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「気分はまさに家猫のよう」

世界一周377日目(7/10)

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早起きした。

って言っても10時半だけど。

サジュークや他のみんなは
明け方になってようやく各々のベッドに入る。

僕たちにベッドを提供してくれている
ビギンのおっちゃんは夜にバーで働いているので、
どうしても生活サイクルがずれ込んでしまうのは分かるんだけど、
サジュークやペリンはイスタンブールでの生活を
かなりスローに送っているようだった。

泊めてもらっている身としては、
一人でどこかに行くような勝手な行動ができないし…。

こんな風に気を遣ってしまうのは
やはり僕が日本人だからろうか?


いつまで経っても起きて来ないみんなをよそに、
一人ソファに座って黙々と日記を書いた。

もちろん日記を書く意外にやりたいことはある。

いくら観光に興味がないと言っても、
行ってみたい場所はあるし、
雑貨を仕入れに行きたい。

あっ。そうだ。
サバサンドまだ喰ってないや。

今まで一人で気ままに旅してきた僕は
いささか窮屈な思いを感じ始めていた。

寝る場所も食べ物も用意してくれるサジュークたち。
彼らはお金は受け取ろうとしないので、
僕は昨日ビギンにビールとタバコを買ってお返しした。

やっぱりそっちの方が良いみたいだ。

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お昼を過ぎたころに
サジュークたちはのそのそと起きてきた。

キッチンで簡単な食事を作り、それをみんなで食べる。

その後はLGのパソコンでYouTubeで
音楽を聴いてまったりしている。

一体いつになったら外に出るのだろう?



夕方5時をまわり、僕たちはようやく外に出た。

はぁ、なんか一日を無駄遣いした気分だな。

今日も夜遅くまで起きてるんだろうな。

なかなか言い出しにくいんだ。

「一人で行動したい」って。


何度か「そろそろ宿に泊まるよ」と
口にしにしてはみたのだが、
サジュークは「そんな必要はないさ。
明日は友達の家に泊まるからさ」とすぐに
答えを用意してしまう。

一体どうやって言えば別行動がとれるんだろう?

「何もしないでグダグダ一日を
過ごすのが嫌なんだ。
一人で行動したいんだ」

ってストレートに言ったら、
間違いなく彼は傷つくことだろう。

よくしてもらっているだけあって、
そんな風には言いたくない。


カウチサーフィンなんかを
利用したホームステイももしかしたら、
きっとこんな感じなんじゃないだろうか?

『泊めてもらう身だから…』

とか気を遣って、
自分の自由行動が制限されてしまうような。

1~2日だったらそんなことはないだろう。



でも、サジュークと一緒に行動して始めてから、
気づけば10日間も経ってしまった。

ひとまず今日、僕たちを泊めてくれる
彼の友達の家へと向かう。

イスティカル通りを路地4本分ほど
奥にある小さなアパートメントに
彼の友達(の弟)は住んでいた。

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「それじゃあ今日、よろしくお願いします♪」
と日本語で挨拶する。第一印象は大事だから。

バックパックを置かせてもらい
僕たちはメイン通りに出た。


彼はサジュークのいとこ。

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夕方のイスティカル通りをグダグダと歩く。

さっき、
サジュークのいとこと
そのガールフレンドを見つけて
上機嫌になるサジューク。

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ビギンは仕事へ。
サジュークの元カノのペリンも
どこか他のところへ行ってしまった。

仲良く肩を組み合う3人の後ろを黙ってついて行った。

時々サジュークが
「How are you??man?」と尋ねて来るが、
僕は「fineだよ」と返すだけ。


いやいや、考えてみろよ?

いとこと久しぶりに
再会して彼も嬉しいに決まってるじゃないか。

そうだよ。
僕はここにタダで泊まらせてもらってるんだぜ?
彼と一緒に行動するのは当然じゃないか?



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週末の人で混み合ったイスティカル通りの
端から端まで歩いて行き、
ビールを買ってもと来た道を引き返したと時に

僕は決めた。

『何があっても
明日は一人で行動しよう』
と。

まさに気分は家猫の気分だった。
こんなに束縛されるのが苦痛だなんて。

目的もなしにグダグダ過ごすことが嫌いだ。



大学時代。

友達でもなんでもないクラスメートが集まって、
講義と講義の間の時間にのそのそ群れて歩く。
彼らが言うセリフはこうだ。

「これからどうする?」

僕にはそれが耐えられなかった。

すぐにー群れから離脱して
図書館に本を読みに行った。

せめて、これからどうするのか
説明してくれれば少しは楽なのに。

いや、僕が訊けば当然彼は応えてくれるだろう。

だが、たかだかビールを買うために
イスティカル通りを往復する必要なんて
あるのだろうか???

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僕たちはこれから
知り合いのライブバーに行くらしい。

そのライブバーが見つからずウダウダしていた。

途中彼の知り合いのおねーさんが登場して、
群れは盛り上がった。

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立ち話でもなんだしと歩き始める彼ら。

どこに行くのかなぁと思ったら、
バーでもなんでもない。

閉まったお店の前で座ってビールを飲み始めた。



だ、ダメだ。

この目的のない行動につき合ってられない。

ニコニコと
「じゃあバスキングに行くわ!」
とその場を抜け出した。



歩き出した瞬間、どこか開放された気持ちだった。

稼げない夜の路上で
おもっくそフラストレーションを爆発させる。

この日、唯一の救いは
ブルガリアのバスカーの女のコ2人と一緒になって、
ライブバーに行ったことくらいだった。

狭い室内の最前列でとりあえず踊ったけど、
心の底から楽しいとは思わなかった。



「明日はオールド・イスタンブールの宿に移るよ。
友達へのプレゼントも買わなくちゃいけないし、

修理に出したサンダルやカメラを取りにいってないからね。
一人で行動する時間が必要なんだ」


今日の僕の口数の少なさからか、
サジュークもいくらか落ち込んでいるようだった。


「明日シミの予定について話合おう。
宿に泊まる必要なんてないさ」

といつものように言ってくれるサジューク。

「そうだね。
でもね、ほら、洗濯ができないんだよ」

Scrubbaの中には4日前の衣類が入ったままだ。

日本にいると、遊ぶ時間がないだとか、
自分の時間がとれていないだとかよく耳にする。

だけど、何もしないと反対にそれが苦痛になってくる。

学びがあったと言えばそうだろう。

家猫にでもなったような気持ちだった。

そんなイスタンブールの5日目。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。