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父へ書く手紙

最近悲しいことがあった。
父のことだ。心配からなのかなんなのか、父から私へのその言葉たちは、今の自分たちの置かれている状況の不安定さを如実に表しているように感じられた。

今回は、父の発言とその言葉への反論を整理したい。

そもそも・・・
父はLGBTに全く理解がないようだった。LGBTに関するニュースを見てもこんなのは反対などという言葉があったと母から聞いた。
そんな父へのカミングアウトは、直接対峙する勇気はなく、既にカミングアウトしていた母親からジャブを入れてもらいつつ、パートナーを友だちとして実家に連れて行ったあと、手紙を書いて伝えた。その手紙の返信には、「子の幸せが親の幸せ」という事が書かれていた。

私の出産のときには、半年間も家族4人で実家にお世話になった。
母は隠すことではない、と自分から周りの人たちに説明してくれていた。ありがたかった。
一方、父は「娘と孫が帰ってきた」という嬉しいはずのトピックを、関係が近い人にも言ってなかった。私たちが近所をみんなで散歩しまくるから結果バレることにはなるんだけど。また、私たちの小さい頃の写真や親戚から送られてきた子どもが写ってる写真は廊下に貼られていたのに、私たち家族の写真は全くなかった。送ったこともあるのに。
でも、子どもたちのことはとても可愛がってくれた。ミルクもあげてくれたし、一緒に遊んでくれた。子どもに新しい経験もたくさんさせてくれた。

だから、若干の違和感はあるけどもう偏見はないはず、心から私たちのことを応援してくれているはず。そう思っていた。

先日、テレビの取材が絡んだことでその違和感が顕在化した。
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父は直接私に言ってはこない。父が母と話す中で出てきたことである。
①精子バンクを使っての妊娠・出産に対して
 精子を選ぶことができるのは、病気とか障害とかを排除する優生思想に繋がるのではないか。また、非匿名ドナーとはいえ、顔も知らない人の精子を使うことへの嫌悪感
②子を育てる経験がしたいのであれば、親に恵まれていない子たちがたくさんいるので、その子たちを育てればよかったのでは
③将来、子たちがいじめられる対象になることへの不安
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やはりショックは大きい。
一番味方でいて欲しい人たちからこんなザ・アンチが言いそうな言葉ばかり出てきたことに。
母には一つ一つについて説明をした。父にも話をする機会があればいいのだが、性格的にきっと受け入れてくれないだろうなと感じている。
以下にそれぞれについての私の思いを記す。
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①精子バンクを使っての妊娠・出産に対して
【精子を選ぶことができるのは、病気とか障害とかを排除する優生思想に繋がるのではないか。】
 →遺伝的な病気については分かっていれば未然に予防できたらいいと私は思う。障害については、予防できることはしたらいいし、妊娠出産、成長のどの過程の中にもそのリスクはあることだから、単に精子を選ぶというだけで優生思想に繋がるとは思えない。それに、どこかの過程の中で障害を背負うことになったとしても、私たちは責任と愛情を持ってその子のことを育てるよ。もちろん簡単なことではないだろうけどね。
精子バンクを使うのは、私たちみたいな同性のカップルとか、無精子症の夫婦とか自力ではできない人たち。男女のカップルで普通に子どもを作れるのであればそうすればいい。そういう人たちがわざわざ精子バンクを使う必要は全くないし、しないよね。自分たちの子を持つという選択肢があるということは素敵なことなのではないの?
【非匿名ドナーとはいえ、顔も知らない人の精子を使うことへの嫌悪感】
 →顔も知らない第三者の精子を身体の中に入れる違和感はむしろ私たちの側にある。でも、それでも私たちは子が欲しいと願った。だから、最低限非匿名ドナーにして、子らに「出自を知る権利」を保障したいと思って、そうしている。

②子を育てる経験がしたいのであれば、親に恵まれていない子たちがたくさんいるので、その子たちを育てればよかった。
→完全に戸籍が同じになる「特別養子縁組」については、私たち同性カップルに門戸は開かれていない。「普通養子縁組」は、産んだ親と関係が切れているわけではないので、色んな覚悟やリスクを考えることが必要。「里親」は自治体によるので、同性カップルで里親を選択する人も少しずつ出てきてはいるけど、18歳までしか親子として過ごすことはできない。まず、この違いくらいはきちんと理解した上でこの話をしてほしい。
そして、私たちみたいな同性カップルが自分たちの子を作りたいと思うのはおかしいの?じゃあなんで父さん母さんは私たちを産んだの?養子縁組でもなんでもすればよかったんじゃないの?環境に恵まれていなかった子を育てなかったのはなんで?
子を作るっていう行為自体が既に親のエゴでしょ?私たちが子を作ったのは間違いなくエゴだと思うけど、じゃあ異性カップルで子を作ったのは何?親のエゴ以外の何がある?親のエゴで作った子をどういう環境でどういう人間になってほしいとか思いながら育てることこそが大切なんじゃないの?

③将来、子たちがいじめられる対象になることへの不安
→いじめって、100%いじめる方が悪いんだよ。そしてLGBT関係じゃなくてもいじめられる子たちはいるのが実情。私たちは、子たちがいじめられないような環境や社会にする責任はあると感じてはいるし、そうする。いじめられる対象になるんじゃないかって、じゃあそれで子たちがいじめられたら、「やっぱりね。あなたたちがいじめられる対象だから悪いよね」になるの?
それって痴漢のことにも似てない?痴漢ってする方が100%悪いでしょ?なのになんでいつも「服装が悪い」とか「痴漢に気をつけて」とかって啓発してるの?変えるのは被害者じゃなく、加害者の方でしょ。悪いのは被害者じゃなく加害者であり、被害者にも問題があるからいじめられるのは仕方がないと考える社会なんだよ。
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心配してくれているのは分かる。親は自分は差別的なことは言っていない、偏見はないと思っていると思う。けど、私は親からの言葉を聞いて傷ついたし今も悩んでいる。
私はどう言って欲しかったのか考えた。
こう言って欲しかった。

あなたたちは何も悪いことをしていない。堂々としていなさい。何かあったら守るから。味方だから。って。
世間の側に、一般論に立って心配風吹かせて欲しくなかった。

常識や、世間体を気にする。多分そんなこと考えたこともないだろうけど、残念ながら私がそう育ってる。だから同性を好きになることに気づいたとき、自分を否定しかできなかった。そしてそれは今も続いている。自分に自信が持てない。周りの目が気になる。いい子でいるのが得意。
自分の子たちには、こんな考えは持って欲しくない。

子どもにはこういうメッセージを常に送り続けたい。
周りの目は気にしなくていい。好きなことを思いっきりしたらいい。あなたが決めてすることなら、全力で応援する。誰を好きになってもいいし、嫌いになってもいい。どんなあなたであっても私たちは受け入れるし、寄り添うし、応援する。



父には手紙を書こう。
私と父は残念ながら性格が似ている。電話で話すとお互いが感情的になる。そして言いたいことが多分言えない。文字で冷静に自分の思いを伝えて、汲み取ってもらう方が良さそう。よし、そうしよう。


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