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「フリーなイズミル in トルコ」

世界一周369日目(7/2)

昨日ベッドに入ったのは
4時過ぎだった。目が覚めて時計を見ると12時。

閉め切ったカーテンは部屋を薄暗くし、
外の活動がすっかり始まっていることなんて
僕には分からなかった。


ここはトルコ。イズミルという街。

昨日バスキングをしていたら出会った
クルド人のサジュークの
シェアルームのベッドの上。


ルームメイトには
ここでITの勉強とトルコ語の勉強をしている
イラン人のアーシャがいる。

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彼はとっくに外に出かけていったようだ。

昨日シャワーも浴びずに寝てしまったので、
眠気覚ましのシャワーを浴びる。

トルコではトイレの洗面台で
髪を洗うことに慣れてしまったので、
いかに自分がリッチな環境にいるのかが分かった。

トイレに入っていく人の目を気にすることなく
思うぞんぶん髪を洗うことができた。


それにしても、ちょっとお腹が減ったな…。

サジュークが
「キッチンにあるものは好きに食べていいからね」
と言ってくれたので、お言葉に甘えさせてもらった。

電子ケトルでカップ一杯分のお湯を沸かすと、
インスタントコーヒーを作った。

テーブルの上にコーヒーを持っていき、
角砂糖を4粒ほど溶かして、糖分を摂取する。

コーヒーを飲むと大分頭がすっきりした。


サジュークは29歳だが、
まだ大学に通っており、音楽理論を学んでいる。

今日はテストがあるらしく、
9時には家を出ると言っていた。
彼も大学に行ってしまったんだろう。

シェアルームの奥の部屋が彼の部屋となっていたが、
僕はそこを確かめることをしなかった。

人の部屋ってちょっと入りにくいじゃん?


僕もまた日記が書きたまってきたので、
テーブルでパソコンのキーボードを叩いた。

動く日もあれば、そうでない日もあっていい。

今日は思う存分文章を書こう。

電気もつけない薄暗い部屋の中で
僕はずっとパソコンに向かっていた。

そして時折、ベランダから見える海を
ただぼっと眺めていた。

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海の見える街はいい。

高い場所から見下ろすと、
街が海より下に位置しているような気がした。



それから数時間経ってのそのそとサジュークが起きて来た。


「あ、おはよう。あれ?テストは?」

「はは…、起きられなかった」

おいおい。
ずいぶんスローペースだな。

今日のテストは自分の学んでいる分野とは
全く違うものらしいが、
大学のテストってけっこうデカくなかったか?


僕はけっこうなビビリだったので、
大学のテストはしっかり受けて来た。

大学生時代が人生において
一番自由な時間が多いと言われているが、
僕は大学とはなんて自分の人生を
浪費する場所なんだろうと、何度も思った。

単位取得のために毎回退屈な講義に出席し、
やる気のない雇われ教授の授業を受ける。

ただただ、時間過ぎていき、
配られたパワーポイントの資料だけが増えていった。

時々運良くモチベーションの高い先生の授業を受けられると、
どこか救われた気がしたものだ。


大学からは何も学ばなかった。


いや、一時的に頭に詰め込んだことは
忘却の彼方へと消えていった。

そんなものだ僕の大学生活なんて。

大学の外に仲間ができてよかった。

心からそう思う。

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そして「漫画家になる」という
人生の指針ができたからでもある。

これが僕の21歳から22歳の大学時代。
大学2年の秋から3年の終わりまで。

大学のキャンパスは表参道になった。
僕はお金を浮かすために歩いて
新宿御苑の横を早歩きでつっきった。

そんな一年間だった。

ようやく自分の人生を生きている。
よくそう思う。

きっと今までの人生は
今こうして僕が僕でいるためにあったんだ。


サジュークは
僕にトルコの有名な曲を教えてくれた。

日本で言う「上をむいて歩こう」みたいな曲だ。
人生観を含んだ歌詞で
トルコ人なら誰でも知っているらしい。

薄暗い部屋の中で練習をして、
日が沈むと僕たちは外に出た。

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サジュークの元カノに、
彼女の私物を渡すらしい。

待ち合わせ場所にいたお姉さんともう一人の女性。

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あれ?彼女かな?


「違うよ。彼女のワイフさ」


ちょっと考え、すぐに二人がどういう関係なのか分かった。
トルコは意外と同性愛にオープンなのだ。


サジュークが彼女たちと話している間。

僕は彼らと同じテーブルでカフェバーのWi-Fiを使って、
iPhoneの画面をいじくっていた。

時折「ジャポン」というワードが聞き取れると、
「あははは」と笑った。


時間も遅くなり、サジュークが彼女たちと別れ、
シェアルームに戻る路地で肌の露出した服を着た
大きな女性が突っ立っているのが目に入った。


「彼女たちがさ、言ってたよ」

「なんて?」

「『シミをゲイバーなんかにつれてっちゃだめよ!
カワイイ顔してるからゲイにモテちゃうから!』って」


僕たち二人が大柄のオカマの横を通りすぎると、
彼は低い声で「チンチャ~ン」と言った。

ホられたらマジで笑えねえ。

トルコでは日本人の女のコがモテるという。

男子も例外ではないようだ。

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夜型のサジュークと一緒に海沿いの芝生へと向かう。
海から吹き抜ける夜風が最高に気持ちがいい。

そしてこの適度な暗さが心地よかった。

23時をまわっても、
海沿いの芝生の上には沢山の人がいた。

これといって特に何かをするわけでもなく、
ただただビールを飲んで話をする。

新しく設置される予定の電柱には
電灯部分がとりつけられていない。

だが、いずれこの海沿いも電灯だらけになって
無駄に明るくなってしまうのだろう。


サジュークの友達が集まっている場所を見つけて、
僕たちもそれに入った。

バスカーの友達と一緒に
サジュークはガットギターを鳴らす。


「それ何の曲?」

「ん?ジャムしているんだよ」


僕も即興で英語の歌詞を当てシャウトした。

男が歩いて来る。

僕たちに話しかけて来た。


「2リラくれないか?ビールが飲みたいんだよ」


そんなファニーな場所さ。イズミルは。

最高の仲間がここにはいるよ。
僕は今トルコを旅している。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。