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note99: ケアンズ(2012.1.8)

【連載小説 99/100】

異国を旅していて、ご機嫌になるとつい口笛で吹いてしまう曲がある。

「Around The World」
ヴィクター・ヤングが作曲したワルツの名曲で映画『八十日間世界一周』の主題歌だ。

『海底二万里』や『月世界へ行く』で有名なジュール・ヴェルヌが1872年に発表した同名小説を映画化した作品は、「80日間で世界一周ができる」と豪語した英国の資産家フォッグ卿が2万ポンドを賭けて執事とふたりで挑戦する波瀾万丈の冒険物語。

ジュール・ヴェルヌはこの年にインド横断鉄道が完成したのをヒントに、ロンドンからスエズ運河を経てボンベイ→カルカッタ→香港→横浜→サンフランシスコ→ニューヨーク→ロンドンという世界一周ルートを船と鉄道で制覇する物語を創作した。

1872年といえば、前回までに紹介したジェームズ・クックの第一回太平洋航海から100年後というから驚きである。
人類は僅か1世紀で“選ばれし者”の世界一周を、富豪とはいえ民間人の冒険旅行にまで進化させたのである。

そして、さらに1世紀後。
人類は劇的な航空テクノロジーの発展によって数日あれば世界を一周できるスピードを入手し、無数のツーリストが世界中の国家を旅するようになった。

そして、そんなコンテキスト(文脈)の延長線上に今回の僕の「SUGO6」の旅は可能になったといっていいだろう。

6大陸を巡った僕の「世界一周」を改めて振り返ってみたい。

【アジア:3/10〜7/23】
東京(日本)→香港(中国)→マニラ(フィリピン)→コタキナバル(マレーシア)→シンガポール→ホーチミン(ベトナム)→プノンペン→シェムリアップ(カンボジア)→バンコク(タイ)→ヤンゴン(ミャンマー)→タシケント(ウズベキスタン)→ドバイ(UAE)→イスタンブール(トルコ)

【アフリカ:〜8/8】
ナイロビ(ケニア)→ヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)

【ヨーロッパ:〜9/10】
リスボン(ポルトガル)→バルセロナ(スペイン)→ジュネーブ(スイス)→ヘルシンキ(フィンランド)

【北米:〜11/3】
ニューヨーク→マイアミ(USA)→バンクーバー(カナダ)→ロスアンゼルス(USA)

【南米:〜12/1】
リマ(ペルー)→ラパス(ボリビア)→ブエノスアイレス(アルゼンチン)

【オセアニア:〜1/10】
パペーテ(仏領ポリネシア)→オークランド→クライストチャーチ(ニュージーランド)→シドニー→ケアンズ(オーストラリア)

出発地の東京から最終のケアンズまでに設定された60都市に及ぶポイントのうち、訪れたのは30カ所で計25カ国の旅。
それらを基点に立ち寄った都市も数々あったから、実際にはもっと多くの土地を繋いで世界一周を果たしたことになる。

旅に費やした時間はといえば、3月10日の日本出発で明後日1月10日の帰国となるから『三百七日間世界一周』。

そう、僕の旅は小説『八十日間世界一周』の主人公フォッグ卿の4倍近い時間をかけ、何倍もの国家を巡ったことになるのだ。

比較することにあまり意味はないのかもしれないが、21世紀の旅はさらに豊かで奥深いものとなったことを実証できたといっていいだろう。

一方で、そのルートを世界地図や地球儀の上に線で引いて俯瞰すれば、19世紀の旅も現代の旅も大差ないとの思いが湧いてくる。

いかに複雑なルートを巡って旅しても、いかに多様な土地を訪れたとしても、結果として出来上がる“一本の道”は無数に実現可能な「世界一周」の中のほんの一例でしかないからだ。

それよりも、新たな夢想が僕を刺激する。

「次の世界一周は、どんな旅にしようか?」

>> to be continued

※この作品はネット小説として2012年1月8日にアップされたものです


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