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「ギリシャに来るつもりじゃなかったけれど」

世界一周381日目(7/14)

小さな町だというのに朝から公園の清掃をしている人たちの姿が目に映った。

3時間くらいは眠れただろうか。
慣れた手つきで撤収を済ませると僕は公園を出た。

ここはトルコの国境の町イプサル。
町の中心にある公園の複合遊具の上で世を明かした。
(え?寝心地?意外と眠れるよ。なんか安心感があった!)


7時半の町を幹線道路へ向けて歩き出す。
町にはほとんど人の姿は見えない。

Map with me(マップアプリ)を見ると、
ギリシャとの国境までは6kmくらいあった。
歩いて行くのはちょとキツい距離だ。

幹線道路に出てすぐの
ガソリンスタンドのトイレを借りりた。
Tシャツをすすぎ、髪を洗って、歯を磨く。
濡れたままのTシャツが外に出るとひんやり涼しかった。


国境へ走る車はそこそこ走っていた。

歩きながら親指を立てる。
なんだかんだでヒッチハイクだ。

すぐには止まらない。

何台かのトラックが通り過ぎ、
数台のセダンが通り過ぎた。

最後の一台は途中まで走り、
何か忘れ物でもしたかのように止まってくれた。

乗っていたのはイミグレーションの職員さんだった。

今日もありがとうございます♪

歩くと死ぬ思いをするであろう距離を
ほんの数分で駆け抜ける。

ここを抜ければギリシャだ。


「ちょっと!君!どうやって来たんだ?」

とドライバー(イミグレーションスッタフ)さんが尋ねる。

「どうって?ヒッチハイク?」

「歩いて国境は越えられないぞ」


幸いイミグレーション前には
何台か車が止まっていた。

この中から僕を乗せてくれる車を
見つけ出さなければならないらしい。

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出国スタンプの方はすんなりもらうことができた。
意外と簡単に越境できるのだろうか?


もっていたトルコ・リラをユーロへと両替する。
ギリシャはEU加盟国。使われている通過はユーロだ。

両替できなかった分はリラで戻って来た。

係員のおねーさんは
「これでアイスなりチョコレートなり買いなさい」
と言った。

なんかそういう一言を言える人って好きだ♪
いや、ガキ扱いされてるのか???

残った4リラ(192yen)で朝食を食べた。
トルコでよく見かけた豆の入ったスープ。
トルコ側のイミグレーションでは
パンがサービス(無料)でもらえた。

パン屋さん儲かってんのかなぁ?と思いながら
余計にいただき、保存食としてバックパックに
ロールパンサイズのスライスされたパンを
2個ほど入れておいた。

朝食を済ませてご機嫌でゲートをくぐろうとした。

「ギョレ ギョレ(トルコ語のバイバイ)」
とゲートに書かれていたのを見て、ちょっと嬉しくなった。



「ちょと君!待ちなさい!
歩いてここは渡れないよ」

と別に国境職員に止められる。

「ど、そうすれば!」

「トラックを見つけるんだ!」



ここで待ってていいというので、その場に待機。

ただ、なかなか僕を乗せてくれる
トラックは現れなかった。
時間だけがどんどん過ぎていった。

これなら最初からタクシーで来たほうが
よかったかもしれない…。

ギリシャ側から来た
埼玉県で日本語を一年間勉強していた
というドライバーさんが僕にプラムを3つくれた。
不安になりながらもあっという間にたいらげる。

トラックは積み荷の関係でなかなか進まない。
わざわざ運転席を降りて来て、
職員に書類を提出している。


そして、一時間ほど待機して
ようやくギリシャ側まで僕を乗せてくれる
運転手さんを見つけることができた。

トラックはゲートを抜けるとすぐに
イミグレーション内の路肩に停まった。

乗用車はフツーに僕たちを追い越していく。
やっぱりタクシーチャーターした方がよかったのかもしれない。
なかなか進まないトラックの中で気づいたら眠っていた。
運転手さんに起こされてギリシャ側のイミグレーションで降りた。


ギリシャの国旗と青地に星で円が描かれたEUのマークが目に入った。
僕はギリシャにやって来たのだ。
そして今日からシェンゲン協定国内入りだ!

EU加盟国を日本人の僕はノースタンプで自由に行き来することができる。
だがそのリミットは90日。
うだうだマイペースに旅をしているわけにもいかない。

えっ?それより何があるんだ??!ギリシャって?
金融危機が起こったくらいしか
今のところ思い浮かばない!



「で、ギリシャのあとはどこに向かうんだ?」

パスポートに入国日がスタンプされる。

「えっとぉ、マケドニアっすか?」

「スコピエだ!」

「???」


ギリシャと隣国の間にイザコザがあるみたい。

まぁいいや。ヒッチハイクといきますか。

サジュークもここでヒッチハイクしたんだろうな。



僕がのんびり親指を立てて歩いていると

道路脇に止まっていたトラックがクラクションを鳴らした。
振り返ると運転席から「来い!」と手招きしている。
ありがたい!

ドライバーはトルコ人だった。アジャースさん。
イズミルに住んでいると聞いて話が弾む。

トルコを出た後もお世話になります。サンクストルコ♪

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ステレオが壊れて静かな車内だ。

キャメルを二人でプカプカふかした。
アジャースさんは吸い終わったフィルターは
ペットボトルの中に捨てるドライバーだった。
ごみに対する意識のしっかりした方だ。

乗る前はシャンティという町までの予定だったが、
仕事の予定が変わったようで
一気にテッサロニキという町まで行けることになった。

アジャースさんはアテネに向かうらしい。

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僕はサジュークが旅した場所を
訪れてみようというプランがあった。

アテネに行かず北部の3都市だけを
駆け足で回る予定だ。

テッサロニキは海沿いの町で、
サジュークが言うには
「小さなイズミル」なんだそうだ。

イズミルの雰囲気が好きな僕は
ここを外すわけにはいかなかった。

ちなみにピンク色のピンが中継地点で赤が目的地だ。

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サジュークに教えてもらった
トルコの古い曲をギターと一緒に弾いた。

「チョゥ、ティシュケレデレム」
とかしこまったお礼を言われた。

あまり披露する機会がなかったけど、
外国人が自分の国の歌を唄えるって嬉しいのかもな。

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数時間走り、涼しくなりだしたころ、休憩を挟む。

こんなローカルなガソリンスタンドだというのに
Wi-Fiを使うことができた。なんだかユーロっぽいな。

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オーガニックトマトでかッ!

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う~ん…。どうしようか?

調べて見るとギリシャには
沢山の世界遺産があることが分かった。

せっかくギリシャに来てそれらを見なくてもいいのか???
世界史で学んだあのギリシャに僕はいるんだぞ?

お金のかかる観光地やツアーの多い国だけど、
せめてアテネには行こう。

念のためアジャースさんに尋ねてみる。


「アテネまで乗せてもらうことってできますか?」

「悪いな。
今日は途中の町にある職場で休んで、明日出発なんだ」


お願いすれば明日連れて行ってもらうことも
できたかもしれない。

だけど、僕は無理は言わないように
「じゃあテッサロニキまで」と当初の目的地で
降ろしてもらうことにした。


アジャースさんのトラックは
テッサロニキの手前で僕を降ろした。
お礼を言ってトラックを見送った。



さて、ここからヒッチハイクだぞ。
予定通りに来れているじゃないか!順調だ!

重たいバックパックに汗をかきながら、
ハイウェイで親指を立てた。

車がすごいスピードでガンガン通り過ぎていく。

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そしてここがトルコではないことに気づかされた。

止まらないどころか、
運転手が僕に全くと言っていいほど
注意を向けてくれないのだ。

運転席から「悪いね」とか「別の方向なんだ」とか
ハンドサインをする人なんて全然いない。

顔をこちらに向けて
『変なことやってるるヤツがいる~』
って見るくらい。

や、ヤヴァイぞ….
まさかのハイウェイ脇で野宿か...。



一時間経過。止まってくれる車ゼロ。

おいおいサジューク、お前ヒッチハイクで
ギリシャ旅したんじゃねーのかよ?
その言葉を信じてここまで来たんだぜ?
てかマジで止まらねぇ~~~…。



「ギャギャッ…!!!」



ブレーキ音をさせて止まってくれたのは
ギリシャ人ではなかった。
カザフスタン人のおっちゃん。

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父親がカザフスタン出身で母親がギリシャ人らしい。

「ははは。
おれなら君が何してるか分かったけど、
ギリシャ人じゃとまらないよ~(笑)」

な、なんか話が違うぞ…???


それでもなんとか来れたテッサロニキ。

とりあえず駅前で降ろしてもらい、
町の中心地だと思う場所へ向かった。

時刻は19時。ギリシャの夕方。
人はあまりいない印象を受けた。


試しに軽くバスキングしてみるもレスポンスが薄い。
え、ブルガリアが稼げないからここに来たってのもあるけど、
それ以下じゃないか?

人のリアクションが違うのだ。
国の違いを思い知らされる。

長距離の移動で
疲れた体を引きずって海沿いを歩く。



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日が沈むとテッサロニキの町はにぎやかになった。

海沿いのバーからは重低音を含んだ音楽が流れて来る。


そんな中で僕はポーランド出身の旅人二人と出会った。
一人はギターを、もう一人は大きなシャボン玉を作る
ディアボロ(中国独楽)を操るヒモのようなものを持っていた。
彼らもヒッチハイクで旅をして来たらしい。

今は海の向こう側にテントで寝泊まりしているんだという。
そっか、ヒッチハイクしているのは
僕だけじゃないのは参考になった。



野宿の下見ということもあるが、
ホワイトタワーと呼ばれる古跡の近くまで行ってみることにした。

バーになって船が二隻ほど停泊しており、
その周りでは沢山の出店が見えた。
ダンスの催し物なんかも見ることが出来た。


ぐったりしている僕に声をかけてきてくれたのは
フランス人の大学生三人組。
車で旅をしているらしい。
なんか「オンザ・ロード」みたいだな。

ギター5人組のセッションを見ながら
僕たちはしばらくお喋りした。

旅の理由を尋ねると

「ディスカバリー、ザ、ワールドさ!」
と言っていた。
「世界を発見するのさ!」って、
おいおいカッコいいじゃねえか。

一人はペットボトルに入った
白く濁った薄いお酒持っていた。
女のコからもらった巻きたばこはどこか美味しかった。
明日はどこに行くかは分からないという。

そんな彼らの旅はイタリアに渡った後、
そのままフランスへ戻るらしい。



彼らとバイバイして僕は公園のベンチに横になった。

ギリシャ…かー…
ノリで来ちゃったけど、何があるんだろ?

初めての国ではうまく寝付くことはできなかった。

12時をまわっても女のコが一人で歩いているような街だ。
キャンプしても大丈夫なのは分かるけど。


ようやく眠りかけた深夜4時。
ポツポツと雨が降り出す。
急いでベンチから木の下へ避難する。

雨脚は弱まるどころかますます強くなっていく。

ど、どうする??!!
待機か??!!撤退か??!!


蘇るグルジア、ウシュグリの悪夢。

今の僕には守るべきものがある(特に電子機器!)


「撤退ぃっっ!」


急いで寝袋や干していたタオルを抱えて
目の前の劇場にダッシュで避難した。

僕と同じように
宿のないホームレスが3人集まっていた。

顔を合わせて
「いやぁお互い大変ですねぇ」みたいに笑い合う。

今の僕たちには雨から逃げて来たという
仲間意識のようなものがあった。

僕のすぐ隣りで寝床を作っている二人の夫婦がいた。
格好からして、隣りの国から来たばかりの人のようだ。

彼らは段ボールを敷いて、
枕代わりの発泡スチロールの切れ端を
セッティングすると身を寄せ合うようにして眠った。

僕も荷物をすみっこにまとめ、
雨に少し濡れてしっとりした寝袋に入った。

ふぅ…。キャンプに雨は天敵だよ。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。