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世界一周307日

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2011年3月10日。ひとりの旅行作家が全く新しいシステムによる世界一周の旅をスタートさせた。巡る先はアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニアの世界6大陸。『SUGO…
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#カンボジア

note21 : プノンペン(2011.5.10)

【連載小説 21/100】 現在、カンボジアには年間15万人強の日本人ツーリストが訪れているそうだが、僕が海外へ頻繁に出かけ出した1990年代初頭のことを考えると隔世の感がある。 国民を大虐殺したポル・ポト政権で有名な長き戦乱後のカンボジアで、国連監視のもと停戦・武装解除の監視及び民主化選挙が行われたのが1992年。 その際に日本の自衛隊を平和維持活動(PKO)に派遣するか否かを巡っておおいにもめたのを覚えているが、当時カンボジアはそれほどに危険な地で、民間人が観光に訪れ

note22 : プノンペン(2011.5.13)

【連載小説 22/100】 一攫千金を目指してアンコール遺跡の盗掘を狙う若きフランス人考古学者のクロードと正体不明のドイツ人ペルケン。 かつてインドシナの地に繁栄を誇ったクメール王朝の“王道”をたどる旅は、サイゴン(現ホーチミン)からメコン川を船で遡行し、プノンペンを経てシェムリアップへと続く。 密林の奥深く眠る未知なる遺跡を探索するふたりを待ち受けるのは過酷な熱帯の自然環境と猛暑、原住民の襲撃。 そして“女神の像”を手に入れた彼らが最後に見たものは… フランス人作

note23 : プノンペン(2011.5.14)

【連載小説 23/100】 パソコンを持たずに5日間の旅に出るから、カンボジア後のスケジュールについて出発前に手短に報告しておく。 「SUGO6」の旅の中で2回だけダイスの目を自ら決定できる「Dice Free」のシステムについて「note18」(5/4)で説明し、次の「Dice Roll」デーに権利を行使するつもりであることを表明していたが、無事手続きが完了した。 前回はホーチミンから「3」の目でプノンペンに進み、ミッションで次の都市シェムリアップまで移動することにな

note24 : メコン川(2011.5.19)

【連載小説 24/100】 プノンペンから5日間かけてシェムリアップに着いた。 メコン川とトンレサップ川を遡上する一本道(川)の旅だったから、本来なら「A地点からB地点」への旅なのだが、僕には「A地点からA地点」に戻る循環の旅だった感がある。 どこかに辿り着いたのではなく、元いた場所に帰還したという感覚が強いのは、物理的な移動よりもタイムスリップのような歴史を遡る時間を過ごしたからだろう。 現代文明からしばし遠ざかり、1世紀前のインドシナへの時間旅行を体験して再び現代文

note25 : メコン川(2011.5.21)

【連載小説 25/100】 日本を出て73日目になる。 出発翌日に起きた大震災の模様を異国で映像を通じて見た時「電気を失った被災地は寒いだろうな」と心が痛んだが、早くも日本では真夏日を記録する季節を迎えているようだ。 カンボジアは今日も蒸し暑いが、その中で僕は再び懸念する。 電気の足りない日本はこの夏の暑さを乗り越えられるだろうか? 今回の震災で日本国民が、いや世界中の人々が再考せざるを得なくなったのが原子力に依存してきた電力の未来についてだろう。 実は4月にボルネオ

note26 : シェムリアップ(2011.5.23)

【連載小説 26/100】 昨日、シェムリアップから北東に約40kmの場所にあるバンテアイ・スレイを訪ねた。 外壁が赤い砂岩で作られた美しい遺跡で、「東洋のモナリザ」と呼ばれるデヴァター(女神)像で有名な場所だ。 そして、このデヴァターこそがアンドレ・マルローが自らの盗掘経験をもとに小説『王道』を書いたとされる彫像なのである。 クメール王国の軌跡をプノンペンからシェムリアップを目指す“川の旅”で追った「SUGO6」のオプションツアーは、『王道』の主人公であるフランス人考