「インドで初詣」
世界一周187日目(2014.1/1)
そこまで観光に熱心な旅行者ではない。僕は。
どちらかと言えばノープランでフィーリング(っていうとかっこいいな)を頼りに町に行ってみて、その町の雰囲気を感じる。できるだけ色々な場所に足を運んでみる。それが今のところの僕の旅なんだと思う。
だけどもちろん僕だって観光はする。
世界中には『絶対見てみてたい!』という場所もいくつかある。
ここ、ティルチチナパリにやって来たのはプリーの日本人宿「サンタナ・ロッジ」に置いてあった地球の歩き方/インド編をパラパラとめっくってみて『あ~、ここ面白そうじゃん』と思ったからだ。
5:30に列車はティルチチナパリ駅に到着した。
辺りは真っ暗。
売店のチャイをすすって、駅弁のプーリを食べながら日が昇るの待つ(駅弁のプーリは信じられないくらい不味い)。駅構内にいる他のインド人のように地べたに横になることに少し抵抗のある僕はベンチで座って目を瞑った。さっきまで乗っていた列車で細切れにしか寝れなかったのだ。
小田急線の列車の中でよくこうして眠っていたな。
ジブリジャズの「カントリーロード」を聴いていたら、あれって旅の歌でもあるんじゃないかなと思った。自分の夢のため故郷を離れ、その旅路の中で故郷を恋しく思ってしまう。だけど、これは自分の選んだ道。やるしかない。今はまだ「あの街」に戻るという選択肢はない。こうして日本を離れ、世界を一回りすると決めた僕もそんな簡単に戻るつもりはない。これは僕の夢であり、次に繋げなくてはならない旅だからだ。
あの後ー…、雫とセイジくんはどうなったんだろう?
僕はお互い夢に向かって邁進しながらも、二人の心が離れていってしまうそんな話の続きを想像した。
ストーリーの読み手側からしてみたらセイジくんが日本に戻ってきて二人は結ばれる。そんな未来を求めるのは当然なんだけど、バロンの持つエピソードや二人を取り巻く状況を考えたら、結ばれることは難しいんじゃないかなって思った。あの一瞬で燃え上がった恋は徐々にその熱を失っていってしまうんじゃないか。
だから映画ものの「2(ツー)」とかはやらない方がよかったりもするんだよね。
僕たちはこうしてストーリーが終わった後にも「耳をすませば」の世界に入っていける。物語の終わらせ方って大切なんだなー。
そんなこと考えてたら眠れねぇぇぇええええ!!!!
それを「もしも」の世界について悶々と考えてるなんてバカか?
8時前に宿を探して歩き始めた。
年明けのインド。果たして宿はあるのか?
何件か当たってみて262ルピー(435yen)の宿に決めた。
200~250ルピーのシングルが狙い目なんだけど、やっぱりだいたいどこも300からなんだよなー。
まぁいいさ!まずは宿確保!!所要時間は20分。この街には1泊2日の駆け足の滞在だ。
一週間以上前に列車のチケットは取ってある。サクサクっと見たい物を見て次の街に進んでしまおう。荷物を置いて洗濯だけ済ませると僕は外に出た。
すぐ近くのバスターミナルまで歩いて行って行き先を運転手に尋ねる。
「Rock Fort?」
「?」
「だからぁ!ロックフォートだってば!」
「?」
「あ~、オーケー、オーケー」
筆談アプリで「Rock fort」と書いて見せる。
「あ~ロックフォーとね~。このバスだ」と集金係が教えてくれる。時々発音が違うだよなぁ~。カタカタ英語に近かったりするんだもん。
世界を旅してきて英語力が上がるものかと淡く期待していたが、今のところはペラペラに喋る英会話よりもシンプルに言いたいことを伝える「グロービッシュ」のほうが身に付いた。中学レベルの英会話でも全然通用する。単語や「What/When/Where/Who/Which/How」の5W1Hを使った簡単な文章。
一番使う英語は「How much?」
東南アジア~インドだったらグロービッシュで旅ができてしまう。
僕は語学留学なんてしないで旅に出たけど(大学の時に「単語耳」で発音練習したくらい)、旅をする上ではそこまで困ったことはない。相手の英語力が達者でも「わかりませーん!」な顔をして、要点だけかいつまんでもらえれば理解できるわけだし。
訛りがあるもののインドは英語の普及率が高いので英語が通じずに困るなんてこともない。時々売店のおばちゃんが「?」って顔をするくらい。看板なんかにも普通に英語表記で何かしらが記されている。
最近Wi-Fiを通していないのでマップアプリの位置情報の精度が落ちてきた。
とりあえずの方角だけチェックして
ロックフォート付近のバスターミナルで降ろされた。
「ロックフォートにはすぐ左に曲がれば行けるから」
集金係のおっちゃんが教えてくれた。
狭い路地を抜け、
建物の隙間から大きな岩山が見えた。
あの場所だけ発している雰囲気が違う!
ビッグバザールの通りを抜け、
あれ?どうやったらあそこまで行けるんだ?
「こっちこっち!」近所のおっちゃんたちが案内してくれる。
どうやらビッグバザールにあった入り口を見逃してしまっていたようだ。
ごったがえすロックフォート入り口。入場料は6ルピー(10yen)。
どうやら履物を脱がなければいけないらしい。
サンダルを脱いで手に持っていたらおっちゃんに怒られた。
「おい!持ち込んじゃダメだ!預けて来い!」
せっかくここまで並んだのに、戻らなくちゃいけないの!?
渋々列から離脱して靴を預けて再入場。入り口のおっちゃんは列の横から通してくれた。
ロックフォート内部の奥にオブジェがある。ヒンドゥーのお寺で良く見かける様なカラフルで様々な神様が散りばめられている。
だけど僕がこれを見た時、感じたことは「まるで夢のようだ」ということ。僕の未来を形にするとしたらたぶんこんな感じなんだと思う。まだ夢の中でそれがどんな形なのかは分かってないけど。
まだまだやりたいことは沢山ある。可能性を掴んで創っていく自分たちの未来。
柱に寄っかかり飽きもせずに15分くらいこのオブジェを眺めていた。
石でできた床がひんやりと気持ちいい。
これだけでロック・フォートは終わりじゃない。どうやら外に出れるらしい。
岩山に建てられたこの場所から外を見渡したらどんな景色が見れるのだろうか?
ーって…、すごっ!
頂上に祀られた何かを見るためにいびつな形の階段にずらっと並ぶインド人たち。
柵なんて無視しちゃって、涼しい顔して岩肌に腰掛けるインド人も。あれ滑って転げ落ちるヤツいないのかなぁ?
ここまで来たらあそこに何があるか拝んでやろうじゃないの!インド人の列に混ざって僕も並んだ。
ゆっくりゆっくり列が進み、階段を一段、一段登っていく。
横にはティルチチナパリの街がまるでモザイク画のように散らばっていた。遠くの方にひときわ大きな寺院が見えた。
まだ時間もあるし、次はあそこに行ってみよう!
じわじわと頂上まで辿り着いて、祀られていたものをチラっと拝んでさっさと退場した。カメラ撮影は禁止っぽいし、後ろから列が僕を前へ進める。参拝者には灰色の塗料みたいなものが配られた。
「どうしたもんか…』とちょっと考えていると係員のおっちゃんに「びゃっ!」とおでこにその塗料を塗りたくられた。あぁ、あのみんなおでこにつけてる「アレ」だったのね。
ローク・フォートから遠くに見えた巨大な建造物は「スリ・ランガナサスワミ」と言うらしい「と言うらしい」ってカタカナに当てるのがわからないから。
先ほどやってきたバスターミナルで行き先を尋ねると集金係のおっちゃんはニコニコして僕をバスまで案内してくれた。
やっぱ元旦はみんながハッピーな気持ちになるのかなぁ?何人かの人懐っこいインド人たちに「Happy New Year!」って挨拶されたもん。
ちなみにバスの料金はどちらも4ルピー(7yen)。ティルチチナパリの街はバスが安いね。
そして視界に入ってきた「スリ・ランガナサスワミ」は巨大な門だった。
多くのインド人も参拝に訪れている。
それを抜けると鳥居の様に中規模の門をくぐっていくわけだがー…最後にあるお寺の内部には入らなかった。僕としてはあの巨大な門が見れただけでも満足なのだ。
また靴を預けるのもめんどくさいし、中に入ったからって特別すごいものが祀られているわけでもなかろう。僕はヒンドゥー教徒じゃないんだし。
でも、インドで初詣なんてなかなかできないよね!アイ・ラブ・インド!
ティルチチナパリはまさしく「みどころ」のある街だった。
ときどきリーバイスなんかの有名アパレル店なんかも見かけたし、街自体も比較的きれいで道路もフラットな感じがした。野良犬も少ないな。Penny Board乗れそうだ。
南部インドにはまだまだ蚊がいる。
日が沈み、タイでマルルさんからいただいた塗り薬をして外にでる。
駅の外の通路。
雨よけの天井に歌声が響く。久しぶりに自分の出す音を聴きながらギターが弾けた。
ポロポロ入るレスポンス。差し入れのオレンジジュースが喉を潤す。
日本にいる時は母親似怒られたり近所迷惑だとか気にしながら、それでも唄ってた。海外に出てそんなことを気にせず、大きな声で唄えるってすげえ解放感。バスキングの写真がないのは唄ってる最中にカメラを盗られたくないから。それに唄ってると忘れちゃうんだよね。
にしても、この街にも
ノートパソコン繋げてくれるネット屋がないや。まあいいか。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。