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「中国からベトナムへ歩いて国境を越える」
世界一周57日目(8/24)
朝6時にiPhoneのアラームで僕は目を覚ました。外はまだ暗い。
もう少し寝てたかったけど今日は国境の町河口(hekou)へと向かう。バスは7時30分に出る。前に進まなきゃ。棚田も見れたことだし、次の町へ行こう。
パッキングを済ませるとお姉さんが部屋の鍵を取りに来た。僕は一人で使わせてもらったドミトリーの鍵をお姉さんに返してバスターミナルに向かった。
昨日買えなかったバスのチケットはあっさり買うことができた。バスが出発した段階で乗客は僕を含めたったの3人しかいなかった。
「乗客が十分にいないから今日はチケットが買えないのよ」と言っていた割にはけっこうゆるいな。まぁ、当日じゃないと販売していないのかもしれない。
バスは山の上の新街(xinjie)から麓の元陽へと下って行った。
元陽の街でバスは一旦停まり新たな乗客を乗せた。
元陽の町は中途半端な都市化が進み空気が汚かった。バスやタクシーはひっきりなしに道を走り、クラクションの音はうるさい。店先のおっちゃんやおばちゃんは暇そうにしている。
3歳くらいの小さい子供まで平気でバスにごみを捨てるのを見てやっぱりここは中国なんだなと思った。こういう風にして風習が根付いてしまうんだろうな。
コーヒー色をした川を横目にバスはぐんぐんスピードを上げていく。
僕は車内販売から買った5角(1元の半分)のアイスを食べながら外の景色を眺めていた。
次の町は一体 どんなところなんだろう?
宿の予約をしないまま入る国境の町に期待と不安を胸にバスは山を下っていった。
元陽の自然を抜けると窓から見える風景はバナナの木が生い茂る風景へと変わった。出店でもバナナの販売が目につく。
僕はベトナムに近づいているのを感じた。
辿り着いた河口の町。中国最後の町だ。
前回の入国から9日間が経過し、あと残り6日中国に滞在できる。さてどうしようか?
バスターミナルで声をかけて来たタクシーのおっちゃんに「ベトナムの国境までいくらで行ける?」と尋ねると10元で行けることがわかった。案外近いのかもしれない。
まだ時間もあるし、このままベトナムに突入するのもありだ。
僕の頭にそんな考えが浮かんだ。
タクシーを走らせる事15分。ベトナムとの国境で僕は降ろされた。
歩いて越える国境。なんかいい感じだ。
イミグレーションでパスポートと入国カードを提出する。入国カードと言っても、「国籍」や日本での「住所」、「どこの町から来たのか?」だと簡単な質問事項を記入するだけのものだ。
特に何も訊かれることもなく「バンッ」と入国スタンプが押される。
ついにベトナムに入国だ。
世界一周を始める旅人たちが必ず通る東南アジア。僕はロシア、モンゴル、中国とまわってようやくこの土地へ足を踏み入れたのだ。
うざったい客引きをスルリとかわす。「写真だけはやめて!」って行ってくるヤツは間違いなくボッてくるヤツだろう笑。
僕は隣でワーワー言ってくる客引きをあしらいながら両替を済ませた。レートはよくわからない。イミグレーションで両替するなら安心できだろう。
手持ちの1300元を両替すると80万ドンで返ってきた。『えっ!80万ももらえんの?』と、ちょっとお得な気分になり僕はラオカイの町で立ち止まった。
さて、これからどこへ行こうか?全く何も調べてないこの状況。
僕はモチさんから教えてもらった"Map with me"(オフラインでもダウンロードしたマップが見れるアプリ)とにらめっこし、親切なホテルマンにWi-Fiを借り(「いーよ!いーよ!使いなー!」とめちゃくちゃいいヤツだったなぁ)
ハノイへ向かう事にした。
何でハノイかって?
聞いた事のある名前だから笑。
ラオカイ駅はなんとか歩いて行ける距離にあった。
途中に売店やホテルで値段を聞いてまわったんだけどそこまで安い印象は受けなかった。国境近くってこともあるのかな?
降っている雨のせいなのか汗のせいなのかはたまたその両方なのかとりあえず僕はベトベトになりながらもラオカイ駅に到着した。
とりあえずハノイまでの切符を買ってみよう。買えなきゃどっかそこら辺に安宿があるだろう。
だんだんと旅に慣れてきたのが自分でもわかる。宿の予約がなくても「なんとかなるだろ」と思えるようになった。
買えた切符は18:40分発のHard Seat(座席のみ)だった。
中国で「硬座」なら、こっちは「ハード」か。まあ節約だし、地元の人の目線で旅ができるのも面白い。
僕は時間まで近くのカフェで練乳の入ったコーヒーをすすり、久しぶりのFacebookで友達の近況を知った。
駅の片隅からジャンベの様な打楽器の音が聞こえた。少し弱いがギターの音も聞こえる。
お揃いのオレンジ色のTシャツを着た人たちがベトナム音楽を奏でている。
僕はリズムに合わせて体を揺すっていると一人が僕にこっちに来いと言う。もちろん輪に入る僕。
なんて言ってるか全然分からなかったけど、僕は彼らと一緒に歌い、自前のギターを取り出して数曲披露した。
「Strong Vibration!」
僕のノリを見て一人がそう言った。
音楽は国境を越える。間違いない。
警備員に何度もストップをかけられても彼らは歌う事を止めなかった。
ベトナムの人たちは優しそうな顔をしている。なんだかこの国が好きになれそうだ。
3時間以上遅れて列車はラオカイ駅に到着し、ハノイに向けて出発した。
乗り合わせたお姉さんが僕たちが歌ってるところをバッチシ写真に撮っていたことが面白かった。
すぐに眠れないのでアプリの「eCurrency」でレートを確認しながら列車の机でMOLESKINのお小遣い帳に今日の出費を書く。その時、何かがひっかかった。
「あれ...?
おれの手持ちってー...
こんなに少なかったっけ?」
Wi-Fiでアップデートされるレートは間違ってるはずがない。だが、僕の手持ちは3,000円ぽっちしかないことになっていた。
真っ白になる頭。
計算では1,300元で2万円分のベトナム通貨が出に入るはずだ。それが何故か手元には3,000円分しかない。
ボられた...
まさか国境の職員が騙してくるなんて思わなかった。
手に入れたドンを一枚一枚確認し『80万も手に入るんだぁ〜♪』と思った僕が馬鹿だった!通貨の桁がアホみたいに上がってこちらが馴染めてない隙を突かれた。
当然のように出された3,000円分の通貨。
そうか…。あのあからさまな客引きはグルだったのだ。注意を逸らしてその隙にこともなげに少ない額のベトナム・ドンを出す。
ベトナム・ドンのけたの多さに慣れていない旅行者なら、そのまま行ってしまうだろう。それに気づいたとしても「間違えちゃった!」なんて茶目っ気たっぷりに謝るんだろうな。クソッ…。
ここは戦場か?
失った17,000円の使い道を何度も考えた。
「よっしゃー!
今日は俺の奢りだ〜〜!!
ひゃっふーーーーー(*☻v☻*)」
そんな妄想が頭に浮かんだ。
アイツら、今夜はパーティだな…。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。