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「テーブル難民(作業用」

世界一周188日目(1/2)

宿のスタッフは僕のバックパックを預かってくれないと言う。

マ〜ジ〜か〜…。

列車の時間まで9時間。
どこか漫画製作にちょうどいいカフェが見つかればいいんだけど…。
たぶんそんなうまくはいかないだろうな。

チェックイン/アウト24時間制の宿なので、昨日自分がチェックインした時刻ぴったしに宿を出た。

このティルチチナパリの街には駅の周辺にわりとしっかりした規模のホテルがいくつかある。そこに泊まる気なんてさらさらないんだけど、カフェのテーブルくらいはありつけるだろうと、大きなホテルの脇にあったカフェで数時間いてもいいか尋ねてみた。返答はオーケーとのこと。

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時刻は朝の8時半。お客さんはゼロ。お店の入り口は開けっ放しにされており、砂埃が入ってきそうだ。天井のファンはガンガンまわっている。テーブルはあるだけマシか。漫画の下書きだけできればそれでいいかな。

自然光の入ってくる窓際のテーブルについて、長居してもを文句言われないように飲み物以外もちゃんとオーダーしておいた。

朝食はイドリーとヴァダイ、それとラッシー。
イドリーは蒸しパンみたいなやつ。冷えるとクソ不味い。ヴァダイは味のない揚げドーナッツみたいなもの。どちらもカレーをからめて食べる。総計64ルピー(106yen)。朝からそこそこの出費だ。でも作業場を確保するためには仕方ない出費。

まずは旅ノートを広げて旅の予定を書いたり、作りかけの自作の曲をハミングしながら詩を書いた。おっ!これかなり出来がいいんじゃないか!そんなことやってるとあっという間に1時間が過ぎる。
おー!そろそろ漫画描かないと!まぁ、今回はしっかりオーダーしたしね。3~4時間いても大丈夫だろう。

と思っていたのだが、ここはインド。

ラッシーを飲み終わった頃には偉そうな店員が「追加の注文は?」と訊いてきて、伝票を持ってきた。

「うん。また後で追加注文するよ」
とりあえず、64ルピー支払って下描き。

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一時間後には「掃除をするから出て行ってくれ」と言われた。掃除のおばちゃんが迷惑そうに僕のことを見ている。

んだよぉ!数時間いていいって言ったじゃないか!
いや、確かに2時間いさせてもらったけどさ!
せ、せめてあと一時間…。
そんなこちらのお願いも彼らには届かない。

お客さんも全然いないのに目障りなヤツは追い出すのがインドスタイルなのだ!



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バックパックを背負って次なるカフェを探す。

見つけたのはこらまた高そうなホテル。

レストランやカフェが中に入っていて、テーブルにはありつけそうだけど…

僕の姿を見てやって来たスタッフは列車の時間まで数時間ここで待っていてもいいかという問いに対して「いいから!いいから!」という感じで僕を吹き抜けのテラスまで案内してくれた。こじんまりとした吹き抜けには床の隙間から人口芝が顔をのぞかせ、天井からは自然光が入ってくる。もちろんテーブルは漫画を描くには申し分なし!ホテルの宿泊客がここを利用するのだろう。だが宿泊客の姿はなかった。

戻ってきたスタッフが申し訳なさそうな顔でこう言った。

「ここはお客さんが使うんだ。悪いけど数時間はいさせることができない」

って、さっきと言ってること違ぇから!!!

まだテーブルに原稿用紙も広げてないぜ?
頼むから淡い期待を抱かせないでくれよ…

「数時間いたいなら部屋をとってくれ」とかわけの分からないことまで言ってきた。ナンセンス。たかだか数時間のために部屋をとる阿呆がどこにいるんだ?



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前日街を歩き回ってあれだけ自分のパソコンを使わせてくれるネット屋が見つからなかったのに、

ホテルの目の前にあったネット屋で訊いてみるとすんなりオッケーしてくれた。

一時間40ルピー(66yen)を値下げして
2時間60ルピー(100yen)にしてもらった。
あ~あ、他の街なら一時間15ルピーとかあったのに…。

書いた日記を公開したり、読み貯めたブログを読んで2時間。

ここからまたカフェ探しだ。



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さっきのホテルのすぐ脇にカフェとも言いがたい売店を見つけた。

チャイやコーヒーがちっさなカップに入って一杯8ルピー(13yen)。なんと一台テーブルもある。

お客さんはそこで買ったものをビニール袋に入れてすぐにどこかへ行ってしまう。ここならなんとか描けるんじゃないか…。

原稿用紙に2コマ分の絵を描いたところでストップがかかる。

「ここで個人的な作業はしないでくれ。他の客がテーブルを使えないだろう?」

ってその客はどこにいるんじゃぁああああああ!!!!それにテーブル独占しないように他のお客さんの分のスペース空けてるわ!

くっそ~!

このヒマそうにしている店員たちに言われると余計イラっとくる。給料はどこから出てるんだ?てかなんでインドにはここまでテーブルがないんだ?

いや、テーブルがないわけじゃないんだけど、彼らは「物や食事を上に並べる」ことくらいにしかテーブルを使っていない。たぶんインドじゃ「カフェで読書」なんてできっこない。自分の机は自分で買えということなのか?

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列車の時刻までもうあまり時間がない。

僕は諦めて昨日と同じ駅前の通路で早めのバスキングをすることにした。音が響く通路がせめてもの救いだ。

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唄うことは時に絵が描けないストレスの発散になるよ。他の人がカラオケに行くようにね。

カラオケってさ、そんなしょっちゅう行くもんじゃないよね。どういうシチュエーションで行くのか遊びだったり、飲みの後だったり人それぞれだけどさ、人の歌を聴いてる時ってヒマじゃない?『あ~、アイツの歌まだ2番のAメロ、Bメロ、サビも残ってるよ…』って。大勢いるときなんて、なんでおれここにいるんだろう?って思っちゃう。いつになったら自分の番がまわってくるんだろうか?知らない曲だとイマイチ楽しめないし。


だから、こうして外で唄えることはすげー解放感があるんす♪

純粋に唄ってて楽しいし、スキルアップも感じるし、聴いてくれる人とのふれあいもある。



「なんで君はここで唄っているんだ?物でも盗られたのか?」

インドでこのフレーズを何度か聞いた。

インドにおいてギターケースを前にして唄っているとバクシーシを求めている様にも見えるようだ。まぁ、そこが難しいんだけどね。

別に「ちょうだい」って言ってるわけじゃないしかといってレスポンスも欲くないわけでもない。

「いえ、僕はパフォーマーです。こうして自分の歌を聴いてもらって何か感じてもらえればレスポンスが入りますし、何も感じなければ何もいただきません。そして僕はいただいたお金でインドを旅することができるんです」

インドの人たちは基本「訊きたがり」だ。いつもと違ったものに対して興味を持ってガンガン訊いてくる。

職業は何だ?
("Cartoonist"です)だの、

大学はどこだ?だの
(いや、言ってもいいけどどこの大学だか分かってる?)、

何で旅をしているのだ?
(漫画家がどうのこうの言う時もあるんだけど、
めんどうだと「インド文化に
感動したからであります!!!」って答えます笑)だの、

電話番号教えて!Facebookやってる?だの
(ううん。ごめん持ってないや)

などなど。


話しかけてきたおじさんは言った・

「我々は君がここで唄っていると『なんでここで唄っているんだろう?』と
気になってしまうんだ。だから自分の自己紹介のような物を書いて用意しておいた方がいい。それじゃ頑張って」

親指を立てて去っていく駅員。2、3枚入る10ルピー札。つられて周囲からも10ルピー札やらコインが入る。中には「グッド!」とか言ってくれる人もいる。

ほいほいみなさん、聴いてくれてありがとさん♪

そろそろ行くね。列車は次の街へ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。