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「車で20分。徒歩2時間。スメラ遺跡まで in トルコ」

世界一周345日目(6/9)

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深夜2時にシェパード(飼い犬/放し飼い)に
安眠を妨げられたこともあって
予定通りに起きることができなかった。

辺りがすっかり明るくなった7時半に目を覚まし、
のそのそと撤収作業に入る。

3日もトラブゾンにいたんだ。そろそろ次の街に進もう。

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次の目的地はトルコの東側。
ちょっと見たい遺跡がある。

たぶん一日じゃ行けないだろうから、
その途中にあるErzurum(エルズルム)という街を
今日の目的地に決めた。

交通手段は、

そう、



ヒッチハイクだ!!!



情報収集をしていたら
たまたま発見した海外の情報サイト、
その名も「Hitchwiki」

世界中のヒッチハイクの情報が載っており、
もちろんトルコにおけるヒッチハイクの情報も載っていた。

トルコにおけるヒッチハイクは

「an extremely hitchhiking-friendly country
(クソフレンドリーで楽勝)」

らしい。

ただ、気をつけなくちゃいけないのは、
知らない人の車に乗るのであって、
100%身の安全は保証されない。
特に女のコなんかが一人でヒッチハイクするのは
返って危険かもしれないってこと。

僕のいるトラブゾンからエルズルムまで
ヒッチハイクで行くことができるらしい。

サイトの情報を頼りにヒッチハイクが
できるポイントまで僕は歩いていくことにした。

フル装備で2km歩くのはしんどいけどね…。

ひぃ。ふう。

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たどりついたヒッチポイントは
どうみても車が止まるスペースがなかった。

おかしいな…。
確かにここら辺って書いてあったんだけどな。

近くの幹線道路は車がスピードを出しては走っているし、
後続車もあるからもちろんヒッチハイクには適していない。

相手が自分の姿を目視して、考えて、速度を落とし、
その先で止まるくらいの距離感が大事なのだ。

って偉そうに書いているけど、
まぁ狭い場所だとヒッチハイクできないってよねって話。

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近くにいたおっちゃんは
僕がエルズルムに行きたいんだと告げると、
もう少し先に行かないと
ヒッチハイクなんざできなよと教えてくれた。
(ですよね~!)

おっちゃんにお礼を言って先に進んで行ったのだが
そこにも車が止まるスペースはない。

しかもマップアプリで確認すると、
エルズルムじゃなくて別の場所に向かっているようだ。

マップアプリには一応ピンを刺してある。

この前会ったドイツ人大学生が僕に
「マチカへは行った?。有名な修道院があるよ」
と言っていたからだ。

スメラ修道院にはそこまで惹かれなかったし、
もともと行くつもりはなかったんだけど、

よし!ルート変更!
きっとこれはマチカが僕を呼んでいるんだ!
そう気持ちを切り替え、僕はマチカ行きを決めた。

だが、ヒッチハイクできそうな道ではないことは確かだ。
となるとこの一本道をマルシェが走っているはず!

たまたま会ったトルコの高校生?たちに
マルシェの停まる場所を訊いたら、
いつの間にか写真撮影会になっていた。

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トルコではよくあることだ。

まぁ、ここの停留場にいれば
マルシェがやってくるらしい。

てか、ふくよかな女のコがトルコ語で一方的に喋ってきて、
かなりズケズケした感じだったな。

「はっはっは~!」バァ~ン!
っておもっきし肩パン喰らったよ。

若いうちからおばちゃんパワーのすごい女のコだった...。

結局、彼らは僕をネタに楽しんで、
近くにいたトラックの運転手のおっちゃんに
僕のマチカ行きを投げた。

おっちゃんにマチカ行きのマルシェを止めてもてもらい
僕はスメラ修道院のあるマチカへと向かった。
5リラ(240yen)。

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マチカへ到着した僕はすぐに
スメラ修道院へと向かうことにした。

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インフォメーションのお兄さんに訊くと
ここからバスが出ているそうだ。

教えてもらった通りの方向へ進んで行ったが、
バス停らしきものは一向に見えて来ない。
フル装備のバックパックが重い…。

後ろからきたおじいちゃん2人組が
僕をスメラ修道院の途中の道まで連れて行ってくれた。

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「ここからあと3~4kmだよ」

とおじいちゃんがジェスチャーで教えてくれる。

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『なんだそんなものか』と
思ったのが間違いだった。

素直にその場に留まって
ヒッチハイクしていればよかったののかもしれない。

声に出すとなんてことのないように
感じてしまう距離のマジック。

3~4kmってけっこうあんぞ?しかも山道。

それにトータル30kgの荷物を
身につけているこのアホさっぷり。

30分も山道を登るころには前進から汗が噴き出し。
Tシャツはぐっしょり濡れた。

心のどこかではこんなに
苦しそうにしているんだから

「乗ってく?」って声をかけてくれる
優しい人がいるんじゃないかって思ってた。

だってここはスメラ修道院までの一本道なんだぜ?

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てか誰がヒッチハイク簡単って言ったんだよ?

後続車は止まるどころか
アクセルを踏み込んで僕を追い抜かして行く。

その半分はツアーバスだから
止まることはないだろう…。
くっそ…。

途中のわき水に
こんなに勇気づけられることはなかった。

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手にすくって一口飲んでみると、冷たく美味しかった。
持っていたペットボトルに水を補充し、
キャンプ生活でシャワー浴びてない体を濡れた手で拭った。

ひんやりとして気持ちいい。

まぁ、またこの山道を登り始めたら
汗まみれになるのは間違いないんだけどね。

再び僕は山道を登りだしたが、
2時間が経過する頃にはひたすら足下を見て歩いた。

上を見たらいつ終わるとも知れない坂道が続く。

それをが分かったら心が折れることは間違いないだろう。

てか、一体なんでったっておれはこんな
苦行みたいなことをしてるんだ???
ヒッチハイクが山登りだよ。


途中にようやく受付のようなものが見えた。

お兄さんはサラッと僕のやる気を
根こそぎもっていくような一言を放った。

「あぁスメラまで3kmだよ」

ってまだ3kmもあんのかよ!!!もう嫌だっっっ!!!誰か僕を乗せてってくれぇぇえええ~~~~!!!!

もう投げ出したくなる気持ちでいっぱいだったが、
こんな山の頂上付近でどうしろっていうんだ??!!

また一歩一歩下を向いて歩き出す。

呼吸もだんだん荒くなった。
さっき汲んだわき水だけが頼りだった。

パーキングエリアについた時に、
僕は一種の達成感を味わった。

ソッコーで近くのトルコアイスを3リラ(144yen)で食べる。

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アイスクリーム屋のお兄さんに
バックパックを置かせてもらい、
僕はスメラ修道院までのラストスパートをかけた。

急な坂道だ。

7kgのサブバッグを背負っていても重い。
バックパック背負って登ってたらマジで死んでたな。

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か、顔が死んでる!!

まさかの車用の遠回りルートを途中まで登ってしまい、
僕は徒歩で登る人間(僕だ)のためのルートを
発見してそちらを登り始めた。

まるでトレッキングだ。

や、
これはトレッキングだ!
まさかトルコでトレッキングするなんて思わなかったなー!

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そしてようやく辿り着いたスメラ修道院。

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15リラの入場料をすべて
バスキングで稼いだ1リラで支払うと
係員のお兄遺産は「グッジョブ!」と言うように
親指を立てた。

ネットでスメラ修道院のことを調べてみたが、
そんなに良いことは書いてなかった。
「外観は迫力があるけど、中は意外と地味???」

確かに外から見ると
スメラ修道院はとんでもないところに建てられている。

そのくせ中はこじんまりといていて、
改修工事がしっかり進んでいるもんだから、
その綺麗さに歴史的な重みが薄れてしまー…

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やゔぁい…。

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だってこれ、石でできているんだろ?

どうやってこんな鮮やかな着色をして、
それが長い間消えずに残っているのだろう?


洞窟のような祈りのスペースには
鮮やかな宗教画が描かれていた。

その色使いもどこかポップな感じがする。
それがまたよかった。

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いや、違うな。

ここまでバックパック背負って
汗だくになりながら来たから、
感動も数倍なんだろう。

だよな。そうだよな!

だって遠足で食べるおべんとう
めっちゃうまかったもんな!


近くで民族楽器を演奏するおじいさんたちが
がっぽり稼いでいたのを見て、
僕もスメラ修道院の近くで唄ってみた。

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じいさん2人組には到底及ばないアガリ。

トラブゾンで唄い過ぎて声もかすれてしまっているし、
この狭いスペースで人の注目を集める様な
パフォーマンスをすることはできない。

やっぱ民族楽器は強ぇよ…。

帰りは素直にマルシェに乗って山を下った。
5リラ(240yen)。

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スメラ修道院から麓のマチカの街までは
たったの20分しかかからなかった。

徒歩で歩いた2時間。
行き絶え絶えになって、最後の50メートルが進めなかった。
だけど、その分あそこで見たものは自分の心に刺さったのだ。



ここでも僕は
キャンプをしようと思った。

え???どこがキャンプだって?
気持ちだよ!気持ち!
マインドの問題だよ!

てかねー、ここら辺じゃWi-Fiもないし、
寝るまでの時間が手持ち無沙汰なんだよ。

とりあえずお腹が減ったので7リラ(336en)の
ピデ(トルコ・ピザ)をあっと間にたいらげた。

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お店のスタッフに訊くと
18時からここから今日の目的地だった
エラズラムまでマルシュが出ているらしい。

だが、どうする?
そんなに簡単にエラズラムに行っていいのか?

到着するのは深夜だろう。
どっちにしたってキャンプだ。
それに30リラくらいかかるだろう。

それなら明日ー…


『面白い方はどっちだ?』

頭の中にそんな言葉が浮かんだ。

よし!
今日はマチカでキャンプしよう!

ここにはなんと屋根つきのベンチがあるのだ!
『どうぞここで寝てくださいまし!』と
言っているようなものじゃないか!

何を思ったか、
メシ屋で時間をつぶせばよかったものの、
バックパックを背負って外に出てしまった。

僕はやることもなく屋根つきベンチに向かった。

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そこに来訪者がやって来た。

まず最初にやって来たのは僕のことを見て
「キャー!シミがこっちみて笑ったわー!」と
キャピキャピしているしている女のコ2人組だった。

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おいおい。
いくら僕がかっこいいからって
声をかけただけで笑いながら逃げないでくれよ!

それでもめちゃくちゃな英語でいくつか質問して、
気が済むと笑いながら去って言った。

あれ?おれ、そんな面白いこと言ったかなぁ?


次にやって来たのは高校生三人組だ。

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これはインタビューか面接か何かか?

英語の喋れる男の子が僕にいくつか質問をする。
「どこから来たのか?」「名前はなんだ」

とかそんなこと。

それにしてもよく外国人にガンガン、
コミュニケーションとっていけるよなぁ。
感心するよ。英語が喋れなくたってだぜ?

彼らは5分ほどでマルシュに乗って去って行った。


最後にやって来たのはビジネスマンだった。

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子供たちに英語を教えているらしい。
英語がペラペラでスーツを着て、iPhone5Sを持っていた。

ここら辺だといい給料の仕事がないらしく、
英語教室の子供たちは怠け者さと彼は言っていた。
日本語の勉強をしようか検討しているらしい。

お兄さんは割とお喋りなヤツで
ペラペラと自分の近況を僕に語った。

「なぁ、ベラルーシに僕の彼女がいるんだ。
今からサプライズをかけるんだけど、
手伝ってくれないか?」

「え?何?別にいいけどさー」

「僕が「今友達といるんだけど、ちょっと代わるね」と言う。
そしたら君は彼女に
「ジョシクン(お兄さんの名前だ)・ラヴズ(Loves)・ユー(YOU)
・ソー(So)・マッチ(much)!」
って言ってくれないか?な?最高だろ?」

マジでそのシチュエーション
意味が分からないんですけど。

ノリノリでiPhone5Sで彼女に電話をかけるジョシクン。

僕たちがいるベンチは川沿いにあって、
水が流れる音がずっとしているし、
今しがた雨が降り出した。

それに遠く離れた彼女に電話をかけるんだろ?

ぜってー僕がそのセリフを言っても

「はっ?何言ったの?」
ってなるに決まってるよ!

僕の予想通り、ジョシクンは彼女と通話が出来ても、
しょっちゅう途切れる様子だった。
このまま諦めてくれないかな…


「あー、うん。そうなんだ。
今、友達といるんだ。代わるね」

「ジョシクン、
ラヴズ・ユー、
ソーマッチ」


国語の音読の句読点分の時間を置いて、
できるだけはっきりした声で
与えられた4つのワードを彼女に放った。

すぐにiPhone5Sをジョシクンに返す。

ニタニタしているジョシクン。

くっそのろけやがって!
うまくいったかいかないだが知らないが、
ジョシクンは僕にお礼を言って去って行った。

ったくなんなんだこのベンチは!



トルコでは

頻繁に治安維持のために
見回りをするパトカーをよく目にする。
きっとここに寝てたら起こされるだろうな。

僕は別の場所に移ることにした。

寝るのには早かったので、
別のレストランで3リラ(144yen)でサラダを注文して、
テーブルの上にパソコンを広げて日記を書いた。

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お店の中の液晶テレビでは
劇場版「TEKKEN(鉄拳)」がやっており、
それが気になって日記は全然書けなかった。



21時になると僕は新たな寝床を探しに向かった。

見つけたのは集合団地のベンチ。
もちろん屋根つきだ♪

テーブルが低く、外から丸見えだったので、
気持ち程度の目隠しにバックパックをテーブルの上に置く。

ベンチに体を横たえ
ここが寝ることのできる場所なのか
様子をうかがうことにした。

遅い時間帯でもスカーフをかぶった女の人が
一人で出歩いている。ここも治安がよさそうだ。

50代くらいの夫婦が僕の姿に気がついた。
屋根の下まで入ってくる。

こちらも相手に不信感を抱かせないため、
フレンドリーに「ハーイ!」と挨拶をした。

彼らは英語の喋れない人たちだったが、
英語が少し話せる娘さんやら、
近所の友達やら、娘夫婦やら、なんだ??!!

しかもけっこうなフレンドリー具合。
ベッドがどうのこうのとかホームがどうのこうの
ニコニコしながら相談している。

この時僕は確信に似た何かを得た。

「ホームステイ
させてもらえる!」と。

だが、あえてこちらから
「今晩家に泊まらせてください」
なんてことは言わない。
あくまであちら側からのお誘いが

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「あ、じゃあおやすみなさい♪
私たち明日学校があるから♪」

ってねーのかよ!!!


ご家族とその友達はニコニコしながら
マンションの中に帰って行った。

取り残された僕。

あー!もういいよ!寝ますよ!寝ます!
一人で僕は寝ますよ!
もともとそのつもりだったからな~!

雨は止み、オレンジ色の蛍光灯がいくつも僕を囲んでいた。
耳を澄ますと川の水が流れる低い音が聞こえた。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。