「物理的な距離が二人の気持ちを遠ざける」

世界一周１５７日目(12/2)

旅の最中、「この二人ならずっと仲良く暮らしていくんだろうな」と思っていた二人の恋が終わってしまった。

傷ついたのは僕じゃないけど、彼らのことを知っているだけあって、僕の中のなにかが欠けてしまったような、そんな喪失感を味わっていた。

損なわれてしまった物は二度ともとに戻ることはないのだろうか？

改めて、人と人が付き合っていくことはその関係性を持続させることは難しいと感じた。

家族を築いている同年代の友達や自分の両親は実はすごいんじゃないかと思った。

僕は彼らのみたいに人と向き合うことはできるだろか？

今の自分には無理かもしれない。

「旅に恋してるから！」なんて冗談めかして言ってるけど、そりゃもちろん寂しいときもあるよ。

誰か隣りにいてくれればいいんだけど。
今の僕の隣りには誰もいない。

風船が誰かの手から離れて飛んで行ったのが見えた。

タイのバンコクで行われているデモの群衆にまぎれて、僕は孤独を味わっていた。こんなに人で溢れているのに。

いつものようにデモメシを食べると、僕は捨てられたレジャーシート代わりのお菓子のシートにサブバッグを前にかけたまま横になった。

途切れることなく誰かが代わる代わる演説をしている。

決めゼリフに合わせてデモの参加者たちが示し合わせたように首からかけたホイッスルを一斉に鳴らす。

このデモは一体なんのために行われているのだろうか？そんなにタクシン派の政権がタイにとってマイナスになるのか？

このデモは１５日以上も続いている。ここに来ればお金を払わずに飲み水や食べ物にありつくことができるけど、それらはどこからやってくるんだ？

考えれば考えるほどこのデモが空虚なものに思えたし、部外者の僕が何を思ったってここにいる人たちには関係ない。

笑顔で「これ、持ってきな！」と水や食べ物を差し出してくれるタイの人たち。

ここでは僕は単なるお祭りに遊びに来たお客さんでしかないんだ。嬉しいけどね。

夕方１６時の茜空。僕はバンコクでひとりぼっち。

お互いを隔てている距離が心まで引き離してしまうなんて悲し過ぎだ。

宿に戻ってWi-Fiを通してずっと友達とLINEしていた。

うまくいかないことも沢山ある。

だけど僕たちは前を向いて歩いて行かなきゃならない。後ろには道は続いていないから。

そうだな。今の気分はこんな感じさ。

CARAVANの「Soul music」にアーティストの名前を羅列していくパートがある。

Tom Waits

その中に彼の名前が出てくるんだ。