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「別れを繰り返し、僕は次の街へ in チェコ」

世界一周428日目(8/30)

ソファの上、朝の6時半に目を覚ました。

パヴロじいちゃんは既に起きており、
僕に朝ご飯を作ってくれた。

窓の外を見ると、空が白く明るい、少し寒そうだ。

パヴロじいちゃんの家を出るとき、
じいちゃんは僕に十字架のついたネックレスと
マリア様の絵が描いたポストカードを
僕にくれた。

僕はキリスト教徒ではないけど、
きっとこれが僕を守ってくれる
そんな気がした。

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ここはチェコ、ヤヴロニツ。

今日、僕はドイツへと向かう。




電車の時間は7時45分。

朝ご飯を食べると、
荷物をまとめて大家さんにお礼を言い、
パヴロじいちゃんと一緒に駅に向かった。

朝からパヴロじいちゃんはノリノリだった。

軽くハミングしていたかと思うと
「ポウッ!」とマイケル・ジャクソンみたいな
高い声を出して僕の笑を誘った。

胸一杯に行きを吸い込むと
フレッシュした気持ちになれた。良い旅立ちだ♪

駅まで歩いて行き、待合室で電車を待った。



10分前にやって来た電車。

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プラットフォームとも言えないような場所で
じいちゃんとハグをする。

僕が電車に乗り込む前に、じいちゃんは
「別れが寂しい」とでもいうように
泣き真似をしてみせた。

チェコ旅の最後の最後に
良い出会いが待っていたな。

公園で野宿していてバックパックや
一眼レフ(それに眼鏡まで)盗まれて、
チェコが心底嫌いになりかけたけどー、

ここにまた帰ってこれる場所ができた。

元気でね。じいちゃん。

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7時45分になって
電車は国境の町へ向けて
動き出した。

僕は電車の入り口から遠ざかって行く
じいちゃんに向けて手を振った。

じいちゃんの姿はあっという間に見えなくなり、
僕は自分の座席についた。



涙が出た。

涙なんてどれくらい流してなかっただろうか?

この旅の中で惜しげも無く
僕に優しさを注いでくれた人たちのことを思い出す。

僕はー、その優しさに
何かで応えることができたかなぁ?

なんでこんな僕なんかに
優しくしてくれるんだろう?

僕はー、あなたに会えてよかったです。
それは間違いなく言えます。




森の中を抜けるようにして電車は走った。

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時折木々の合間から農場が見えた。

牧草をマシュマロみたいな形に
まとめたものがいくつも転がっていた。

もうこの景色ともお別れとなると、
自分目に今映っているものが
たまらなく愛しく思える。


でも、旅はその繰り返しだ。

ネパールでも、アルメニアでも、イタリアでも、
どんな国だって、通り過ぎていく景色は一回きりで、
自分の心のファインダーに残しておこうとしても、
いつの間にか、色あせてしまっている。


時々、
『あの国のあの場所で見た景色は、
どんなんだったっけな?』

と、自分が訪れた国に思いを馳せるが、

カメラのように精密でない
僕の頭が再現できるのは、
なんとなくのイメージだけだ。

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2時間ほどで僕は国境の町に着いた。

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マップアプリでドイツへ続く線路を辿り、
今いる町から電車を乗り換えれば
ドイツに行けることが分かった。

大きな橋を渡り、3kmほどの距離を歩いた。

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これが今まで背負っていたバックパックなら
大変だったなと思わなくもない。

再出発だ。失ったものはたくさんあるけど、
その分身軽になれた。前向きに行こう。


地元の人の訊いて、
ドイツ行きの電車が出ている駅へと向かった。

まず向かう先はドレスデンという町。
200コロナ(985yen)だった。
国境を越える電車だけど、そこまで高くない。

手持ち余ったコロナもユーロに両替しておいた。

ドレスデン行きの電車が出るまでの1時間半で、
僕は駅周辺をブラついた。

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爪切りやタバコ、ちょっとした食糧を買って、
よいよチェコとのお別れの時間だ。


僕が乗り込んだのは車内に
トイレの着いているような綺麗な電車だった。

電車は国境を形成している川沿いを走り、
あっという間にドイツへと入国した。

マップアプリを見ていなかったら
自分が今ドイツにいることなんて
分からなかっただろう。


今までのような
チェコの田舎っぽさとは打って変わって
とたんに洗練された先進国の景色になった。

チケットを確認しに来た恰幅の良い車掌さんは、
僕にドレスデン行きの乗り換え電車を教えてくれた。

車内アナウンスもドイツ語へと変わり、
ドレスデンの駅へと降り立った時、
僕はドイツへとやって来たことがよく分かった。

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もう日本のそれとほとんど
変わらないのではないだろうか?

駅の目の前には大きなショッピングモールがあり、
チェコののどかさなんて1ミリも感じられない。


バスキングによさそうな歩道も見つけた。

その先進国の空気に僕は興奮させられた。

ここならまたバスキングでお金が稼げるかもしれない!
しかも相手はドイツだからな!
イタリアよりはいいんじゃないか??!!

ニヤニヤしながらギターを構えた。


通行人は僕のことなんて
これっぽっちも気にしている様子は無い。

それでいい。僕なんてそんなもんさ。

肺に空気を吸い込み、唄いだす。

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人通りは多い。

だがレスポンスはほとんどない。

人に寄っては露骨に顔をしかめた。

20分ほどのバスキングで
僕はすっかり萎縮してしまった。


『僕なんてー、こんなもんだ』
とは思いたくなかった。

だって今までどれだけ
バスキングやってきたと思ってるんだよ?
今まで培って来たものはなんだ?

ショッピングストリートのベンチに座って
持っていたプラムとパンをかじる。
軽くなったはずの荷物が
数日前の重さと同じように感じた。

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僕はiPhoneを取り出し、フリーのWi-Fiを探す。

町にはWi-Fiが行き交っていたが、
どこにも僕が使うことのできるWi-Fiはなかった。



『なんかー…
冷てぇな…』



先進国のドイツ。

みんながそれぞれにプライベートの領域を持ち、
他人とはそこまで干渉しない。
インドやトルコの人なつっこさが欲しかった。

どうやらスターバックスでは
Wi-Fiが無料で使えるようだ。

お店の外でアンテナ一本分の
Wi-Fiを使ってするのはいつもと一緒だ。

パソコンでブログを書いている以上、
ブログの更新はできない。

なんか贅沢なブログだなぁ。
こんなん旅ブログじゃないのかもなぁ。
でも、iPhoneのフリッカーで文章書くと
なんだかノれないんだよ…

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『もう一回チャレンジしてみようか?』


僕は諦めが悪い。

さっきは人通りの多い歩道だったが、
人との感覚が狭かった。

ある程度の広さがないと
バスキングはダメなんだよな。

とりあえず自分が納得できればそれでよしっ!

しゃーーーッ!やったらーな!



いかに「バカ」を演じられるかだ。

ただのカラオケマシーンにはなりたかない。
からだ全体を使ってシャウトする。

すると、さっきとは違い
パラパラとレスポンスが入った。

子供連れのお母さんなんかが
ニコニコしながら足を止めてくれたりする。


見回りの警官だかにストップをかけられて、
僕のバスキングは終わった。

この町でバスキングをするには
パーミット(許可証)がいるらしい。
まぁ、明日はもう別の町に行くから、大丈夫っすー。

パスポートの確認はされたけど、
そこまで怒っている様子はなかった。

僕には行かなくちゃいけない場所がある。
だからこの町の隅から隅まで見ている時間はない。
町の中心地だけ見れただけで十分だ。

最近パソコンもすっかりご機嫌ナナメだし
修理にも出したい。お金かかるけど….。

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ファストフード店の二階で
充電をしながらキーボードを叩いた。

22時の閉店時間まで日記を書いた。

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Wi-Fiが使えやしないか、
もう一度スターバックの前まで行ってみたが、
閉店後のスターバックスからは
Wi-Fiは流れてこなかった。
スイスだったら使えたのになぁ。

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「Hitchwiki」には時々、
野宿の情報も載っている。

ドレスデンでは川沿いで気軽に野宿ができるそうだ。

地図を頼りに川まで向かい、
人気の少ない暗がりにテントを立てた。

テントの出入り口を川の正面にする。

朝起きて外を見ればそこが川っている
ゴキゲンなロケーションだ。

テントの中に荷物を入れ、
マット代わりの段ボールを敷いて、寝袋を広げた。

町の灯りが反射する川を眺めながら、
ぼうっとタバコをふかした。


お疲れ。おれ。

約束の場所はすぐ目の前だ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。