見出し画像

note34: バガン(2011.6.13)

【連載小説 34/100】

予想通り、いや予想以上にバガンは素晴らしい。
が、その魅力を報告するのは次回にして、今回はここへ到着するまでの感動を伝えることにする。

一昨日の朝、マンダレーを出て丸一日かけてボートでここへやってきた。
ほとんどの行程は熱帯地域を蛇行して流れるエーヤワディ川を進む旅だったが、バガンに近づくにつれて褐色の大地と深い緑の中に黄金の仏塔がひとつふたつと増え、船着場へ辿り着く頃には無数といってもいい仏塔が建ち並ぶいにしえの王朝の地であることに気付く。

長くインドシナに滞在しているSUGO6の旅で改めて知ったのは、川の旅がもたらすきわめて濃密な旅情だ。
ベトナムのホーチミンからカンボジアのシェムリアップを目指したメコン川からトンレサップ川とつながる5日間の旅も素晴らしかったが、エーヤワディ川の旅にはそのドラマ性に1日ながらも完全に魅せられた。

これらのインドシナの川では、豪華客船によるリバークルーズが西洋のツーリストに人気観光メニューらしいが充分に納得できる。

残念ながら雨期がはじまった今の時期はオフシーズンで就航していなかったが、マンダレー〜バガン間には数隻の豪華客船が就航しているので次回ミャンマーへ旅する際にはエーヤワディ川クルーズに参加しようと心に決めた。

というのも、前回のnoteで僕が船好きであることを記したが、僕はこれまでに3度の外洋クルーズを体験して船旅の虜となっているのだ。

最初は日本発で南シナ海周辺の6カ国巡る2万6千トンの船。
2回目はシンガポール発でマラッカ海峡を経てマレーシアのペナン島、タイのプーケット島を訪ねる7万7千トンの船。
3回目ハワイ諸島転々と巡る8万1千トンの船。

と様々な国と都市を海から訪ねる旅を体験し、次はカリブ海か地中海のクルーズをと目論んでいたのだが、予定を変更してこの先は本格的なリバークルーズをいくつかこなしてみるのも悪くはないと真剣に考えている。

おそらく外洋クルーズとリバークルーズとでは、そこに全く異なる旅情が存在するのだろう。

船の大きさが決定的に違うから、乗船客の数が違う。
人の数が違えばサービスも違うし、旅人同士の関係性も違ってくるだろう。

それに見える景色が決定的に違う。
外洋クルーズはひとたび大海原に漕ぎだせば、見えるのはひたすら海。
東の水平線から朝日が昇り、西の水平線へ夕陽が沈む景色が日々繰り返される。

が、リバークルーズは違う。
川幅の変化はあれども常に両岸には陸地が存在し、太陽は地平線から昇り沈むのだ。
つまり水の上という“浮遊感”は特別なものながら、旅する空間は“日常”の延長線上にある。

外洋クルーズが丸い“地球”を旅するのに対して、リバークルーズは“大地”を貫く一本の“筋”を旅するとでもいえば、その世界観を漠然とイメージしてもらえるのではないだろうか?

では、その“筋”とは何かといえば“歴史”なのである。

「エジプトはナイルの賜物」とたとえられるように、文明は常に川のほとりに栄えてきた。
エジプト文明に、チグリス・ユーフラテス川のメソポタミア文明・インダス文明・黄河文明を加えた世界四大文明が全て川の賜物であったように、インドシナに栄えた数々の王朝はメコン川やエーヤワディ川の恵みによって生まれ栄えた。

そこに人類史が宿っているという一点において外洋クルーズとリバークルーズは決定的に違うのだ。

今回は大きめのボートで川を下ったので、エンジン音が大きく多少の揺れもあり旅情半減だったのだろうが、それでも川面を吹く風にその身をさらす時間は心地良くいい旅だった。

きっと豪華客船であれば騒音や揺れも少なく、視線が少し高くなることで見える景色も広がるから、さらに旅情は深いものとなるはずだ。

「旅人の前を歴史が流れる…」

リバークルーズにそんなキャッチフレーズが浮かんできた。


さて、昨夜は久しぶりの「Dice Roll」デーだったので、そちらも報告しておこう。
僕が出した目は「5」で、以下のように旅程が決まった。


>>>>> Dice Roll ⑥/2011.6.12-20:00<<<<<

Yangon → Toshkent
【タシケント Toshkent 】

次の訪問地はウズベキスタンの首都タシケント。
6/21にタイのバンコクを経由してウズベキスタン航空でタシケントへ。
近年観光地として注目を集める中央アジアのオアシス都市に10日間滞在する。

>>>>>SUGO6 Support Desk<<<<<


長く転々とした東南アジアを出て旅は中央アジアへと舞台を移す。
週末にバガンから一旦ヤンゴンに戻り、次週明けにウズベキスタンへ向かうことになった。

>> to be continued

※この作品はネット小説として2011年6月13日にアップされたものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?