそう思う。「ツイてるヤツ」「ツイていないヤツ」という場合もあれば、良くないことが起きてしまうサイクルに入り込んでしまう場合もある。

多分彼はそうだったんじゃないか。「ひょっとしたら君は運がよかったのかもよ?だってもしかしたら大きな事故で死んでたかもしれないんだから」と彼にポジティヴな言葉を投げかけたが、この時ばかりは彼の顔は引きつっていた。

運転手と助手は応急処置を済ませ、バスは「ペタコッ!ペタコッ!」とひと回転ごとにまぬけな音を立ててゆっくりと走り出した。

タイヤを交換できる中継地までバスが着くと、僕らはバスを降り、お互いの旅のルートを話し合った。
彼は僕の2コ下であることが分かった。大学を卒業し、就職前に1ヶ月の旅をしているそうだ。どういうわけだか、この時は「えっ?」とは訊き返されなかった。

変な話さ。アクシデントが僕たちの距離を縮めたなんてさ。
グッド・ラック。良い旅を。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。