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「フード・アンド・ベッド」

世界一周370日目(7/3)

イスタンブールに行くつもりだった。

そのつもりだったんだ。
いや、ほんとさ!うそじゃない。

「おれもイスタンブールに行くから
一緒にヒッチハイクで行こう!」

とサジュークが誘ってくれたから
僕はそうすることにしたんだけどー...

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時刻は14時をまわった。

小柄で芸術家みたいに頭がモジャモジャで
ギターの上手いクルド人のサジュークはまだ起きて来ない。

き、きっと彼に名案があるのだろう。

僕は彼のことを起こさずにテーブルで
ずっと日記を書いていた。



「グッモーニン…」

「あ、出発、明日にする?」

「そうだねー…」

ここはトルコ、イズミルの街。

偶然会ったクルド人のサジュークの
シェアルームに居候中。

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サジュークが作ってくれた
遅めのご飯を二人でもそもそと食べる。

シェアルームのある建物に入るためには
入り口の鍵と家の鍵の二本が必要だ。

だから僕だけ個人行動をとるわけにはいかない。
仮にも泊めてもらっている身だし。

キッチンと食べ物は自由に使っていいと言ってたけど、
やっぱりそれは遠慮してしまう。
てか僕料理できねーんだわ。

泊めてもらうと、
ホストの生活リズムに合わせることになる。
それなりに気を遣うし、勝手な行動はできない。
なんか飼い猫みたいだ。

それでもありがたいっす!
タダメシィィィィ!!!

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サジュークは近々このシェアルームから
別の場所へと引っ越すようだ。

大学まで1時間以上かかるらしく、
もっと近くの部屋を見つけたのだとか。




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ご飯を食べ終わってギターの練習なぞしたあと、
僕たちはようやく街へと繰り出した。

デイパック二つと衣類の入ったビニール袋3袋。
ギターとバイオリンとトルコの民族楽器、
バララマを二人で持って市バスに乗り込む。

バスに乗る時僕は自分の分の料金を払おうとしたが
サジュークはお金を受け取ろうとしない。
僕の分の料金も払ってくれる。

ご飯だってそうだ。
材料を買う時にさっさと会計を済ませてしまい、
こっちがお金を払う隙を与えない。

ホスピタリティーがあるのは嬉しいんだけど、
こっちにもお金払わせて欲しいだよなぁ。


車内に荷物を一カ所にまとめると、
僕たちは空いた席に座った。

窓から海が見えた。

夕日を反射して波打つ。

逆光で乗客の姿が黒くシルエットになった。

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海に沈む夕日を見るたびに
なんとも言えない気持ちになる。


「夕日が好きなんだね」

「ああ。綺麗だ…」

「あと一時間半ほどすれば
空がもっと綺麗な色になるんだ」

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僕たちは途中でバスを乗り換えた。

海は建物で見えなくなり、反対側に山が見えた。


「イズミルは海と山があるのがいい。

それなのになんでったって
自然を壊す様な町づくりをするんだろう?」


山の一部には建物が建っていた。

イズミルの街自体、海沿い以外の山々には
それを埋め尽くすように建物が建ち並んでいる。

将来、故郷の村で暮らしたいと言っているサジュークは
街の暮らしが好きではないらしい。

もっとナチュラルであるべきだと言っている彼は
ベジタリアンで甘党だ(笑)。



サジュークの次の家は彼の大学のすぐ近くにあった。

建物のひとつに入っていき、最上階まであがる。

迎えてくれたのは同じくクルド人の
気の良さそうなユサフというヤツだった。

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次のシェアルームからも海が見えた。

サジュークに割り当てられた部屋は
その反対側で山が見える。


「ほら、前の家は全然光が
入って来なかっただろう?
ここなら毎日気持ちよく朝を迎えることができるよ!」


二日連続で爆睡をかましている彼には
ちょっと説得力にかけた言葉だったが、
気分がよさそうだった。

ルームメイトのユサフはサジュークのことを
「ケケ」と呼んだ。
クルド語で「兄弟」という意味らしい。

二人はギターとバララマで
お互いに知っている曲をセッションした。

音楽は時に人との結びつきを強固にする。

サジュークがここに来るのはまだ2回目だと言う。
いいルームメイトだ。

てか、トルコもクルドも気さくで
フレンドリーなヤツらばかりなんだよな♪

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22時をまわると僕たちは大学へ行った。

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大学はこの時間だというのに開いていた。
他にも数人敷地内に生徒の姿を見かけた。

この大学の自由な感じ。
僕の大学もこんなんだったら、
もっと楽しめたかもしれない。

サジュークは僕に映像関連の仕事に就く友達や、
アニメーターの友達を紹介してくれた。

みんな日本人の僕に対してとてもフレンドリーだ。


「なあ、もっとここにいろよ!
おれたちがメシも寝床も用意してやるよ」

とサジュークの友達が言う。

「ははぁ!みんなシミに同じこと言ってるよ。
「Food and Bed」って!」


旅が一年を経過し、旅の期限を考えるようになった。

何もしがらみがなければ、
僕はここにビザで滞在できるめいいっぱいの
3ヶ月いたかもしれない。

それでも間もなくトルコを旅して一ヶ月が経とうとしている。

どこに行ってもトルコは楽しい♪

名残惜しいときもあるさ。
でもそれも旅なんだと思う。


バスに乗ってシェアルームまで帰った。

就寝前のチョコプリンが沁みた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。