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「ウィークエンドマーケット」
世界一周155日目(11/30)
「ほら、ご覧の通りデモだからバスが来るかどうかは分からないわよ」
安宿の集まるカオサンロードからすぐ外の大通りに出るとそこはイベントのような盛り上がりを見せていた。
デモの影響は交通手段にも影響していた。ラチャダムヌン通りはデモとは言いがたいお祭り騒ぎみたいになっているし、首相官邸前や政府主要機関ではデモ隊と機動隊の攻防が繰り広げられているようだ。
人から話を聞いたり、自分でデモの発端を調べて行くうちにこのデモは都市部の人間の利権問題が絡んでように思える。
渦中の人物は東部の貧困層に力を注ぐタクシン元首相。現在の首相、インラックさんはタクシンさんの妹。数年前の外遊中にクーデターで政権を奪われ、かつ刑事責任を着せられてしまったためタイに戻って来ることができなくなったタクシン元首相を帰って来れるようにしようとする恩赦法案が議会に出たことがこのデモのきっかけだ。
まぁ、「王様ラブ」なタイでも今は見事にまっぷたつに割れてしまっている。詳しいことはめんどくさくて書けないけどタイのデモに興味のある方は調べてみてください。2010年にも大規模でもが起こっているからけっこうホットな話題なんだね。
デモメシ(デモで無料でもらえるご飯)を朝食がわりにして僕は一日を始めることにした。
向かう先は僕はチャトチャック・ウィークエンドマーケットだ。
チェンマイにあるお洒落な服屋さん「nanairo」の店長、SHINさんの仲間が手がけるお店がチャトチャックにあると訊いて是非ともそのお店を訪れてみたいと思ったのだ。
「船とMBTで行けば確実に着けるわよ」
ツーリスト・インフォメーションのおねえさんは僕にそう教えてくれた。
地図に降りる場所と乗り換える場所に印をつけてもらって、僕は船に乗ってみることにした。
観光客用だけではなく地元の人の足代わりにもなる船の運賃は10バーツ(32yen)。意外と安い。※ちなみに毎回レートアプリで日本円に換算しております。デモの影響で円高になったのかな?
乗っているとちょっとしたアトラクション気分を味わうことができる。
スカイラインに乗り換えるためローカルな船着き場で降りて昨日バスキングが全然うまくできなかったMBKを横目にチャトチャックのあるモーチット駅までの切符を42バーツ(134yen)で購入。
日本円に換算すると確かに安いんだけど、バスだったら8バーツそこらで行けるんだから高いと感じずにはいられない。貧乏バックパッカーの性です。
こうして知らない土地で交通手段にガンガン乗って行くとちょっとずつ慣れいく。迷ったって誰かに訊いて戻ってくれば良いだけの話。気軽に乗ってこう。
そんなわけで辿り着いたチャトチャック。
スカイラインの線路の上からはその規模の大きさが見て知ることができたし、改札を抜けるとマーケットを訪れる人々でごったがえしていた。
最近人ごみにイライラすることが多くなったんだけど、どうしてだろう?停煙してるからかなぁ?
さてと、ここに来たのは日本人の方が経営されるアパレル店「TRAPS/WANA」があるからだ。
ネットで調べたけど、様々な情報誌やサイトから取材を受けているそうだ。ひとつのラインで大量生産するのではなく店長のTeppeiさんが自分の足で素材や工場を見つけて発注をかけるためお店に出ている商品のほとんどが限定品。ワンシーズンずれると同じ服は手に入らない。なんだか書いていてワクワクするようなお店だ。
いくつもあるセクションから「26」を探し出し、メインストリート沿いに
TRAPS/WANAを見つけ出した。
チャトチャックにはオシャレなお店がたくさんあるが、このお店はひと味違う雰囲気をかもしだしている。
入り口には存在感のあるドリームキャッチャーがかかり、(オーダーメイドしたそうだ)店内に入るとお香の香りがした。
決して広くはないけど商品のちりばめ方は計算され、いるだけで楽しくなる様なお店だ。この日のためにチェンマイで買ったTRAPS/WANAの服を着てきたんだ。
こういう空間作りって日本人はうまいよなぁ...
初対面だっていうのに店長のTeppeiさんは明るく僕を迎えてくれた。
「うちのお店、チェンマイと比べて勢いあるでしょ?」
忙しそうに服をたたみながらTeppeiさんは言う。
お店にはタイ人のスタッフ一人と日本人のスタッフ一人の三人体勢で回しており、頻繁にお店にやってくるお客さんに英語やタイ語で接客をしているのを見るとこのお店がノっていることが分かった。勢いがあるっていいね!
僕はシンプルなワントーンのTシャツが欲しかったのだが、今シーズンはインパクトのある柄物が多い。「ちょっとビビッとくる物がないっすねぇ...すんません...」と僕が言うとTeppeiさんは「そういう時はスルーするのがいいよ」と言ってくれた。ただ遊びに行っただけになってしまったがこういうフレンドリーさで迎えてもらえるってすごい嬉しい。
ばったり会ったのはさっきのTRAPS/WANAでも見かけた小柄な日本人の男性だった。岩手で雑貨屋さんを営んでいるらしく年に2回、こうして買い付けにくるそうだ。
会った場所はカトラリーを扱うお店。名前は尋ねなかったが物腰の柔らかい丁寧な方だった。
「やっぱり仕入れるときは沢山購入した方が安くしてくれますよね?」旅する雑貨屋の僕は職業病的に訊く。
「う〜ん、でも10本単位で買ってそれでも卸値でしか売ってくれないね。扱っている物も良い物だからね」
なるほど。僕のようななんちゃって雑貨屋さんごっこをしている旅人には安く卸値で雑貨を手に入れることは難しいのかもしれない。
安いカトラリーもあるのだが、僕の心を奪ったのはチーク素材でできたものだった。
「なんですか?『チーク』って?」
「チークは船やタイの住居に使われたりする木材でけっこう品質が良いんだよ」と岩手の雑貨屋さんは教えてくれた。
僕は3セットずつくらいでカトラリーを選んでいった。
お会計の前に「ディスカウント(できる)?」と尋ねるとお店のボス的おばちゃんは「ダメダメ!うちは値引きなんてしないよ!」とはなっから値下げしてくれる子はなかった。岩手の雑貨屋さんには卸値で売ってたのになぁ。
「そんな!僕だってけっこう買ってるじゃないですか!ねえ、そんなこと言わずにディスカウントしてよ、ね?」と僕は交渉してみた。おばちゃんはそんな僕をシカトして僕の選んだカトラリーをボンスカボンスカビニール袋に詰めていった。まだ値段も聞いてないのに。
提示された値段は予算オーバー。値切れた金額はわずか30円ちょっと。僕が納得のいかない表情を見せるとおばちゃんは露骨に態度に出してカトラリーをお盆にぶちまけた後、お店の女のコに「これ、戻しときな!」と言った。
やれやれ。そんな物を見せられてしまって嫌な気分にさせられた僕は僕は何も言わずにお店を後にした。もっと「言い方」ってものがあるだろうに。
「これは固定価格なのよ。値引きはできないの。10個単位で買うんだったら卸値で売ることもできるわ」みたいに言ってくれれば僕も納得してお金を払っただろう。
「雑貨が多過ぎて逆に買えない病」にかかってしまった僕が仕入れたのは象の置物だった。
お店のおばちゃんは明るく「すごいネー!カワイイネー!」と知っている日本語振る動員でフレンドリーに接客してくれた。もちろん値段を下げて売ってくれたし、気持ちよく買い物ができた。
それだよ。それが大事だよね。
「6時になれば無敵!」らしい。
チャトチャックに来た時「稼げないわけがない!」と思った。これだけ人でにぎわってるんだからバスキングにはもってこいじゃないか!だが、チャトチャックマーケット内は警備員が絶えず見回りをしているため18時以降にならないと路上演奏は止めれてしまうらしい。そんな情報をTeppeiさんから入手し僕は時間になってチャトチャックの路上に立った。
目の前を絶えず人が行き来している。
歌っても、その多さに音が負けてしまい、イマイチ自分の存在感をアピールすることができなかった。
終いには目の前の工事現場から「ギュィィイイン!!!」と金属音が聞こえてきて場所を変えて再開したら一弦が切れた。エンドピンもどこかにいってしまった。
僕はまたしても敗北感を味わい、交通費の足しにもならないレスポンスと一緒にギターケースを閉じた。3番バスに乗り宿のあるカオサンロードへ帰って40バーツのエンドピンを買った。
デモメシでお腹を満たした僕は車の通らない歩行者だけの道を見つけた。演説もそこまでうるさくない。
ギターの音が暗闇に滲んで行く。楽しさを思い出すかのように歌うと少しずつレスポンスが入った。バイタクのうんちゃんたちは「こっちで歌いなよ」とセブンイレブン前で歌わせてくれた。
へへへ。やっぱり歌うことは楽しいや♪
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。