見出し画像

note84: ウユニ塩湖(2011.11.20)

【連載小説 84/100】

南米大陸の旅は次週3ヶ国目に移動することになった。
以下のメールのように、次の訪問地がブエノスアイレスとなったのだ。

>>>>> Dice Roll ⑱/2011.11.16-20:00<<<<<

LaPaz → BuenosAires
【ブエノスアイレス BuenosAires】

11/23にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスへ。
「南米のパリ」と呼ばれる世界22位、南米1位の世界都市ブエノスアイレスに11月末まで滞在しヨーロッパ諸国と複雑な関係を重ねた歴史を追う。

※パタゴニアやイグアスの滝へ足を延ばしての観光をご希望の場合は事前にご連絡ください。

フライトはラパスからのダイレクト便がないので、アエロスールとアルゼンチン航空を利用してサンタクルス経由でブエノスアイレスに着く便を調整しておりますので決定次第メールさせていただきます。

>>>>>SUGO6 Support Desk<<<<<

「パタゴニア」や「イグアスの滝」と具体名称を挙げられるとどちらも行きたくなる。

前者は大好きなイギリス人作家ブルース・チャトウィンの旅行記『パタゴニア』の舞台だし、後者はいつか必ず訪れたいと願っていた場所だからだ。

アルゼンチンではブエノスアイレスを拠点にアクティブに動き回ることにしよう。

さて、昨日ウユニ塩湖に着いた。
「神秘の湖」の予想以上の素晴らしさに「WHハンター」の3人と興奮を抑えきれないでいる。

ウユニ塩湖のことを簡単に説明しておくと、ボリビア中央西部のアルティプラーノの標高約3700m地点にあり、南北が約100km、東西が約250kmの総面積12000平方kmの巨大な塩の湖である。

“湖”と呼ばれはするが、学術的には「塩原」で乾期の7〜10月頃には水がなく、その上を車が走れるほど乾いているそうだ、

雨期に入った今、高低差の少ない塩原の上にうっすらと水が溜まり広大な湖面に空が映ることから「天空の鏡」と形容される神秘的な空間が生まれている。
そして、そこに立って上下がシンメトリーとなる不思議な写真を撮る旅人があとを絶たないというわけだ。

注目したいのは観光と並んでこの地に成立している塩産業。
塩原ではところどころに1mほどの塩山を見ることができるが、これは乾燥させて食用塩を作っているそうで、まさに“天然の塩”生産地である。

また、塩原は大小のレンガのごとき立方体に切り出されて建材に利用されており、実は僕たちは昨夜から壁もテーブルもベッドを塩ブロックで作られた“塩のホテル”に滞在している。

「シャワー浴びたら床が溶けるんじゃない?」とか「ステーキは味付けがなくテーブルでこすりつけて食べるの?」などと冗談ばかり言っていた学生たちも、夜中に外へ出て満点の星空が映る夜のウユニ塩湖を見るとたちまち寡黙になった。

「果てしない宇宙の中に浮かぶ小さな地球」

そんな感覚を「天空の鏡」の上に立つ小さな自分の存在に重ね合わせることで得る感動は力強く、かつ優しい。

20日近く共に旅して来た彼らとも別れの日が近付いて来た。
少し寂しい気持ちもあるが、互いに違う道を進みながらも「常に同じ星の上に生きる同志なのだ」という思いで結ばれたと信じている。

>> to be continued

※この作品はネット小説として2011年11月20日にアップされたものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?