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「生きていればどうにかなる。なんとかなる」

世界一周65日目(9/1)

ベトナムビーチの街「ニャチャン」へとやってきた。

僕がここに来たのはハノイで会った日本人が「よかったですよ〜」と言っていたからだ。これと言って理由はない。ガイドブックなんて読まずに「なんとかなるだろう」面白そうな方へ旅をしてみようと思ったのだ。

前日の夜から乗っていたバスを降りた。周辺で宿を探すとすぐに安宿が見つかった。一泊5ドルのドミトリーだ。ここでも日中に睡眠をとるパリピノ欧米人たちがベッドの何割かを占めていた。

部屋に荷物を置き、シャワーを浴びると町歩きを始めた。

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「ベトナムにビーチリゾートがあるなんて!一体どんなところなんだろう?」

明け方、バスの窓から見えた海には沢山の人が朝焼けの中で気持ち良さそうに泳いでいた。ベトナム人にも欧米人にも人気のビーチ。

僕が海に出かけた9時頃はそれらの人はもう既に帰った後だったのだろうか?ビーチは人で混み合うといった感じではなく、ゆったりとした空気が流れていた。

気になったのがお父さんが子供と一緒に砂のオブジェを作っている様子だ。海水を含んだ砂をポタポタと砂の山にふりかけるとガウディのサグラダファミリアみたいな形を作る。

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僕は海には入らず、街の外へとPennyで走っていった。

途中、ベトナム最安値のコーヒー屋さんに入る。お店を構えている所のコーヒーはちょっと高いのだが、地元の人が飲みに来る様な露店のコーヒーは安いのだ。一杯、5,000ドン(23yen)。ミルクは入っていなかったけど、その代わりに砂糖がいっぱい入っており、沢山入れた氷が夏の暑さで溶け出すと濃いめのコーヒーが丁度良い味になる。

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僕はタバコをゆっくり吸いながら通りの軒下で新聞をよむおっちゃんと足下で気持ち良さそうに寝ている犬を見てこの街の持つ別の一面を見た。にぎやかで、忙しく時間のながれる観光地化した街と地元の人たち暮らすスローライフな街。他の旅人はどのように街を歩いているのだろうか?バイクを借りたり、自転車を借りたり、バイタクをチャーターする人もいるんだろう。中にはぶっ通しで歩き続ける人もいる。

訪れた国の道路の状態によるのだが、スケボーに乗ることで移動はずっと楽になった。重たいバックパックを背負っては上手く進むことはできないのだが、一眼レフとお財布、いつも巻いているマネーベルト、ポケットのiPhoneで軽装になった僕はニャチャンの街を遠くまで行くことができた。

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地図アプリを見ながらニャチャンの村の中へ行ってみることにした。ここにもまたより身近なベトナムを見ることができた。

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途中、立ち寄ったお店でコーラを飲んだ。今が夏ということもあるが、東南アジアの夏は日本以上にじとじと湿気を含み、日差しも強いせいですぐに喉が乾くのだ。

『なんで、海外で飲むコーラはこんなに美味しいんだろう?』
と誰かが言ってた。わかるよ。なんだか美味しいんだよね。


日差しを避けて店内で椅子に座りながらコーラを飲んでいると中から女のコが出てきた。僕が写真を撮ると「もっと撮っていいわよ!」とでも言わんばかりにばっちしおめかしして僕の前でポーズを決めてくれた。ありがたい笑。

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撮った写真を毎回そのコに見せてお互い笑い合った後、僕は町歩きを再開した。


遠くまで行き過ぎて宿に戻る頃にはPenny Boardで上手くプッシュできないようになっていた。バランスを崩してPennyだけ車道に走り出す。クラクションをならす車。僕はあわてて追いかけてスケボーを回収する。自分のコンディションをしっかりと把握した上でクルージングもやらなくちゃダメだな。


フォーとバケットでお腹を膨らませた後、僕は宿からギターを持ってきて海へと向かった。

『もしかしたら稼げるんじゃないか?』

欧米人率の高いこの街で歌えばちょっとはお金が入るんじゃないかそう思ったらだ。適当な階段を見つけて荷物を置くと藍色に染まっていく海に向けて何曲か歌った。すぐ後ろでは地元の学生たちが上半身裸でサッカーをしていた。反対側では酒盛りが始まった。いつものように通りではバイクがひっきりなしに横行し走行音で音がよく分からない。ていうか海って音が響かない。

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場所が悪かったのだろうか?人通りもまばらで誰も僕なんかに気をとめない。自己満足的に路上ライブを切り上げ僕はギターをケースにしまった。

僕のちょっと後ろで聴いてくれていたお姉さんが僕に話かけてきてくれた。視覚の外だったのでずっと聴いてくれていた人がいたなんて気づかなかった。

「こんな場所でストリートライブやる人なんて初めて見たわ」
「あっ!そうなの?」
「誰もあなたのことを気にかけないのに良く歌えるわね。勇気があるわ!」
「いや、そんなことないっすよ」

そんなお姉さんと30分くらいお喋りした後で僕はバケット屋さんに立ち寄った。


「日本人ですか?」

お店の前のちっちゃい椅子にバケット片手に膝の上に数学の教科書を広げている女のコが僕に話しかけてきた。発音は日本人のそれと変わらない。

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彼女の名前はタムニャンと言った。13歳には見えないスラッとした女のコだった。日本に5年間住んでいて去年ベトナムに戻ってきたそうだ。ベトナムに帰ってきた後も日本語の勉強を続けている。学校の勉強以外に日本語の資格取得に向けて勉強に励むタムニャンはこう言った。

「もう、全然遊ぶ時間がないんですよ!」
「遊ぶ時間がない」 なんて今の日本にそんな子供がいるだろうか?有名私大をお受験の子供は勉強漬けの毎日を送っているかもしれない。だけど、タムニャンからはどこかハングリー精神を感じた。


「日本にいる時、よくお母さんから言われたんですよ。
『勉強しないと私みたいになるよ!』って。
お金がないと生きていけませんからね。
私、将来、同時通訳になりたいんですよ!」


13歳とは思えない。既に将来の夢が決まっていてそれに向かって進んでいくタムニャン。それでいて彼女にはポジティヴなところがあった。



「生きていればまあ、どうにかなりますよ。
生きていればなんとかなる」



頑張れよタムニャン。チャンスを最大限に活かそうぜ。

おれもやるだけやってみるさ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。