「野宿生活をしながら漫画は描けるのか in トルコ」
世界一周351日目(6/15)
おしっこがコーラ色になった僕はびっくりして
ベンチで朝を迎えたわけだが、
4回目のおしっこからは至ってノーマルカラーだった。
ふぅ。治って良かった。
やー、血尿ね!
マジ焦ったよね!
やっぱりバックパックを背負って歩き過ぎたのだ。
締めた腰のベルトが腎臓を圧迫してうんたらんかんたら~…、
よし。今日はオフにしよう!
オフオフ!休む日も必要だーい!
(えっ?いつも休んでるって?)
できるだけ、体に負荷をかけないように
のそのそと行動を開始した。
7時には太陽がジリジリと僕を照らしつけてきたので、
僕は木陰で30分ほどぼっとした。
近くに墓地があり、そこの水場で髪の毛を洗った。
墓地の管理人さんはフレンドリーに
チャイをふるまってくれた。
弱った体。なんかそれが嬉しかった。
人通りの少ないトルコ、シャンルウルファの日曜日。
売店でパンを買おうとすると、
ハーフサイズならタダで持ってけと、
お店のおじちゃんは気前がよかった。
近くの売店でお菓子やジュースを買い、一緒にそれを食べる。
野菜が欲しいところだけど、この時間だと
どこもやってないからしょうがない。
て、テクノカット!
9時半に昨日のショッピングモールへと向かった。
す、スケートリンクがある…。
ここでも開店は10時からのようだ。
入り口でフリーのWi-Fiを使ってブログを読んだりする。
こんなばかデカい荷物もって何の様だ?
セキュリティは僕を訝しむ。
いやいや。カフェに行こうと思ってるんですよ。
そう言うと、カフェは早めにオープンしていると僕に教えてくれた。
ありがたい。
電源の確保できる席を見つけ、バックパックをおろす。
5リラ(238yen)のカプチーノを注文して
Wi-Fiのパスコードを訊きだすと僕は席に着いた。
汗が引くまで僕はテーブルでカプチーノをすすりながら
のんびりとiPhoneの画面を親指でなぞる。
今日の目的は体を休めることなんだ。
何もしない罪悪感に教われる必要は無い。
キャンプ生活だとどうしても日記が書きたまってしまう。
ずっと一日中外にいるわけだし、日記に書く量も多い。
ここらでしっかり書いておこう。
一本日記を書くと、
僕はまた新しいことにチャレンジしてみることにした。
「キャンプ生活をしながら漫画描けるのか?」というもの。
漫画を描くためには同じ場所に何日か滞在したい。
ころころ作業環境が代わるの嫌だけど、
これからはそんな状況でもガシガシ描いていけるようにならないと。
バックパックから圧縮袋に詰まった衣類をテキパキと出し、
原稿用紙を取り出す。
原稿用紙の周りに1センチずつ枠を引く。
一番下の外枠だけは4センチの感覚だ。
特に漫画を描くのに決まりはないけど、
これは漫画を描き始める儀式のようなものだ。
3枚フレームを描くと、僕は原稿用紙の裏にアイデアをまとめ始めた。
ネットで調べた画像をスケッチして、軽く絵を描く準備運動する。
さて、今回はどんな話にしようか?
話がまとまると僕はコマ割を始めた。
今描いているのは自分の修行みたいなもんだから、
誰かに依頼されて描くとか、ネームをチェックしてもらうだとか
そんな必要が全くない。
話の全体像しかできてない状況でコマ割から始め、
それにストーリーを割り当てて行くのだ。
ちょっと変則的な漫画の描き方だと思う。
そんな風にして、僕はB4版の商業用の原稿用紙に
漫画の下書きをし始めた。
期間が空くと腕がなまるのは仕方の無いこと。
スピードもまだまだ遅いが、近頃意識してるのは
「何もせずにグダグダしている時間」を減らすこと。
例えばFacebookを眺めている時間を減らすとか。
トルコのカフェで
漫画を描いているアジア人を、
やはりスタッフさんは気になるようだ。
マネージャーさんは僕に自分の似顔絵をリクエストしてきた。
僕もテーブルを使わせてもらっている身なので、心よく応じる。
名刺に使っているのは無印良品のメッセージカードだ。
僕はそれに下書きなしでステッドラーの0.4のペンで絵を描いていく。
似顔絵が似ないのはいつものことだが、
マネージャーさんはたいそうよろこんでくれた。
いいコミュニケーションツールだ。
ちょっと顔の形意識し過ぎたね。
「どうだ?チャイはいるかい?」
「あ、へえ。ありがとうございやす」
と、ここまではいつもの流れだったのだが、
ここのカフェが驚くほど僕に気を遣ってくれる。
最初のカプチーノ以外に
僕は5杯以上チャイをごちそうになった。
お金を払おうとすると受け取ろうとしない。
って
どうなってるんぁぁあああ~~~~!!!
食べ物までごちそうしてもらったよ!
この日はオーラスを飾る勢いで
9時半から23時までカフェにお世話になった。
日記も書いたし、一応下描きも完成した。
カフェでオープン・ラストさえできれば漫画描けるぞ!
確かな充実感を片手に
今日の寝床に選んだのは丘の上の公園。
12時を過ぎても大人たちはレジャーシートを敷いて車座を作り、
その近くで子供たちが遊んでいる。
公園内はどこもかしこも電灯が明るく輝いていた。
一体何時まで起きてるんだよ…。
半ば飽きれながらも芝生の上に寝転んだ。
草の上に寝転ぶことがこんなに気持ちがいいだなんてな…。
彼らの側じゃ気になって眠れなかったので、
公園の端でブルーシートを敷いて寝袋に入った。
公園の端は若者たちが黄昏れるスペースで
夜遅くまで彼らの声がした。
彼らがどこかへ行ってしまって、ようやく眠れるという時に
公園の管理人が僕を見つけた。
別に隠れてたわけじゃないけどね。
「ここで寝てはダメだ」
と管理人が言う。
うへぇ…マジですかい…。
すごすごとその場を後にし、目をつけていた別の芝生へと歩いた。
深夜1時をまわったというのに、公園ではスプリンクラーがまわっている。
けっこうリッチな街なんだなシャンルウルファって街は。
誰も来なさそうな芝生にブルーシートを広げ、再び僕は横になった。
シャンルウルファの街に灯りは絶えない。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。