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「カトマンズへ」

世界一周232日目(2/15)

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朝5時にはアラームが鳴っていた。

「...ケンさん、5時になりましたよ」

頼まれていたモーニング・コールをする僕。ケンさんは「わかったよ」とでも言うように、隣りのベッドでもぞっと動いた。
一緒のドミトリーに泊まっていたケンさんはこれからインド、バラナシに行くとのことだったので、朝早くに宿を出て行った。

タイのバスで盗難に遭い、2ヶ月を5万円の予算で旅していくというタフでハングリーな旅をしているたケンさん。ちょうど僕がここに来た時に、入れ違いでエベレストのベースキャンプであるエベレストABCまでトレッキングに行ったらしんだけど、節約のため夕飯だけしか食べなかったって話は衝撃だったな。

「食費を削らないで何を削るんだよ?」
っていう言葉はケンさんの名言だ(笑)。今の僕には実行できそうにない。

人間追い込まれると食費を削れるんだな…。今思うとロシアで安いパンばかり食べてたっけ。

僕の方はというと、カトマンズに出発するドラミさんという方がチャーターしたバスターミナルまで行くタクシーに一緒に乗せてもらうことができた。割り勘で150ルピー(154yen)をケチってバスターミナルまで歩いて行こうとする僕に「歌を聴かせてもらったお返しに一緒に乗せてってあげる」とありがたいお言葉をかけてくれたのだ。

ジャイアニズムに任せて唄っているのだから、お金を払わなくちゃいけないのは僕の方なのにな。ほんとうにありがとうございます。

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バスターミナルに到着し、チャイとサンタナポカラのもみじさんが持たせてくれたパンケーキで朝食を軽く済ませ(正直に言うとばっちしチョコパンも食べたけどね)、お互いそれぞれのバスに乗り込んだ。

「カトマンズのカジノでもしかしたら会うかもね♪」ドラミさんはそう言った。カトマンズのカジノでは何やらタダでご飯にありつけるのだとか。ドラミさんはカジノ目当てだけど、食費を浮かせる旅人はカジノにご飯を食べにくるんだって!へ~。ネパールにカジノねえ。なんか意外。


次の目的地、カトマンズまで500ルピー(514yen)。ネパールは移動が安い。
ルンビニからポカラまでヒッチハイクしようとしてたけど、そんな必要全然なかった。たぶんツーリストバスが整備される前の話だったんだね。ヒッチハイクでネパールを旅したってのは。

「5年前にネパールに来た時は周りは日本語だらけだったのに」そんなことをドラミさんが言っていた。
ポカラの街で中国語表記の看板をよく見かけた。中国人ツーリストたちは羽振りがいいらしい。「20年前の日本人が今の中国人だ」とあるネパール人が言っていたらしい。

バスの中、僕の横には同い年くらいの女のコが座っていたんだけど、彼女が韓国人なのか中国人なのか、それとも日本人なのかよくわからなかった。

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バスが途中休憩で停まった時、サランギーという民族楽器を弾いているおっちゃんを見かけた。

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僕の好きな旅漫画「アジアのディープな歩き方/インド、ネパール編」
にこの楽器を売るおっちゃんが登場する。

主人公の杉田くん(たち)に故郷に帰るためのバス代を出してくれたらホームステイさせてあげるよと物語が展開されていくわけだが、僕としてはここからラストまでの流れが好きだ。

この上下巻の旅漫画は「ふっ」とラストを迎える。

ネパールの他の土地を旅して後、カトマンズに戻ってきた杉田くんは偶然同じサランギー売りのおっちゃんを発見する。一瞬声をかけようとするのだが、杉田くんはそこで思いとどまる。


『あぁ、こうして彼らの日常は続いて行くんだな』

『そして僕はー…』


杉田くんは雑踏の中に消えて行く。

打ち切りと言えなくもないが、続きを描こうと思えばいくらでも描けるラスト。だけど、僕はストーリーが終わった「その後」をどうしても想像してしまうのだ。

この漫画に思い入れがあるからこそ、ここで出会ったサランギー売りのおっちゃんに近しい何かを感じてしまう。おっちゃんの真横に立って演奏をしばらく聴いていた。一見作りは粗いが、サランギーの奏でる音は僕をどこか懐かしい気持ちにさせてくれた。僕はおっちゃんにレスポンスとして10ルピー札を渡して再びバスに乗り込んだ。


バスに揺られているうちにだんだんと外は曇り、次の休憩所では雨が降り出した。大粒の雨が路面を濡らした。

外の気温は肌寒かったが、ツーリストバスの中はこまめに温度調整がされていたのでそこまで寒さを感じなかった。快適なはずのシートにずっと座っているとお尻が痛くなった。



カトマンズに到着したのは15時半だった。

ここから宿を探すわけなんだが、今回の僕はひと味違う!昨日、宿でたまたまお会いしたナガヤマさんというタンバリンを叩くお兄さんに、カトマンズの安宿情報を入手していたからだ。迷わずタメル地区へと向かった。

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僕がカトマンズの宿の集まるタメル地区に抱いた印象は「下北沢」だ。

細い路地にゲストハウスやお土産屋さんやカフェが密集している。アウトドア用品を扱ったお店の数はポカラの街とは比べ物にならない。道端ではサランギー売りのおっちゃんたちの姿をよく見かける。マップアプリを見ても宿がどこらへんにあるのか分からない。あっちに行ったり、こっちに行ったり、最初は自分がどこにいるのかよくわからなかった。

人に聞きまくってようやく見つけたのは「Hotel Elite」。

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シングル250ルピー(257yen)。Wi-Fiつき。話によるとホットシャワーも出るとか。そんな安宿あるんすか!!?

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軽く街を散策して、僕はギターを持って路上に立ってみることにした。一体ネパールでバスキングをするとどういう反応が得られるのだろうか?

狭い路地のおかげもあって、レスポンスは良かった。演奏を聴いてくれていた日本人のジュンジくんとアヤカちゃんから差し入れとしてカロリーメイトをもらった。二人はこれからポカラに向かい、インドへ向かうらしい。

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iPhoneに入っているバラナシを舞台に撮られたOld Man Riverの「Sunshine」のMVを二人に(強制的に)見せる。あれかなりお気に入りです!

ふふふ♪後で僕も行くけど、バラナシには是非行って欲しいな。きっと濃い体験ができるはずだから(笑)


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。