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「中国の電車は耐久線。そして僕は昆明へ」

世界一周52、53日目(8/19,8/20)

中国の列車に乗る度に教育ってなんだろう?と考える。

『何をエラそうに言ってるのあなた?』って話なんだけどさ、日本との文化と言うか、物事の考え方というか、カルチャーショックを感じずにはいられないわけです。


いつものように僕は食費は削れないくせに旅費を節約するため硬座のチケットを買った。

桂林から昆明まで18時間の旅。いつも耐久レース。

デカいバックパックは荷棚に乗らないから僕の席はいつも通路側。

「トゥイブチ!」と形だけは謝って自分の席までたどり着くと想像してた通り、僕の席には既に他のヤツが座っていた。

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「 そこ、おれの席だからさ」

このシチュエーションには慣れっこだ。自分のチケットを見せて自分の正当性をアピールする。

「チッ」と舌打ちが聞こえる。

いやいやいや笑。そこ僕の席だから。


先に座っていた人たちは両親と3歳くらいの子供ひとりの構成で

僕が席に着くと、持ち込みんでいた簡易椅子に座りタバコを吸い始めた。

一応、喫煙スペースもあるのだが、どういうわけか彼らは(というかお父さんは)何食わぬ顔でタバコをふかした。


子供はバタバタとはしゃぎ回っていた。

まぁ、可愛い年頃なのは分かるんだけどさ。ちょっとうるさいよね。

お母さんも他の乗客に迷惑なのに気がついたのか子供を叱る。

はしゃぐのをやめない子供。

「バシッ!」ついにはお母さんの手がでる。

だが、子供もただでがはやめない。

僕は思った。『コイツ…叱られるのに慣れてやがる!ぶたれるのに慣れてやがる!』

お母さんは半ば諦めた様に「ポイッ」と食べかけのお菓子のごみを床に捨てる。

オイオイ…、ごみ箱は目と鼻の先だぜ?

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ここ数年で中国の人々のマナーはだいぶ向上したと聞く。街にはいつも掃除している人がいるし、列を作って順番を待つ。痰を吐く人も減った(らしい)

だけど、こういう場面を目の当たりにすると日本と比べずにはいられないのだ。もちろん、この家族みたいな人たちだけじゃないことはわかるんだけど…これはそういうものなんだと割り切るしかないのだろうか?


先輩は言った。

「そういうものだと割り切るんじゃなくてここはマナーを身につけた国の人間として手本を見せるべきなんじゃないか?」と。

優越感に浸るつもりはないけど、もっと良くした方がいいことはある。そうなんだけどーー…、

「ザッザッ!」

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駅員さんが数時間ごとに車両の掃除をする。床から掃き出されるごみの量は一行に減る気配を見せない。

自分が常識だと思っていることも、別の場所ではそうでないということは、この世界でざらにあるのだ。

それにしても、なんでったってこんなにごみが出るのだ?

通路からかき集められるごみの山を見てそう思わずにはいられなかった。


やがて12時をまわり、日付が変わったが僕はまともに眠ることなんてできなかった。空調は効きすぎているし、電気はずっとついたままだった。

通路側の席でうつらうつらしながら、なんとかこの日の移動をやり過ごした。

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18時間の列車の旅を終えて僕はやってきたのは昆明(クンミン)駅

ユースホステルはほとんど予約で埋まっていたため、僕はHostel Worldで見つけた少し離れたホステルを予約した。

バスに揺られて30分。今回はGoogleマップとオフラインでマップが見られる有料アプリのダブルチェックだ。迷うことはないだろう。そう思っていた。

だが、またしても宿は見つからなかった。僕が迷ったのではない。宿そのものが存在しないのだ。何人もの地元民に道を尋ねたのだが、誰一人として僕の予約したKunming、Chase Dream hostelを知る人はいなかった。それらしいマンションまで辿り着いたので

井戸端会議部副部長的なポジションにいそうなおばちゃんにホステルがあるか訊いてみると親切にも管理人室までつれていってくれた。

管理人さんたちも知らないというのでWi-Fiをお借りして住所を検索するも英語表記の住所のみしか出てこなかった。

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もともと昆明にやって来たのは目指す元陽(yuanyang)へ行くためにはここからバスに乗らなくてはならないからだ。

こうなったらホステルは諦めてバスに乗ってしまおうと僕は彼らにお礼を言い、再び昆明駅行きのバスに乗った。


毎回公共の乗り物にバックパックごと乗り込むのは気が引ける。

僕のバックパックはドイターの85リットルも入るバカデカいバックパックだ。

旅人ビギナーの僕は余計なものを山ほど持ち歩いている。普通の旅人じゃまず持ち歩かないようなものだ。ペニーボードやトラベルギターや原稿用紙200枚といった具合に。だからバックパックが重たくなるのだ。

もちろん荷物を最小限にしてスイスイ移動することもできるが、それだとフツーの旅人になってしまう。

僕は「旅する漫画家」なのだ。名乗ってしまった以上、退けない部分もある。



バスに乗ると僕は極力他の人の迷惑にならないようにバスの通路にポジションをとった。

僕と目があったおばちゃんが言う。

「あんた!こっち座んなって!」
「いや、いいっスよ」
「いいから!いいから!」

するすると他の人と席を入れ替わりおばちゃんたちは僕のために席を用意してくれた。

さっきホステルを探すのを手伝ってくれた管理人さんたちやバスのおばちゃんたちと言い、日本では受けられないような親切を感じた。旅に出てからというものそういうことの繰り返しだ。僕は沢山のひとからもらいすぎているのではないだろうか?そんな申し訳なささえ感じてしまう。

日本の良さもある。だが日本人に足りていないものもある。

日本に帰った時に今の彼らと同じ行動が僕にできるかなぁ?

旅って勉強だ。

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ユースホステルは全滅だった。

頼みの綱のホステルは見つからない。

だが、諦めるのはまだ早い。僕は他の外国人旅行者にはないアドバンテージを持っている。漢字が読めるというアドバンテージだ。

中国には「招待状」と呼ばれる安宿がある。

外国人を宿泊させるのには許可がいるらしいので宿泊を拒否される場合もあるのだが、今回はこれにチャレンジしてみようと思った。


さっそく昆明駅の近くで「招待状」の看板を見つける。

眼鏡をかけて、飛び出した鼻毛がちょっと可愛らしいお兄さんに僕は声をかけた。

「ねぇ、40元の部屋ってまだあるかな?」
「ほっ?はっ!えっ?あ、あ、あるよ?いや、でも、もうちょっと広い部屋の方がいいかな?」

たどたどしい英語でできるだけ高い部屋に泊まらせようと営業をかましてくる可愛いヤツだ。

「いや、おれは40元のじゃなきゃ泊まらないよ。どーする?」
僕はハッタリをかます。
「お、オーケー!ついて来てよ。すぐ近くだからっ!」

客引きのお兄さんは獲物を逃すまいと、すんなりと折れた。

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案内されたのは構想マンションの19階。彼と家族で宿を経営していた。Wi-Fiは繋がらないけど個室だ。

最近、日本人の方々と一緒にいる機会が多かった。だんだん旅が容易なものに思えてきた僕には一人になる時間が必要だった。上手くいかないことも旅だ。

昆明はすぐに立つけど、まだ見ぬ明日に胸を踊らせて

僕は旅を続けよう。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。