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「再びイタリアへ from スイス」

世界一周403日目(8/5)

雨の中、ガソリンスタンドのベンチに座って、ぼうっと車が来るのを待っていた。

ここはオーストリア、インスブルック。
隣国へと続くハイウェイがある街。

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僕はイタリアに戻ろうとしていた。

イタリア自体にそんな魅力を感じない。
物価は高いし、バスキングはそんなにレスポンスよくないし。

でも、ヴェネツィアは行っておきたいなと思ったのだ。

「水の都」。世界一周ブログに時々表れる綺麗な街並。
でも、この雨じゃどこにも行けそうにない。

そんな時に青いフォルクスワーゲンに
乗ったお兄さんに越えをかけられた。


「どこまで行くの?」

「イタリアまで」

「リエンズって言う街までだっら
乗せて行ってあげるよ?」

「え?!マジですか!
お願いします!」


ハイウェイを120km以上でぶっ飛ばすお兄さんの名前はミロー。

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同じくらいの速度で走る車の後ろからは、路面の雨水がまるで煙のように巻き上げられている。なんのお仕事をされているかは分からなかったけど、車を運転することが多いそうだ。かといってトラックの運転手には見えない。自分の居心地の良いようにカスタマイズされた車内は綺麗だった。ミローのご家族はそのリエンズという街に住んでいるらしい。国境もすぐ近くだ。ハイウェイからは離れるけど、ヴェネツィアには近づく。まぁ、なんとかなるかな。

最初はお喋りをしていた僕だったが、だんだんだんだんと睡魔が襲って来た。トルコだったら窓を開けて「うぉ~~~~!」とか眠気覚ましができたけど、時速100km以上で外に雨が降っている今の状態では、睡魔に抗う手はない。ウトウトして、気づいて、「はっ!ごめん!寝てた!」ってなって、そしてしばらくすると、再びウトウトする…。その繰り返しだった。そんな睡眠不足の感じはしないんだけどなぁ~。やっぱり外に寝ると睡眠がちゃんと取れてないのかもしれない。

途中でコーヒーとサンドイッチをおごってもらった。ありがとうね。ミロー。そして寝ててごめん笑。

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3時間ほどのドライブで車はリエンズという小さな町に着いた。「ここでは古くて価値のある車が沢山見ることができるんだよ」とミローは言っていた。美しい山々に囲まれたお金持ちの避暑地みたいな場所だ。

「ここでヒッチハイクすれば捕まるよ」
とイタリアへと続く一本道で降ろしてもらった。

お礼を言ってミローと別れた。



雨はやんでおり、路面が少しずつだが乾き始めていた。

バックパックを背負ってスーパーまで行き、トイレを借ろようと、入る場所を間違えて警報装置を鳴らしてしまい、ちょっと気まずい雰囲気になる。ヒッチハイクの前にタバコを一本吹かし、また少し不安な気持ちになる。大丈夫さ。きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせた。

ヒッチハイク開始10分で車が停まってくれた。

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乗っていたのはドイツ人の老夫婦。2週間くらいのショートトリップでこれからケルンに帰るらしい。行き先はイタリアのボルツァーノという町。

僕がハイウェイではない道でヒッチハイクするのだと言うと、ヒッチハイクならハイウェイの方がいいとのことなので、僕は今朝方いたオーストリア、インスブルックの町をリエンズ経由で迂回してイタリアへと戻ることになったのだ。たぶんインスブルックからボルツァーノまでは2時間くらいってとこ。地図が無いから分かりにくいんだけど、ようは3時間かけて遠回りしたってことかな?ここまで来るための3時間はなんだったんだ。いや、きっと、人と出会うためにあった時間だ。うん!そうだよね!


軽快な会話、綺麗な風景、どこが国境だったかもわからない。

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気づいたら寝てた。今日はよく寝落ちする日だ。この際、「仕方ない!ごめん!」と開き直るしか無い。


山を抜けると、一気に気温が上がった。着ていたアウターと7部袖のカットソーを脱いでバックパックにしまう。僕はなんとかイタリアに戻ってくることができたのだ。

どこだ?ボルツァーノって?なんか火山でもありそうな名前の町だな。

僕を乗せてくれたドイツ人ご夫婦はボルツァーノのガソリンスタンドで僕を降ろしてくれた。

「どこがヒッチハイクにいい場所か分からないから」

とは言っていたが、そこはハイウェイ前のバス停で、ここならヒッチハイクできそうな良いポジションだった。

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近くのガソリンスタンドで高いお菓子を2.5ユーロくらいで買って、エネルギー補給を住ませてヒッチハイクを開始する。行き先はいきなしヴェネツィアではなく、50kmくらい離れたトレントという町。元気よく親指を立てた。

車はどんどん向こうからやって来ては、一台も止まること無く力一杯駆け抜けて行く。

僕は思った。


ここはイタリアなんだってこと。


なぁ、スイスやオーストリアならこれの半分以下の時間で止まってくれたぜ?なぁ、なんでみんなそんな無表情なんだよ?

時折、がんれよ~!みたいにノリの良い車がいたが、ほとんどはそのまま素通り。

国が違うだけで、こんなにレスポンスが違うんか…。

やっぱりイタリアはイタリアだよ!
ここまでしたのにっ!

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ヒッチハイク開始1時間で車が停まってくれた。

行き先は少し離れたオーラと言う村。

運転手のカルミネと彼女のヴァレンティーナというカップルだった。

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そこに用事があるの?と尋ねると
「for you(君のためさ!)」
と言ってくれた。

やっぱいい人はどこにでもいるんだなぁとしみじみする。

ヒッチハイクで疲れていて
そこまで明るく振る舞うことができなかった。

それでもありがとう。

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オーラという町からバスに乗れるとのことだったが、実際に駅にまで言ってみると、トレントの町までは電車しかないとのことだった。そのかわり、頻繁に出ているらしい。彼らに別れを告げ、僕は電車に乗り込んだ。

スイスでタダ乗りできたことに味をしめて僕はここでも試してみることにした。だってたかだか40kmくらいの距離を進むのに10ドル近くするんだぜ?まったく信じられないよ。それにこんな小さな駅からだったら絶対バレないっしょー!と高をくくっていたが、オーラの駅から数駅先の駅ですぐに駅員が入って来た。

「あれ?さっき、切符買ってお財布の中に~…、すんません失くしちゃいました。いくらですか?」

特に罰金ということはなかったが、10ドル近くのユーロが一瞬ですっ飛んで行く。はぁ…。まあ、だいたい僕はこいうときすぐにバレるんだよ。そういう体質なんだと思う。



トレントで一旦電車を降り、ヴェネツィアの手前のヴェローナという町までの切符を買った。19時前にヴェローナの駅に到着した。

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周りには僕と同じようにバックパックを背負ったヨーロピアンの姿が。きっと学生とかも旅行シーズンなんだろうな。ただし、僕のように前にサブバッグをかけているような人間はひとりもいなかった。

少しでも飛んで行ったお金を取り戻そうと、町の中心部へと歩いて向かった。駅から少し離れたメインロードを歩き、よさそうな路地を見つける。他にもアコーディオン弾きのおちゃんバスカーがいて、ここがバスキングができる場所だということがわかった。

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音が届かないところでギターを構える。やっぱり唄うって好きだ♪ここも少しは観光地のようでチラホラと観光客と思わし気人の姿もあった。イタリアにしてはまずまずのレスポンス。ほんの1時間ちょっとのバスキングで10ユーロ。時給換算すればまずまずだ。

近くのピザ屋さんで、ディスプレイされたパンを眺めていると、お店のお兄さんがニコニコしながら僕を手招きした。

「さっき唄ってただろう?よかったよ。どれが欲しいんだい?ピザかい?サービスするよ」

日本人は「サービス」もしくは「ディスカウント」という言葉に弱い。それは日本人だけじゃないと思うんだけど。1ユーロのコーラをタダでもらった。焼いてもらった3ユーロのピザはめちゃくちゃ美味しかった。ピザにかけてもらったオリーブオイルがピザにばっちし合っている。

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「他にも何か食べるかい?」

「じ、じゃあ…(ゴクリ)」

そう言われて思わず財布のガードがゆるむ。なんだかんだで700円近くもご飯で使ってしまった。お腹がふくれると心も満たされる。ま、いっか。節約して飢えた状態よりかは♪



満足してヴェローナの駅に戻った。

ここに着いた時に買っておいたヴェネツィア行きのチケット。ミラノみたいに切符を持っていないと24時に閉め出されるとか嫌だからね。

駅のマックで1ユーロのエスプレッソを飲み、日記を書くと22:00には閉め出されてしまった。やれやれ。トイレもアホみたいに有料で、使う気にはなれなかった。

買った切符を忘れないように打刻して、やって来た電車のトイレで用を済ました。ペットボトルの水で歯磨きをして、プラットフォームに「ぐしゅぐしゅぺっ」とうがいをする。ベンチの上に寝袋をしいてアイマスク代わりにタオルをかけた。

今日はよく移動した。もう疲れたよ。

そして明日はヴェネツィアだ。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。