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「沢山の優しさをもらって僕は旅ができる」

世界一周51日目(8/18)


先輩を見送った後、僕は昨日老寨(ラオジャイ)山旅館 にやって来たヤスイさん、シマノさんと一緒に20元札のモデルとなった場所に行った。

二人は香港で知りあったというのに気持ちがいいくらい仲が良かった。「地元の幼なじみ」って感じだ。

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奥さんは僕たちに「スリに気をつけなきゃね!」と言ってくれた。

観光地化したこの町では外国人を狙ったスリがいるらしい。あからさまにポケットに手をつっこんでくるとか笑。


最低限の持ち物を持って僕たちは20元札の場所へ行った。雨は降ったりやんだりを繰り返していた。お札に印刷された風景を見る事ができるポイントはいくつかあるのだが、僕たちは一番手前のポイントで満足し近くの屋台でビーフンを食べて宿に戻った。


雨脚が弱まるのを見計らって僕は再び山に登った。

ゲストハウスを出るまえ林さんが「ほれ!」と言ってごみ拾いセットを渡してくれた。

林さんの作った展望台に行くために多くの観光客が山を登るが散乱するごみの数も多い。さっきはシマノさんがごみを大量に拾って帰って来た。今度は僕の番だ。

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昨日一度通った道なので汗だくになってごみを拾いながら山頂にたどり着いた。いくらか靄がかかっていたが、昨日とは比べ物にならないくらい遠くの方まで見渡す事ができた。山頂には中国人の観光客が7人くらいいた。

僕がごみを拾っていると中国人の青年2人が「おれらも拾うよ」と、ごみ拾いを手伝ってくれた。

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戦争の終わった8月15日や政治の問題で中国国内の居心地の悪さを感じた人もいただろう。ニュースや中国の抱える問題を先輩やヤスイさんたちから聞くと世界がどんよりと暗いイメージしか僕には湧かなかった。いや、実際そうなんだろうけど。

だけどさ、ボランティアでごみ拾いをしてた僕に「おれらも拾うよ」って日中関係とか関係なしに声をかけてくれたことが素直に嬉しかったんだ。

色々な人が僕に世界の魅力を伝えてくれるけどやっぱり自分の目で見て感じないとダメだ。

観光客の女のコが写真を頼んできたので快く応じると「good relationship!」って握手をしてきてくれた。


そうだよな。そうなんだよ。

やっぱり変わらないものがどこにだってあるんだ。

僕はそれを信じて旅をしていこう。


僕らだけになった山頂で二人は僕にタバコを差し出してくれた。

降り出した雨とタバコの匂い。

あんちゃんたちが帰った後も僕はぼーっと景色を眺め、袋たっぷりになったごみを抱え下山した。

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次の目的地、昆明(クンミン)へはいつもと同じように列車で硬座(一番安い席、シートのみ)を使おうと思っていた。

林さんも硬座なら当日でも買えるだろうと言っていたので、特に調べもしなかった。

『まぁ、桂林に着いてすぐに切符を買えば夜行列車が捕まんだろう』と全く情報収集をしていなかったのだが、桂林から昆明までの列車を調べてみると一日に2本しかない。しかも宿予約もしていない!

なんなんでしょうね?自分でもおかしくなるこの余裕っぷりは。

余裕なんかじゃない。僕はまたドキドキするような、脳内麻薬が「ドバッ!」と出るような、そんな旅を、また再開させたかったのだ。

最近、よく思う。「旅は自分からするもの」なのだと。

先輩方から有益な情報を教えてもらった僕は何事もなくスムーズに中国を旅する事ができた。でもそれは自分の力で旅をすることではない。

自分で情報を集めて自分の足を使って旅をする。

まぁそりゃ人から教えてもらう場面もあるさ。それが必要な時だってある。だけど、それは僕の求める旅なのかそういうことなのさ。

とにかく、ノープランで桂林に突入してみよう。なんとかなんだろ。


ラオジャイ山旅館を出る時林さんと話した。

林さんは僕の漫画家としての夢を聞いてこう言ってくれた

「そんなに焦る必要はないんじゃないか。今はあんたが色々なことを学ぶ時だ。20代で培った事が30代で活きてくるはずだから」

高校を卒業してアシスタントになるわけでもなく時間のある大学で投稿作品を描き上げるわけでもなく

僕は「漫画家のレール」から外れて旅に出た。自分の描きたいテーマを描くために。

何が起こるかわからない。でもやるしかない。やるしかないんだ。

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バスに揺られて2時間。

桂林の街も雨が降っていた。

そして僕は一泊10,000円もするようなホテルでこれを書いている。

宿を予約していないということを言うとシマノさんとヤスイさんは彼らの泊まるホテルにベッドがひとつ余っているからということで僕にベッドを提供してくれた。

ヤスイさんは「ほんとうはこんなことしたくないんだけどね。だってバックパッカーぽくないじゃん?」と冗談めかして言った。

でもこうして旅でお会いした方々に自分の夢を応援してもらえる事はやっぱり嬉しいんです。

そしてこの夢はやっぱり自分だけのものじゃないんだなと思うのだ。

ほんとうにありがとうございます。沢山の応援や優しさをいただいて僕は旅をすることができるんです。

今の僕にはまだ何かをお返しする事はできませんがきっと、何か別の形でお返しをしたいと思います。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。