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「ヴァスコ・ダ・ガマという名前の町へ」

世界一周202日目(1/16)

5時半にはパッキングを始めた。
列車の時刻は調べてある。あとは直前に発券されるジェネラルチケットを買うことだ。目指すはゴアにあるヴァスコ・ダ・ガマ駅。

「どうして行くのか?」だって?
聞いたことある名前だからだ!世界史に出てきたおじさんでしたよね!で、ガマさんって何した人でしたっけ?確か航海士だったんだっけ?あはは。忘れちった。ネットもないから調べようにも調べられません。インドです。

今いるホスペットのバスターミナルから駅までは昨日町歩きの時に計ってみて徒歩15分くらいだった。だけど、時刻は日の登る前。野良犬と戦うのを避けるためトゥクトゥクを利用する。昨日のリサーチでは駅まで30~50ルピー。

宿のスタッフを起こして扉を開けてもらい、目の前に停まっていたトゥクトゥクに「30ルピーっしょ普通は?」と「さも知りなん」的演技を駆使し交渉を済ませて駅に向かった。ドライバーさん、日も昇る前からご苦労さんです♪

なんなく購入できたジェネラルチケット。6:30発の列車でヴァスコ・ダ・ガマ駅に到着するのは15時過ぎの予定だ。ホームには欧米人の旅行者の姿がチラホラ。楽しそうに。彼らはきっと寝台のチケットを持っているのだろう。僕はジェネラルだけどね。はは。今日もインド人の中にまじって旅をします(笑)。

ホームで列車を待つ。少し遅れているようだ。だんだんと橙色に染まっていく東の空。今日も旅が始まる。列車に乗りこもうと待ち構えているチャイ売りから7ルピーのチャイを買った。朝イチバンのチャイは格別だ。小さな紙コップから湯気が立ちのぼる。そして、40分ほど遅れてやってきた列車。電光掲示板に「GNR」とかかれた車両に乗り込んだ。

ジェネラルコーチは甘くない。いつものように座れない。こんな朝早くだってのに車両にはインド人がひしめきあっている。

とりあえずバックパックでポジショニングだけして自分の居場所を(立つ場所)を確保した。目の前で窮屈そうにしていたエンジニアのお兄さんと文字通り立ち話をした。というか一方的に話しかけてきたんだけど。

僕の方は現状をどうやってやり過ごすかに意識を集中していたもんだから、お兄さんとは楽しくお喋りというわけにはいかなかった。バックパックをカバーするように立ちながら乗って思ったこと。席はなくて、まわりは100%インド人だけど(洗面台前にお母さんと子供二人が寝ているのが非常に気になるけど!)ここは日本の満員電車ほどではないなということ。あれもあれでやり過ごすの、大変だよね。ここではまだスペースがある。早い時間ってのもあるけどね。

目の前にいたエンジニアのお兄さんは2時間くらいして小さな駅で降りた。「うちに遊びに来なよ!」と誘ってくれたが、ここからずっと先の目的地のことを考えると断らざるえなかった。なんとか床に座れるポジショニングまでこぎつけ体育座りで時間をやり過ごした。入り口近くで新鮮な空気が入ってくることがせめてもの救いだ。
そしてー、いくつ駅を通過したころだろう?フブリという大きい駅でジェネラルコーチの乗客たちが一斉に降りた。しばらく辺りの様子を伺って僕の思考回路は瞬時にこう判断した。

「今だぁぁああああああ!!!!」

トイレ付近にバックパックを置き、自分はそれに一番近い席に腰をおろした。この間20秒!はぁ…はぁ…やった!やったぞ!ようやく席にありついた…!!!しばらくすると瞬く間に席が埋まっていった。いやぁ、時間との勝負でしたね!


そこからの列車の旅はセカンドクラスとあまり大差ない。自分の席が確保されているか、自由席かの違い。

同席したおっちゃんたちからなぜかチャパティをごちそうになったり、車内販売のぶどうを食べ過ぎて気持ち悪くなったりした(20ルピーでけっこうな量なんだよ)。

長時間の移動で横になれるのに越したことはないけど、席があればだいぶ楽になる。

列車は呑気に走る。15時に到着予定だったのに気づけば16時を過ぎた。外に顔を出すと潮風と海の香りがした。



そして8時間の列車の旅を終えやって来たのはヴァスコ・ダ・ガマ駅。

泊まる場所あるのだろうか?

マップアプリにはたった一軒しか宿の情報が記載されていない。とりあえず宿のありそうな場所を探してみるが、宿の数はほんとうに3~4軒くらいしかなくて、安くても400ルピー(675yen)。そもそも町が寂れている。

ヴァスコ・ダ・ガマとは名ばかりでいるだけで気持ちが滅入っちゃう様な寂しげな場所だだった。

僕と同じ様にこの町に来たばかりで宿を探しているであろう、髪の毛ヒッピーな欧米人の旅人がいた。僕がこれから当たろうとしている宿から出てくるのを見て、この町に安宿がないことを確信した。

すぐさま宿の多いパナジ行きのローカルバスを探し、28ルピー(47yen)のチケットを買ってバスに乗り込んだ。

時刻は17:30。
果たして今日の宿は見つかるのか?写真はないけど、夕日がびっくりするくらい綺麗だった。海沿いで夕日は綺麗に見れるんだろうなぁ。パナジ…早く着かないかな?

30分…1時間とバスに乗ってるうちにどんどん焦ってきた。
パナジ!パナジ!パナジはまだか!!?三人掛けのシートの真ん中に座らされて、一刻も早くパナジに着きはしないかと不安でソワソワしていた。だって今日の予定ではヴァスコ・ダ・ガマで一泊する予定だったんだもん!今日はめちゃくちゃ移動している。

とっぷり日が暮れパナジに到着し、すぐに宿のありそうな方向へ歩いて行った。
日が沈んでもまだいくぶんか空は明るい。短期決戦だ!ここから宿を見つけなくちゃいけない。

だが、当たる宿は満室やら値段が高いやらで、あっという間に辺りは暗くなり、当然ながら土地勘なんて皆無。マップアプリ先生も最近Wi-Fiを通してないから自分のいるであろう位置から200メートル離れた場所を示している。

バックパックの重さが肩にきはじめたころ、日本語のちょっと話せる胡散臭いおっちゃんが救いの手を差し伸べてくれた。

「250ルピー、300ルピーの宿って…ないですよね?」
「う~ん…じゃああそこに当たってみたら?」

おっちゃんに言われた通りに安そうなゲストハウスに入っていき、部屋があるかを尋ねる。

「あるよ」

あんの!!!???

「シングルで400ルピー。」
「いやぁ…そこを300にしてくれませんかぁ?」

いつもの値段交渉。なんとか300ルピーで話をつける。ふぅ。とりあえず今日の宿確保ぉ~ッッ!

ベッドは2台と扇風機一台。窓には窓ガラスが入っておらず、ボロボロのカーテンでカバーされている。トイレは排水溝が詰まって水たまりができている。共同シャワーのシャワーヘッドはなぜかない。

20時過ぎ。町はすぐに静かになった。駆け込みで買ってきた食パンがこの日の夕食だった。



現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。